「A Plague Tale: Requiem」
A Plague Tale: Requiemでは画質“最高”をベースに、解像度最適化(アップスケール)は“ウルトラクオリティ”とした。ゲーム開始直後のステージにおいて、一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
低画質設定での検証では、Core i9-14900Kが平均フレームレートにおいてRyzen 7 9800X3Dに辛勝しつつ、最低フレームレートで逆に大差で負けてしまったタイトルだった。今回の検証では3者の差がほとんどない。最低フレームレートではRyzen 7 9800X3Dは他のCPUにアドバンテージは出せているので一応の効果はあったことになる。
消費電力の傾向は低画質設定検証時と同様に、Core i9-14900Kの消費電力が飛び抜けて高く、Ryzen 7 9800X3DはCore i9-14900Kの半分以下、さらに下に7800X3Dが位置する。ただし各CPUの消費電力は低画質設定よりも下がっている。GPU側が律速になるような設定ではCPUの絶対的な仕事量が減り、それが消費電力に反映されているというわけだ。
「ARK: Survival Ascended」
ARK: Survival Ascendedでは画質“最高”、AA“ネイティブ”に設定。マップ“Aberration”のポータルからスタートし、一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。計測時には徘徊する恐竜から不可視になるコマンドを利用している。
低画質設定ではRyzen 7 9800X3Dが7800X3Dを平均フレームレートで20%近く差をつけたゲームだが、今回はその差が約2%にまで圧縮。Core i9-14900Kの方がわずかに高い平均フレームレートを示しているが、これは誤差のようなものだろう。
Core i9-14900Kを筆頭にRyzen 7 9800X3Dや7800X3Dが続くという序列は変わらない。低画質設定よりもCPUの消費電力が下がっているのもA Plague Tale: Requiemと共通である。
「ARMA 3」
ARMA 3では画質はプリセットの“Very High”を選択。アンチエイリアスなどの設定はこのプリセットに準じるものとしたが、総合視距離は40000、オブジェクトの視距離は8000、PiPの視距離は13000に設定した。ワークショップアイテム“Yet another ARMA 3 Benchmark”を利用し、ベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
前回の低画質設定検証時では、Ryzen勢がCore i9-14900Kに対し一方的優勢を誇ったゲームだったが、今回の検証ではやや様子が異なる。Ryzen 7 9800X3Dがトップである点は変わりないが、Core i9-14900Kがパフォーマンスを伸ばし平均フレームレートでは2番手、最低フレームレートではトップに躍り出た。ユニットを動かす処理が重いベンチマークだが、画質を上げるとCPUコア数も必要になるようだ。
今回の検証のように画質を低から高設定に変えるとGPU側が律速となりCPUの消費電力が大幅に下がることが一般的だが、このベンチマークでは律速側はCPU処理であるようだ。その証拠にCPUの消費電力は低画質設定検証時と大差なく、システム全体の消費電力も200~260WとRX 7900 XTを使っているわりには低い。
今回の検証では、ほとんどのケースにおいてGPUの消費電力は315W前後に収束しているがこのARMA 3ではGPUの消費電力は110W程度である。つまりGPUに仕事が回らず、結果としてシステム全体の消費電力が低いというパターンになっているようだ。
「Apex Legends」
Apex Legendsは起動オプションでDirectX 12を選択かつ144fps制限も解除し、アンチエイリアスはTAA、その他の設定は一番重いものを選択。射撃訓練場で一定の行動をとった際のフレームレートを計測した。
Apex Legendsは300fpsでソフトウェア的に頭打ちにされてしまう。画質を上げることで平均フレームレートは若干下がったものの、どのCPUでもほぼ同じようなフレームレートになった。強いていえばRyzen 7 7800X3Dが9800X3Dに比較すると伸びていない感はあるが、誤差の範囲内といっても差し支えない程度の差でしかない。Core i9-14900Kに関してもワットパフォーマンス(後述)を別にすれば、Ryzen 7 9800X3Dと互角以上の働きをしているといえる。
前回、低画質設定で検証した際はどの環境でもシステム全体の消費電力が他のゲームに比して低かった(Ryzen 7 9800X3Dで440W前後が多かった中、Apex Legendsでは320W程度)。300fpsで頭打ちになる関係でGPUが休み休み動作しているから、というのがその理由だ。だが今回の高画質設定検証ではGPUの負荷が上がり、300fpsの制限を受けていてもほぼ限界まで動作しているような状況。
ここで注目したいのはCPUの消費電力だが、Ryzen勢は低画質設定の時よりもわずかに消費電力が下がっているのに対し、Core i9-14900Kでは30W以上増えている(155W→188W)。メモリーアクセスが増大し、3D V-Cacheを持たないCore i9-14900Kはメモリーコントローラーの仕事が増えた結果消費電力が増えたのに対し、Ryzen勢は大容量L3キャッシュによってアクセス頻度が抑えられた、という理由が一つの可能性として考えられる。
「Ashes of the Singularity: Escalation」
Ashes of the Singularity: Escalationの内蔵ベンチマーク機能には、CPU FocusedあるいはGPU Focusedの2パターンのテストが実装されているため、このゲームではそれぞれのパターンで検証した。APIはDirectX 12、画質は“Crazy”に設定。各ベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
CPUの優劣は低画質設定検証時と変わっていない。いずれのベンチマークにおいてもトップはRyzen 7 9800X3Dで不動だが、2番手以降はテストの内容により変わる。つまり多量のユニットを動かすCPUにフォーカスしたベンチマークではCore i9-14900Kがコア数の多さを活かし2番手となったが、エフェクトの重いGPUにフォーカスしたベンチマークでは3D V-Cacheを抱えるRyzen 7 7800X3Dが2番手となる。
GPUフォーカス時のフレームレートは低画質設定検時よりもフレームレートが下がっているが、CPUフォーカス時のフレームレートは画質にほぼ関係していないなど、非常に興味深い結果が得られた。
CPUフォーカスのベンチマーク時はCPUに強烈な負荷をかけるため、どのCPUも消費電力が大きいがRyzen 7 9800X3Dは7800X3Dのほぼ2倍という点は前回の結果を踏襲している。GPUフォーカス時はCPUの消費電力が10W程度減っているかわりにシステム全体の消費電力が激増しているが、これはいうまでもなくGPUがより多くの仕事をしているためだ。
「Assassin's Creed: Mirage」
Assassin's Creed: Mirageでは画質は“最高”、アンチエイリアスはTAAに設定。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
前回の低画質設定時では250fps近辺で頭打ちだったが、今回は140fpsあたりで頭打ちとなった。前回はどのCPUもフレームレート差はわずかだったが、今回はCore i9-14900Kだけ微妙に低い結果に終わった(対Ryzen 7 9800X3Dで約2%ダウン)。
消費電力の傾向はこれまで見てきた傾向と同じ。Core i9-14900KはRyzen 7 9800X3Dの3倍近い消費電力を使用しているため、フレームレートは同じレベルでもワットパフォーマンスという観点ではRyzen 7 9800X3Dが圧倒している。
「Assetto Corsa」
Assetto Corsaでは画質系の設定はすべて最高に設定。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
低画質設定時はRyzen 7 9800X3Dが強かったが、今回のように高画質設定にすると傾向が激変。どのCPUもほぼ同じようなフレームレートに収束した。反射やスモーク、ポストプロセスといった処理が重くGPU側が律速になったためだと考えられる。
CPUの消費電力は他のゲームより低いのがAssetto Corsaの特徴だが、今回の高画質設定検証でもその傾向は変わらない。それどころかCore i9-14900Kの消費電力は低画質設定時では平均110Wだったのに対し、今回は70Wとさらに低下。つまりGPU側の処理が重いためフレームレートが伸びず、CPUもフレームごとの処理頻度が減ったため消費電力も減った、というサイクルになっていると考えられる。
「Atomic Heart」
Atomic Heartでは画質“アトミック”を選択。ゲーム開始直後“科学都市チュロメ”内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
高画質設定にすることでCPUの力量差がほぼ消滅した。このような設定であればRyzen 7 9800X3Dは無理して買う必要なし、という結論にも導けるだろう。最も重い“アトミック”ではなく“高”や“ウルトラ”設定にすれば差が出る可能性はあるが……。
Core i9-14900Kが最も電力を消費し、Ryzen 7 9800X3Dは14900Kの半分以下で済んでいる。
「BIOHAZARD RE:4」
BIOHAZARD RE:4では、画質はレイトレーシング以外は最高に設定。ゲーム序盤で訪れる村落マップを移動する際のフレームレートを計測した。
低画質設定時ではRyzen 7 7800X3Dよりも9800X3Dの方が約13%上の平均フレームレートを出せていたゲームだが、最高画質設定にすることでCPUパワーの差が完全に消滅。どのCPUでも同等の結果となった。
相変わらずCore i9-14900Kの消費電力が際立って大きく、Ryzen勢の2~3倍の電力を消費している。
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