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このマンガが(俺にとって)すごい! 第3回

もしも1日だけ好きなことをして過ごせるとしたら、何をしますか?

「もうやってらんねぇ!」そんな日に。『1日外出録ハンチョウ』が教えてくれる脱・日常の方法

2024年12月30日 15時00分更新

文● ドリブルまつなが/ASCII 編集● ASCII

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「1日外出録ハンチョウ」原作:萩原天晴、漫画:上原求・新井和也、協力:福本伸行

 もしも1日だけ好きなことをして過ごせるとしたら、何をしますか? そんな問いの答えをユーモラスに描き出した漫画が『1日外出録ハンチョウ』です。今回はそんなハンチョウの、正しい深読みの仕方をご紹介します。

 ハンチョウは、ギャンブル漫画「賭博黙示録カイジ」のスピンオフ作品で、普段は地下労働施設で苦役を強いられる落伍者たちの班長を務める主人公・大槻(オオツキ)が、1日だけ地上に出られる外出券を使って、ささやかな贅沢を楽しむ様子を描いた日常系ストーリーです。

退屈でしんどい日常を脱出する方法は
案外そこらに転がっているのかも

 大槻が楽しむ休日はグルメ、観光、街歩きなど、どれも現実味があって、自分でも1度は行ってみようかなと思わせてくれるものです。典型的な回として、アンテナショップを回遊する話をオススメしましょう(コミックス第1巻収録)。

 アンテナショップは、各都道府県のグルメや名産物が集まる出張販売所。この回で大槻は、鹿児島県、大分県、茨城県、石川県のアンテナショップを回遊します。北海道とか絶対に美味い食べ物があると分かる大御所はあえてスルーするんですよね。この漫画は定番を避け、ニッチなモノを紹介するのが上手いです。

 要するに、ここでも日常を避けているんですね。あえて脇道を行くことで、日常なんて簡単に打破できるんだと。それが面白い毎日につながるんだと言っているかのようです。もちろん、大槻の日常は地下施設ですから、普通に北海道の定番の美味いものを食べても日常打破になるのですが、そこをあえて地上で暮らす我々の目線に上げて日常を回避してみせるところが憎い。

 地産地消のグルメを食べて・飲んで回遊する大槻には、監視役の黒服・宮本が付いてきます。黒服といえば、債務者を地下に連行する非情な存在で、最初は宮本も黒服の任務を全うしていました。しかし、グルメを満喫する大槻の誘惑に抗えずに、途中で陥落。最後は黒服の仕事を忘れ、一緒に肩を組んで酒盛りしてました(笑)。「ああ、こいつらも普通に人間なんだな」と思えて、ほっこりします。

 嫌な上司もつらい仕事も、角度を変えれば違う顔が見えてくる。そんな暗喩が隠されているようにも読めます。もちろん、深読みし過ぎなんでしょうけど、このマンガが、ただバカバカしくて面白いだけの作品とひと味違うのは、大槻とは立場も境遇も違うのに、なぜか自分を重ねられるような、そんな気にさせてくれるからなんです。

 「もうやってらんねぇ!」って思う日は、ハンチョウに(日常の)外に連れ出してもらうの、おすすめです!

Image from Amazon.co.jp
1日外出録ハンチョウ(1) (ヤングマガジンコミックス)

1日外出録ハンチョウ
原作:萩原天晴、漫画:上原求・新井和也、協力:福本伸行
全19巻(続巻)

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