AIエージェントの活用基盤とそれを支えるAIモデルのアップデート
新AIサービス「Google Agentspace」とは? 統合検索・自動化・情報整理で働き方を変える
Google Cloudは、2024年12月17日、AIエージェント関連のアップデートに関する記者説明会を開催した。12月に入りGoogleは、多数のAI関連のサービスや機能を発表しているが、その中で新しい企業向けのAIプラットフォームとして登場したのが「Google Agentspace」だ。
Google Agentspaceは、Googleの検索機能を基盤として企業内に点在するデータソースにアクセスできる検索アシスタントと、独自カスタマイズができるAIエージェント、そして、AIノートブックである「Notebook LM」の企業版を統合したサービス。Google Workspaceユーザー向けの生成AI機能とは別に、AIを用いて検索や自動化、情報整理などを支援するプラットフォームが展開される。
グーグル・クラウド・ジャパンの執行役員 テクノロジー部門 兼 事業開発本部である寳野雄太氏は、「Google Agentspaceは、Geminiの高度な推論とGoogle品質の検索を、すべての企業データを統合するエージェントとして提供するもので、従業員が専門性を解き放つのを支援する」と説明する。
GeminiとGoogle検索技術を核とした統合検索・自動化・情報整理のプラットフォーム
まず寳野氏は、企業における生成AI活用の課題について言及。「89%の従業員が生成AIを活用する際に、6つ以上のデータソースから情報を集めている。SaaSやメール、基幹系システムなどから人が情報を集めて、生成AIに与えなければならない」と指摘する。
さらにAIエージェントの活用においては、情報がサイロ化されているため、業務ごとに検索範囲の異なるエージェントが乱立しており、全社統合のエージェントを構築したとしてもユーザー権限に応じたアクセスコントロールをどうやって実現するかという問題もある。
これらの課題を解決するのが、新たに提供開始された「Google Agentspace」だという。3つの領域におけるAIでの支援機能を統合したプラットフォームとなる。
まずひとつ目は、「社内情報の検索」だ。企業内に点在するデータソースを統合して、検索エージェントが社員が持つ権限の範囲内で見つけ出してくれる。Googleの検索機能が基盤となっており、マルチモーダル対応の検索技術、ナレッジグラフ技術、ウェブ検索を組み合わせて、最適化な答えを導き出す。
Google以外のデータソースはコネクターで統合。アプリケーション側のアクセスコントロールリスト(ACLs)を利用することで、回答の参照元を制限する。インデックスの取り込み時に、コンテンツフィルタをかけることも可能だ。
2つ目は、専門知識を持つAIエージェントによる「業務の自動化」だ。Google Agentspaceでは、構成済みのAIエージェントが用意されるほか、ローコード・ノーコードで自社の業務に最適化した専門のAIエージェントを作成することができる。
最後に「情報整理」の支援だ。Google Agentspaceには、AIノートブック「NotebookLM」の企業版が統合されており、データの新しい活用方法を提案してくれる。NotebookLMは、アップロードしたウェブサイトや文章、PDF、音声などを生成AIが読み込んで、その情報を基に、情報検索や要約、アドバイスなどをしてくれるサービスだ。取り込んだ情報に基づいて回答されるため、ハルシネーションが少なく、参照元が明確になるのが特徴だ。
企業向けのNotebookLMでは、取り込めるデータのフォーマットとして新たにMicrosoftのWordやPowerPoint、Excelなどにも対応しており、Google Workspaceを利用していないユーザーも活用しやすくなっている。高度な認証、データ保護にも対応しており、GoogleのCloud IdentityだけではなくOkta、Azure ADなど、既存のID管理サービスも利用できる。
Google Agentspaceは3つのエディションで提供され、企業向けNotebookLMをスタンドアローンで提供する「NotebookLM Enterprise」、コネクターを使用した統合検索を中心とした「Google Agentspace Enterprise」、AIエージェントの高度なアクションや、独自のAIエージェント作成などに対応する「Google Agentspace Enterprise Plus」に分かれる。日本語対応しており、今後、日本リージョンでの展開も予定されているという。