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業務を変えるkintoneユーザー事例 第253回

「kintone AWARD 2024」レポート中編は、関西および北海道・東北代表が登場

洗脳アプリで基幹システム移行の下地を作ったワイドループ、ワイガヤで職人気質の匠を巻き込んだ北斗型枠製作所

2024年12月12日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 2024年11月9日、サイボウズの年次イベント「Cybozu Days 2024」にて、この1年で最もキラリと光る活用をしたkintoneユーザーを表彰する「kintone AWARD 2024」が開催された。全国6か所で展開されたkintoneユーザーが成功事例を共有するイベント「kintone hive」のファイナリストが集結。最終プレゼンを経て、観客参加型の選考によりグランプリを決定する。

 前記事に続き、中盤の2社、関西地区代表のワイドループと北海道・東北地区代表の北斗型枠製作所によるプレゼンを紹介する。

今年のグランプリの行方はいかに?

ワイドループ:基幹システムのkintoneでのリプレース、抵抗を抑える“洗脳アプリ”で移行の下地づくり

 3番手となったのは、ワイドループの川咲亮司氏によるプレゼン「僕とkintoneの最優記」。基幹システムをkintoneでリプレースした話が、軽快なトークで語られた。ワイドループは、主に物流・小売現場で用いられるマテハン(物流機器)のリユースを手掛けており、そこから派生してマテハンの設置・撤去工事なども提供している。

ワイドループ 川咲亮司氏

 ワイドループでは、基幹システムである販売管理において某パッケージソフトを採用していた。営業では見積書や発注書の作成に、買い取りチームでは案件管理や商品のマスター登録に、そして総務・経理では各種伝票の管理に活用。そして、商品が売れると、各営業や買い取りチームがLINEやFAX、メールといった思い思いのツールでセンターに伝達する。「これだけ聞くと、システムをまるっと入れ替えなければいけないほどの大きな問題はないかと思います。しかし、このパッケージソフトが不思議なことをもたらしていました」と川咲氏。

 その不思議な事象のひとつ目が、「過大評価される備考欄」である。当時のシステムは、販売と仕入れの機能がそれぞれ独立しており、連携していなかった。それを運用でカバーしようとして、それぞれの備考欄に管理番号を入力していたという。「これを聞いて、やばいと思わない方、やばいですよ。これ、だいぶやばいですから。もう入力漏れ、入力ミスが多発しておりました」(川咲氏)

異なるソフトの備考欄に管理番号を入力していたが、漏れやミスが多発

 2つ目が「出荷されない予約品」。中古品を扱っているので、基本的に在庫は現品限り。そのため、確度が高い案件では、在庫を仮り押さえする。しかし、失注した場合、仮押さえしていることを忘れてしまうことあった。当然、倉庫にはいつまでたっても売れることのない在庫があふれてしまう。

 3つ目が「上書きされる過去」。商品の売れ行きが想定より鈍い場合は、プライスダウンする。その際、当時のシステムは、商品マスターの販売単価を更新すると、過去の売上データまですべて新価格で更新してしまう。

 リユースという一般とは異なる業態だったため、カスタマイスを重ねてきた結果、こういったバグとも言える問題があちこちで発生した。さらに、これらが原因で、毎年決算が合わないことも問題だった。たまらず川咲氏はこの状況を改善すべく、kintoneの導入を提案した。

「基幹システムを変えるときの壁、そう、旧システムに慣れ親しんだ社員の抵抗です。“感情論というレガシーの武器”を出してくるんです。解決方法は対話だというのは分かっていますが時間がかかる。私は良からぬことを思いつきました。社員を洗脳してしまおう。そして私は社員に洗脳するためのアプリを3つ作りました」(川咲氏)

kintoneの良さを周知するため3つの「洗脳アプリ」を作成

 まずは、最も非効率な運用をしていた業務フローを、洗脳アプリである「入出荷管理」アプリに置き換えた。「社員にkintoneって便利だよ」という印象を刷り込むためだ。続いて、「業務日報」アプリを作り、毎日フリースタイルで書くだけというルールを設け、「社員にkintoneって初心者にめちゃ優しい」という印象を刷り込んだ。最後に、「39ポイント」アプリを作成。kintone経由で、同僚への感謝の気持ちをポイントとして贈ることができ、「社員のkintoneへの好感度」を上げた。

 kintoneへの抵抗がなくなってきたため、川咲氏は一気に基幹システムのリプレースプロジェクトを推進する。各部門にヒアリング行脚を行い、どの業務でどんな情報を入力しているのかを調べ上げた。その上で、業務フローをkintoneに置き換える際のシミュレーションを作成。サイボウズのパートナーであるアールスリーインスティテュートに開発を依頼した。

「半ば強引にスタートしたところ、社内からの問い合わせが鳴り止みませんでしたが、3ヶ月も経つと落ち着いて、一部の社員が『あれ、便利じゃね』と言い始めました。本気を出せばkintoneって基幹システムまで作れてしまいます。でもその際には、問題提起とロジカルな情報整理ができる人材が社内に最低1名必要です。これがプロジェクトのエンジンとなる人間であればなお良しだと思います。そして、なんだかんだで人間関係も重要です。人間関係がしっかりしていれば、極端な話、kintoneに限らずどんなシステムでも大きな反発なく運用できるようになると思います」(川咲氏)

営業、買取、経理、センターのシステムまでをkintoneにリプレース

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