業務を変えるkintoneユーザー事例 第254回
「kintone AWARD 2024」レポート後編 今年のグランプリ企業は!?
日本エアコミューターは“ホームラン事例”で保守派を動かし、成田デンタルは“共感×人を動かす”で社内文化を変えた
2024年12月19日 07時00分更新
2024年11月9日、サイボウズの年次イベント「Cybozu Days 2024」にて、この1年で最もキラリと光る活用をしたkintoneユーザーを表彰する「kintone AWARD 2024」が開催された。全国6か所で展開されたkintoneユーザーが成功事例を共有するイベント「kintone hive」のファイナリストが集結。最終プレゼンを経て、観客参加型の選考によりグランプリを決定する。
前記事に続き、終盤の2社、九州・沖縄地区代表の日本エアコミューターと関東・甲信越地区代表の成田デンタルによるプレゼンを紹介する。
日本エアコミューター:ホームラン事例で“kintone=便利”が伝われば保守派も動く
5番手は、日本エアコミューター(通称JAC)の臼崎南海氏と西上正浩氏によるプレゼン「今と未来、繋ぐ~結いの空~」だ。
JACはJALの子会社で、ジェット機ではなく48人乗りの「ATR」というプロペラ機を運行している。JALの1万3000人に対して社員数は421人と少ないものの、kintone活用率は100%。JALグループにおけるkintone活用のリーディングカンパニーである。
臼崎氏と西上氏は整備部門でデスクワークの管理部に所属しており、普段はスーツで仕事をしている。「私たちJAC整備部門には、“世界一のATR整備チーム”になるという目標があります。そのために重要なチームワークが、kintone導入前の私たちには不足していました」と西上氏。
たとえば臼崎氏は、予期せぬ部品交換に対応する「クリティカルパーツオーダー」という業務を担当している。以前は、整備士からメールやFAX、電話のいずれかで連絡が来て、受付書を渡して、部品が届いたら渡すという流れをとっていた。
しかし、情報が分散されているため、整備士からの進捗の問い合わせで、毎日電話が鳴り止まなかった。臼崎氏はひたすら状況を調べる日々で、他の業務ができず残業続き。必要な部品が届かず、工程会議も大荒れだった。臼崎氏は、「最新状況はいつも不明で、それらの解決方法はひたすら力技。雰囲気も良くなく、チームワークは崩壊していました」と振り返る。
そんな整備部門を救ったのは、JALから着任した新しい整備管理部長だ。JAC整備が喧嘩ばかりしているのを見かねて、kintoneを導入することを決定。整備管理部長が、「自分たちを変えたい」と思っていたJACの整備部門と、変えられる仕組みを作れるkintoneをマッチングさせた。
整備管理部長は、kintoneを導入するなり「自己紹介アプリ」を作った。あくまで社員にkintoneを触ってもらうためのアプリであり、ドロップダウンやチェックボックス、ルックアップや文字列入力など、kintoneの標準機能がまんべんなく搭載されていた。
こうしてkintoneに慣れるにつれ、さっそく派閥が生まれた。「新しいものが出てくると、革新派と保守派の派閥が生まれます。ですが、最初はこれでいいのです。部長は革新派を支えつつも、保守派を排除することなく、両方とも温かく見守ってくれました」(西上氏)
そんな中、革新派が前述のクリティカルパーツオーダーの課題を解決するアプリを開発。分散していた情報を一ヵ所に集約して、進捗状況が一目瞭然になった。臼崎氏への問い合わせは激減し、現場の整備士が起票すると同時に関係各所にすぐ伝達されるため、メールでの連絡も不要となった。
「工程会議が荒れなくなりました。kintoneで把握できるようになった状況を踏まえて、今ではひとつ上のレベルで議論できるように。そして、“kintone=便利”だと図式ができれば、一気にみんなが動き出します。情報の分散という分かりやすい問題を解決したからです」(臼崎氏)
アプリ開発が進む中で、整備部門では2つの決め事をした。ひとつ目はkintone化する前にまず業務をシンプル化するということ。2つ目はできる限り標準機能でアプリを作るということだ。
「できる限り標準機能でアプリを作ることで、“持続可能なアプリ”になります。私もそうなんですが、ITが好きな人は凝ったアプリを作りがちです。凝ったアプリは便利な反面、中身がブラックボックスになってしまう。作成者がいなくなったら直せなくなるのはよくある話です」(西上氏)
こうしてkintoneを通じて、自分たちで考えて改善するようになり、業務がシンプルになり、スムーズな情報共有ができるようになった。その結果、チームワークも強化された。JACがkintone導入に成功したポイントは4つだ。
「1つ目は、まずkintoneに慣れることから始めること。2つ目は、“ホームラン事例”をひとつ作って、保守的な人にも良さを伝えること。メリットが伝われば人は動きます。3つ目は、kintone化する前に業務を見直してシンプル化すること。そして4つ目は、作成者がいなくなった時のためにシンプルなkintoneアプリ作りを心掛けることです」と西上氏は語った。
この連載の記事
-
第253回
デジタル
洗脳アプリで基幹システム移行の下地を作ったワイドループ、ワイガヤで職人気質の匠を巻き込んだ北斗型枠製作所 -
第252回
デジタル
kintone AWARD 2024開催! 入り口はひとつ作戦の桜和設備と現場と二人三脚で伴走したLILE THE STYLE -
第251回
デジタル
これからは“攻めの情シス”で行こう! 上司の一言でkintone伴走支援班は突っ走れた -
第250回
デジタル
誰にも求められてなかった「サイボウズ Officeからの引っ越し」 でも設定変更ひとつで評価は一変した -
第249回
デジタル
3000人規模の東電EPのkintone導入 現場主導を貫くためには「危機感」「勇気」「目的」 -
第248回
デジタル
入社1年目の壁を乗り越えろ!新卒社員が踏み出したkintoneマスターへの道 -
第247回
デジタル
Zoomを使わず「全国行脚」 振り返ればこれがkintone浸透の鍵だった -
第246回
デジタル
kintoneで営業報告を5.5倍に 秘訣は「共感を得る仕組み」と「人を動かす仕掛け」 -
第245回
デジタル
限界、自分たちで決めてない? 老舗海苔屋が挑んだkintoneの基幹システム -
第244回
デジタル
予算はないけど効率化はできる 山豊工建がkintoneアプリ作成で心掛けたこと - この連載の一覧へ