このページの本文へ

最新パーツ性能チェック 第456回

「Ryzen 7 9800X3D」は高画質設定でも最強ゲーミングCPUであることに間違いはなかった

2024年12月04日 12時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「Silent Hill 2」

 Silent Hill 2は画質“最高”、レイトレーシングとアップスケーラーはオフ(レンダースケール100%)、モーションブラーはオンに設定。新規ゲームスタート直後、展望台から最初のセーブポイントの先にあるカットシーン直前までのフレームレートを計測した。

Silent Hill 2:2560×1440ドット時のフレームレート

 低画質設定でも平均フレームレートはほぼ横並びだったゲームだが、高画質設定でもその傾向は同じ。強いていえばRyzen 7 9800X3Dがギリギリ勝ったといえなくもないが、この程度は誤差というべきだろう。

Silent Hill 2:ベンチマーク中の平均消費電力

 Core i9-14900Kの消費電力が84Wと非常に低い。つまりSilent Hill 2の実装はGPUパワーへの依存度がかなり高く、GPUのパワーアップ抜きでは高フレームレートは期待できないと考えられる。

「Starfield」

 Starfieldでは画質“ウルトラ”、異方性フィルタリングは16x、FSR 3はオフでレンダースケール100%設定とした。都市ニューアトランティスのMAST地区を移動する際のフレームレートを計測した。

Starfield:2560×1440ドット時のフレームレート

 描画負荷を上げることでRyzen 7 9800X3Dのアドバンテージはかなり薄まった。低画質設定ではCore i9-14900Kに対して9%平均フレームレートが高かったが、今回の検証では2%にまで圧縮された。

Starfield:ベンチマーク中の平均消費電力

 StarfieldはCPUの負荷が非常に高いが、画質を上げてGPU側が律速なったことでCPUの消費電力はかなり減った。Ryzen 7 9800X3Dの場合123W→97W、Core i9-14900Kの場合279W→221Wというあんばいだ。発熱と消費電力はリンクするので、ゲーム時のCPUの発熱を抑制したいなら、画質を上げる(フレームレートの低下はさておき)のも一つの手として考えられる。

「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」

 前回検証時にはリリースされていなかった話題の新作S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobylも試してみよう。画質は“ウルトラ”に設定。ゲーム中最初に到達する拠点内において一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:2560×1440ドット時のフレームレート

 アップスケーラーやフレーム生成なしではWQHD&最高画質設定で平均60fpsを超えるのがやっと、という点からこのゲームは重めであることがわかる。今回検証した中ではRyzen 7 9800X3Dが辛うじて平均フレームレートにおいてトップに立ったが、2番手のCore i9-14900Kとの差はわずか。ただしRyzen 7 7800X3Dとの差は最低フレームレートにおいて強く表れているため、9800X3Dを選ぶメリットは十分にある。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:ベンチマーク中の平均消費電力

 消費電力の傾向は他のゲームと大差ない。Ryzen 7 9800X3Dで平均76WなのでCPUの負荷は程々に大きいが、超高負荷というわけでもないようだ。

「The Division 2」

 The Division 2ではAPIをDirectX 12、画質“ウルトラ”に設定。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。

The Division 2:2560×1440ドット時のフレームレート

 低画質設定検証において、The Division 2はRyzen 7 9800X3DとCore i9-14900Kの平均フレームレート格差が最も大きくなったゲームだった(約1.5倍)。しかし描画負荷を上げるとRyzen 7 9800X3DとCore i9-14900Kの差は一気に縮まる。ただ最低フレームレートではCore i9-14900Kより15%程度高い値を示しており、GPUバウンドな状況下でもRyzen 7 9800X3Dは輝けることを示している。

The Division 2:ベンチマーク中の平均消費電力

 前回の消費電力データと比較すると、低画質設定時に比べRyzen 7 9800X3DやCore i9-14900Kでは、CPUの消費電力が30W程度低下している。一方Ryzen 7 7800X3Dは20W程度と下がり幅が小さいが、逆にいえば7800X3Dは負荷をかけても性能が出にくい(だから最低フレームレートも低め)ことを示している。

「The First Descendant」

 The First Descendantは画質“ウルトラ”、レイトレーシングもオフに設定。マップ“木霊の沼”内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

The First Descendant:2560×1440ドット時のフレームレート

 低画質設定の時は最低フレームレートにおいてRyzen 7 9800X3Dが若干有利だったが、今回はどのCPUもキレイな横並び。ボス戦など激しい戦闘シーンになればまた変わってくる可能性もあるが、条件を揃えやすいシーンにおけるパフォーマンスに関しては、CPUの性能差はフレームレートへの影響が小さいと考えてよいだろう。

The First Descendant:ベンチマーク中の平均消費電力

 消費電力で特にコメントする部分はない。

「The Last of Us Part 1」

 The Last of Us Part 1は画質“最高”、レンダースケールは100%に設定。新規ゲーム開始後にプレイする街を逃げ回るシーンにおけるフレームレートを計測した。

The Last of Us Part 1:2560×1440ドット時のフレームレート

 The Last of Us Part 1も高画質設定にすることで低画質設定時には獲得できていた平均フレームレートのアドバンテージが消失したパターンだ。しかし最低フレームレートには非常に大きな差がついており、Ryzen 7 9800X3Dは7800X3Dに対しては約10%、Core i9-14900Kに対しては27%以上の伸びを示した。平均フレームレートの103~104fpsはGPU側の処理限界によるものだが、最低フレームレートの違いはCPU側の限界によるものと考えられる。

The Last of Us Part 1:ベンチマーク中の平均消費電力

 Mount & Blade II: Bannerlordと同様に群衆の表現にCPUパワーを使うため画質を上げてもCPUの消費電力は大きく減ることはない。ただGPUバウンドになっているので低画質設定と比較すると若干消費電力は低下するようだ。

「The Witcher 3: Wild Hunt」

 The Witcher 3: Wild Huntは画質“最高”、アンチエイリアスTAAUに設定。マップ“ノヴィグラド”内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

The Witcher 3: Wild Hunt:2560×1440ドット時のフレームレート

 低画質設定検証時はRyzen 7 9800X3Dが最強だったが、高画質設定ではCore i9-14900Kが逆転。ただし最低フレームレートにおいてはCore i9-14900KはRyzen 7 9800X3Dにまったくおよばない。3D V-CacheはGPUバウンドな状況でも最低フレームレートの引き上げに貢献してくれる。

The Witcher 3: Wild Hunt:ベンチマーク中の平均消費電力

 Core i9-14900Kの消費電力に比べ、Ryzen勢は5分の1~3分の1程度の電力で済んでいる。

「Tiny Tina's Wonderlands」

 Tiny Tina's Wonderlandsは画質“バッドアス”に設定。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。

Tiny Tina's Wonderlands:2560×1440ドット時のフレームレート

 画質を上げると平均フレームレートでCore i9-14900KとRyzen 7 9800X3Dは差が出ないが、最低フレームレートでは9800X3Dに軍配があがる、というおなじみのパターン。さらにいえばRyzen 7 7800X3Dは9800X3Dに近いフレームレートを出すものの、平均・最低フレームレート両面において数%劣るという点もパターン通りだ。

Tiny Tina's Wonderlands:ベンチマーク中の平均消費電力

 Ryzen 7 9800X3Dの消費電力は低画質設定時に比べ30Wも減っている。つまりGPU側が律速となり、CPUの仕事が30W分減ったことを示している。

「Uncharted Treasure Hunter Collection」

 Uncharted Treasure Hunter Collectionでは画質は“ウルトラ”、レンダースケールは100%に設定。チャプター“十二の塔”においてマップ内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Uncharted:2560×1440ドット時のフレームレート

 低画質設定検証時では平均フレームレートは横並びだが、最低フレームレートは3D V-Cache搭載のRyzenが有利であった。そして今回の高画質設定検証ではRyzen 7 7800X3Dが他2CPUに対して5%程度引いた位置で終わったが、Ryzen 7 9800X3DとCore i9-14900Kはほぼ同レベル。ただ最低フレームレートで9800X3Dがやや有利なので、総合としては9800X3Dが優秀といったところか。ただ3者の差は非常に小さく、これ以上のフレームレートを得るにはアップスケーラーやフレーム生成技術を使うか、もっと強力なGPUを使う必要がある。

Uncharted:ベンチマーク中の平均消費電力

 描画負荷を上げGPUバウンドになればCPUの消費電力は下がる。

「Valheim」

 Valheimでは画質“Quality”、レンダースケール100%に設定。マップ内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Valheim:2560×1440ドット時のフレームレート

 低画質設定だとRyzen 7 9800X3Dが猛威を奮ったゲームだが、高画質設定にすると平均フレームレートの差は消失。ただ最低フレームレートはRyzen 7 7800X3Dに対しては約10%、Core i9-14900Kに対しては約15%高い位置にRyzen 7 9800X3Dは位置しており、最新世代の3D V-Cache搭載モデルの意地を示した。

Valheim:ベンチマーク中の平均消費電力

 消費電力についてコメントすべき部分はない。

「Witchfire」

 Witchfireでは画質は“Ultra”、アップスケーラーはオフ(レンダースケール100%)に設定。マップ“Apothecary”における一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Witchfire:2560×1440ドット時のフレームレート

 Witchfireは前回の低画質設定検証では、Ryzen 7 7800X3Dの最低フレームレートが9800X3Dを上回るという観測データが得られたゲームだ。前回のような番狂わせは起きなかったが、平均フレームレートでは9800X3D>7800X3D(3%アップ)なのに、最低フレームレートでは両者に差はない。Marvel's Spider-Man: Miles Moralesのようなマイクロスタッターは体感できないが、なんらかの理由でRyzen 7 9800X3Dで十全な性能を発揮できないゲームなのかもしれない。

Witchfire:ベンチマーク中の平均消費電力

 57本ゲームを見てきたが、どのゲームもCPUの消費電力の序列は変わらなかった。Ryzen、特に3D V-Cacheを搭載した製品のゲームにおける省電力性能はすばらしい。

カテゴリートップへ

この連載の記事