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“全方位”でのクラウドインフラ投資と生成AI実用化支援に注力

「大企業病には陥らない」 AWSジャパン白幡新社長が所信表明

2025年02月03日 16時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 「信頼のおける企業にならなければいけない一方で、大企業病にはならずスタートアップの良さを持ち続ける」と所信表明したのは、2024年11月にアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)の代表執行役員社長になった白幡晶彦氏だ。

 

 AWSジャパンは、2025年1月31日、国内クラウドインフラへの投資方針に関する記者説明会を開催。日本企業のデータを預かり、クラウドサービスの需要を受け止める企業として、環境や社会を含む“全方位”で進める投資の現状について語られた。加えて、生成AI実用化を支援すべく拡充を進める、生成AIサービスのアップデートについても説明している。

 白幡氏は、「初心を忘れず、日本のため社会のために、常に初心を忘れず、イノベーションの創出と日本のDXの加速に全力で取り組んでいきたい」と抱負を語った。

環境や社会も含む“全方位”で進めるクラウドインフラへの投資

 AWSジャパンは、2027年までに国内クラウドインフラに対して“2兆2600億円”を継続投資することを2024年1月に発表している(関連記事:AWS、2027年までに日本に2.26兆円投資へ「GDPに5.57兆円貢献」)。白幡氏は、「これまでの東京・大阪リージョンのデータセンター開設は、日本のユーザー企業の声で実現したものであり、その声はますます高まっている。AWSのクラウドインフラへの投資は、DXの加速、生成AIの活用をはじめとした日本のイノベーションの加速に欠かすことができない」と強調する。

 この投資計画の一貫として、国内データセンターの新設を進めている(場所は非公開)。2026年に稼働する予定で、竹中工務店や清水建設、大林組の協力のもとで、エンボディドカーボン(生涯を通じて排出される温室効果ガスの総和)が従来比で64%少ない「低酸素型コンクリート」を採用する。建設材料だけではなく、電源・配電・冷却装置などのハードウェアや、独自開発の半導体などによって、データセンターのあらゆる設計においてエネルギー効率を追求していく。それは、東京・大阪リージョンのデータセンターの拡充においても同様だ。

 白幡氏は、「あらゆる要素が最適化されたデータセンターによって、ユーザー企業のサスティナビリティにも貢献する」と説明。AWSがアクセンチュアに委託した調査によると、AWSのクラウドは、オンプレミスの一般的なケースと比較して、最大4.1倍効率的であり、計算負荷の高いワークロードにおいては、関連する温室効果ガスの排出量を最大99%削減するという結果も出ているという。

新たな国内データセンターのイメージ

 このような「エネルギー効率の高いデータセンター」だけではなく、クラウドインフラへの投資は、社会や環境に対しても「全方位」(白幡氏)で進められる。

 そのひとつが、「再生可能エネルギーへの投資」だ。Amazonは、2020年から5年連続で、世界、そして日本で最大の再生可能エネルギー購入企業であり、世界中で600以上の太陽光・風力の発電プロジェクトに投資している。日本においても、25件のプロジェクトに携わり、一般家庭の7万6000世帯以上の年間消費に相当する電力を生成する見込みだという。

日本でも25件の再生可能エネルギープロジェクトを推進

 「環境への還元」にも積極的だ。データセンターには冷却のために大量の水が必要となるが、AWSでは2030年までに、事業を通して使用する以上の水を地域社会に還元するという“ウォーターポジティブ”をグローバルで達成することを目指している。日本においては、山梨県丹波山村と森林保全・水源涵養に関する協定を締結。今後10年間にわたり、丹波山村における森林整備活動に資金を投じて、地域の保水力を高め、生物多様性の保全に努めていく。

日本でのウォーターポジティブの取り組みは山梨県丹波山村と

 その他にも、「地域社会への還元」においては、インフラや施設の建設や運営、保守、関連のサービスを通じて、グローバルで数百億ドル規模の経済効果を創出してきた。日本では独自の取り組みとして、STEAM教育の拡大を展開。2023年9月には、千葉県印西市にて、日本で初めてとなるSTEAM教育の施設「Think Big Space」を市内の小学校に開設した。2025年度の前半には、神奈川県相模原市の市立弥栄中学校にも同施設をオープン予定だ。

STEAM教育の施設を千葉県印西市に加え、神奈川県相模原市に

 白幡氏は、「国内クラウドインフラのみならず、全方位の環境・社会への投資はこれからも続いていく。これらの投資が、世界、日本のお客様のイノベーションの加速に貢献すると信じている」と強調した。

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