この記事は、内閣官房による地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」に掲載されている記事の転載です。
空間情報事業と航空事業を
ワンストップで提供する
朝日航洋は“空にさきがけ未来をひらく”という理念のもと、国内屈指の計測技術を駆使した空間情報事業と、ヘリコプターとビジネスジェットを軸とした航空事業を手がける企業だ。創業は1955年、今年で70年を迎え、親会社であるトヨタ自動車株式会社とのより強い連携を明確にするため「エアロトヨタ株式会社」へと社名変更を行う。
空間情報事業では国土保全、行政支援、社会インフラの分野に向けて、航空レーザー計測やモービルマッピングシステム、海底探査など使用目的に合った計測技術を用いて高精度な空間データを作成、提供する。
航空事業は民間ヘリコプター業界最大規模の運航会社として、「ドクターヘリ」と呼ばれる救急医療搬送や山岳地、海上での人員・物資輸送などで長年の実績を誇る。このほかにも、旅客輸送や調査・視察飛行など事業を幅広く展開。官公庁機の運航・整備受託事業も手がけている。管理本部 企画室の小出実希氏は「朝日航洋の最大の強みは、空間情報事業と航空事業をワンストップで提供できること」と語る。
地理空間情報×エアモビリティの
連携イメージを魅せる技術
朝日航洋は将来の事業イメージとして、「地理空間情報と空のモビリティを駆使した災害復旧サービスの提供」と題したコンセプトムービーを公開している。近未来を想定し、地理空間情報をベースに有人機と次世代エアモビリティが共存する安全な運航管理を行い、得られた被災地の地理空間情報をもとに災害復旧や物資の運搬に活用するというストーリーだ。
ムービーに関して、空間情報事業本部 イノベーション推進室の二井啓氏は「当社の2つの事業のシナジー領域である地理空間情報とエアモビリティの連携をわかりやすく訴求するため、静岡県がVIRTUAL SHIZUOKA構想として提供している地形や、国土交通省が主導する3D都市モデルとして提供しているPLATEAU[プラトー]の建物など、様々なオープンデータを活用し、ゲームエンジンを用いて実装した」
「次世代エアモビリティの実装に向けて、エアモビリティ関連の実証実験に取り組んでいる。11月には静岡県内でJoby社eVTOLの米国外初飛行の支援も行った。乗り越えるべき課題は多いが、将来の社会実装に向けて取り組んでいきたい」と語る。
地理空間情報×リアルタイムセンシングによる
まちの暮らしサポート技術
地理空間情報×ビッグデータによるまちの交通安全の課題解決
「一般車両の走行データを活用した道路見守りサービス」は、まちを走行しているクルマのビッグデータを活用し、広域の潜在的な交通危険箇所(ヒヤリハット地点)を一括で把握、自治体の対策検討などに役立てるためのサービスだ。ヒヤリハット地点は、インターネットにつながったクルマのIoTセンサからリアルタイムに収集、蓄積した走行速度や急ブレーキなどのデータから空間解析により把握している。
空間情報事業本部 イノベーション推進室の澁澤航平氏は「自治体の交通安全対策は、職員や住民が把握している箇所を中心に実施していることが多いが、本サービスの活用により広域の状況を同じものさしで整理できる。これによってこれまで気がつかなかったヒヤリハット地点を把握、対策の充実につなげられることがサービスの強み」。
「サービスを導入する自治体では、ヒヤリハット地点の対策検討に加え、対策後の実施効果の把握にも活用している。また、小学生の交通安全教室の教材として利用するなど、まちの交通安全意識を高める取り組みにも活用されている」と語る。
兵庫県朝来市の事例では、道路見守りサービスのデータを「ヒヤリ・ハッとマップあさご」としてヒヤリハット地点をインターネットで広く住民向けに公開している。
地理空間情報×IoTセンサによる
まちの水害の課題解決
近年、大雨による浸水被害が頻発する水害に対し、素早い情報の把握や提供が求められている。朝日航洋は、国土交通省が主導する官民連携の取り組み「ワンコインセンサ実証実験」に参加し、IoT浸水センサを活用した水害に対する安全につなげる取り組みを進めている。
仕組みとしては、河川や道路に設置したIoT浸水センサがリアルタイムに計測し、浸水退水状況をメールなどに自動通知することで、関係者の行動を促す。
活用事例として、自社社屋周辺の車道の冠水を検知、関係者に通知し、従業員の出社可否などの判断の参考材料として活用する。また、連携中の自治体では、通学路の冠水を検知して市関係機関や学校に対して浸水の危険度に応じた注意情報を通知しており、下校時刻を調整する判断などに活用した。
空間情報事業本部 イノベーション推進室 室長の及川大輔氏は「スピード感と広域の状況把握が求められる防災減災分野において、官民連携で取り組んでいる事例のひとつ。朝日航洋は、航空レーザーなどによる3Dのリモートセンシング技術をベースとした地理空間情報の解析などの防災関連事業を行っており、そこにリアルタイムかつ高頻度な情報を組み合わせたサービスを提供している」
「近年のゲリラ豪雨などへの対応は、自治体職員だけで十分にカバーしきれない。IoTセンサで人手を補完する仕組みにより、まちの水害に対する安全を高めていきたい」と語る。
イチBizアワードで企業間の
コミュニケーションを進める
内閣官房は地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト『イチBizアワード』を開催(募集は終了済)しており、2025年1月29日~31日に東京ビッグサイト南ホールで開催される『G空間EXPO2025』にて発表・表彰される。
朝日航洋はイチBizアワードに第1回から参加しており、共同実証などの活動を通じて企業間のコミュニケーションを大きく広げることができたという。小出氏は「今回も様々な企業やアイデアとの連携により、新たな事業の創出に繋げたい。イチBizアワードの内容や朝日航洋の事業は、住民の暮らしに大きく関わっている。イチBizアワードをきっかけに、関係者と協力して地理空間情報分野全体の発展に繋げていきたい」と、イチBizアワードの広がりに期待を寄せた。
(提供:朝日航洋株式会社)