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ウイングアーク1stの「UpdataNOW24」基調講演パート4

最近話題のさくらインターネット 成長と余白で変化に対応してきた28年の知見

2024年11月18日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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自社でソフトウェアのコントロール権を持つのは企業の経営戦略

 田中氏はなぜそんな会社を作ったのか? さくらインターネットは成長の上下が激しい会社もある。2005年に上場した当初はWeb 2.0ブームで成長していたが、その後データセンターブームが来て、都市型データセンターがどんどん建ち始めた。アセットも、コストも持たないさくらインターネットは、2011年に「これからはクラウド化する社会になり、コンピューティング資源が重要になる。省エネになるので、自然エネルギーが必要になる」というビジョンを立て、風力発電で電力がまかなえる石狩にデータセンターを立ち上げた。

 とはいえ、単に北の地にデータセンターを建てただけでは、ハウジングの機能がないため、お客さまが来ない。そのため、同時に国産クラウドサービスの「さくらのクラウド」をスタートさせた。13年前には、東京から地方へのデータセンター移転、データセンターからのコンピューティング資産の利用というコンセプトをすでに打ち上げていたわけだ。そして、GPUサーバーの提供開始は今から8年前。「GPUを提供することによって、リモートから超高速なコンピューターが使える。場所は関係なく、いかに省エネで安く使える基盤があるかという時代になりました」(田中氏)

 その後も外資系パブリッククラウドの台頭で厳しい時期はあったが、昨年はガバメントクラウドの認定事業者となり、さらにAIの基盤としても認知されるようになった。これが可能になったのは、1つは自社ですべてを垂直的に提供してきたからだという。「データセンターを維持する人、ソフトウェアを開発する人、弊社は仮想化基盤までOSSをベースに自社で作っている」と田中氏はアピールする。

 「最近は仮想化基盤のライセンス料が上がって大変という話もありますが、いかに自社でソフトウェアのコントロール権を持つのか。これは収益よりも、経営戦略として重要だと思っている」と田中氏はアピールする。大企業に比べて資本や売上では勝てない。でも、自前でソフトウェアを開発でき、インフラを自前で運営できる規模は確保できる。そうなると、次のビジネスはどうなるかを予測しながら、会社をそのビジネスにフィットさせた結果、さくらインターネットの場合は生成AIという大きな波に乗ることができたという(関連記事:久しぶりの事業説明会でさくらインターネットの田中社長が話したほぼ全部)。

コストを下げるという考えを忘れ、成長に向き合おう

 田中氏は、「失敗しないことを積み上げても、大きな成功にはつながらない。こうなるはずとビジョンを描いても、そうなるかはわかりません。でも、ビジョンを描いて、近づけていくことができる。生成AIのブームが来るまではかなりハードでしたけど、経済産業省からの投資の依頼に対して、自社の売り上げを超える規模の投資を決断し、AI基盤を構築した」と振り返る。

 その結果、ガバメントクラウドの唯一の国産事業者として認定され、クラウドプログラムでは575億円の助成金を得ることができた。「複数の事業者にお声がけをしたそうです。その中で当社だけがガバメントクラウドを前向きにやる事業者だった。当初は外資系クラウド事業者を前提とした基準をいかに打ち壊すかを前提としていたが、それだとクラウドリフトはおそらくうまくいかない。日本のデジタル事業者が自らスキルを上げ、米国の事業者に対抗できる力を付けていく重要性をずっと説いてきました」と田中氏は語る。

ガバメントクラウドの認定事業者で唯一の国内事業者であり、クラウドプログラムでは575億円の助成金を得る

 ガバメントクラウドに認定されるかもわからない時期から、同社は毎年100人近いエンジニアを新規採用し、30億円近い投資は70億円にまで膨らんだ。ガバメントクラウドに関してもまだ1円も売上は経っていない状態。「でも、それでもやらなければならない。これは本業。サーバーで28年前に起業し、これをいかにクラウドビジネスに拡げていくか。これがわれわれのテーマでもあります」と田中氏。GPUクラウドサービスの高火力サーバーもようやくヒットし、決算発表でも大幅な上方修正が実現した。

 最後にアピールしたのは、前述した「成長」や「余白」、そして「変化」への対応というサイクルだ。「物質という点だと、日本は資源もとれないし、モノの値段もドンドン上がっている。だから、モノのコストを下げることができない。インフレの社会になっているので、コストを下げるのではなく、売上を上げないと、利益がとれなくなっている。だから、これからはコストを下げるという考えを一切忘れ、成長するという頭にそろそろシフトすべき」と訴える。

成長、余白、変化への新たなチャレンジのサイクル

 人口増やデフレを前提としたコスト削減より、売上と利益の拡大を志向した成長戦略に前向きになろうというのが、田中氏のメッセージ。「払うお金が増えても、もらうお金が増えれば、サプライヤーにも、従業員にも、いいお金が払える。今まではたくさん売らなければ利益が出ないという刷り込みがあったかもしれないけど、これからのインフレの時代は成長に向きあっていく必要があると思います」と語る。UpdataNOW24に集まった経営者を含めた多くのビジネスパーソンに向けた強いメッセージだった。

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