「Silent Hill 2」
Silent Hill 2は画質“低”、アップスケーラーはオフ(レンダースケール100%)に設定。新規ゲームスタート直後、展望台から最初のセーブポイントの先にあるカットシーン直前までのフレームレートを計測した。
一応Ryzen 7 9800X3Dが最低フレームレートにおいてアドバンテージがあることは示されたが、平均フレームレートについてはどのCPUも差がない。ただ今回の検証ではレイトレーシングをオフにしたのにオンに戻るという不具合があったため、GPU側が強烈な律速になっている可能性がある。
Ryzen 7 9800X3Dと7800X3Dの消費電力の差が比較的小さいことを除けば、序列は他のゲームと似たようなものとなった。
「Starfield」
Starfieldでは画質“低”、異方性フィルタリングおよびFSR 3はオフに設定し、レンダースケール100%設定とした。都市ニューアトランティスのMAST地区を移動する際のフレームレートを計測した。
Starfieldは論理コア数の多いCore i9-14900Kが輝けるゲームだったが、Ryzen 7 9800X3Dはコア数が(比較的)少ないわりにフレームレートを伸ばすことに成功。他の2者に対し平均フレームレートにして10%弱の向上を果たしている。
CPUの電力消費において、StarfieldはDead Spaceの次に大きくなりやすい。Core i9-14900Kの半分以下で済んでいるが、街を歩き回るだけで120W以上消費するというのは、果たしてどういう処理を行っているのだろうか?
「The Division 2」
The Division 2では画質“低”に設定。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
今回試した56本のゲームの中で、Core i9-14900Kに対し最も大差を付けたのがこのThe Division 2である。Ryzen 7 9800X3Dは7800X3Dに対しては僅差(5%)に終わっているが、Core i9-14900Kに対しては56%もの差をつけた。The Division 2の次に差がついたのは同じUBI作のGhost Recon: Breakpoint。この時代(どちらも発売は2019年)UBI製ゲームに使われているエンジンの特性なのかもしれない。ただ前述のAssassin's Creed: Mirageではフレームレートの出方の傾向はもっとバランスが取れているので、同じUBI製ゲームでもエンジンによりけり、といったところか。
Core i9-14900Kは消費電力が多いわりにフレームレートが出ない。Core i9-14900Kのワットパフォーマンスが11fps/10Wなのに対し、Ryzen 7 9800X3Dは49fps/10Wと大差をつけている。
「The First Descendant」
The First Descendantは画質“低”に設定。マップ“木霊の沼”内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
The First Descendantは平均フレームレートは僅差でCore i9-14900Kに負けるが、最低フレームレートにおいては逆転するというパターンの結果が得られた。CPUを変える(実際にはマザーもだが)ことで最低フレームレートが15fps前後変わってくるというのは案外大きい。
特にコメントする部分はないが、ワットパフォーマンスという点でいえばCPUの消費電力の絶対値が低いRyzen 7 7800X3Dに軍配があがる。
「The Last of Us Part 1」
The Last of Us Part 1は画質“最低”、レンダースケールは100%に設定。新規ゲーム開始後にプレイする街を逃げ回るシーンにおけるフレームレートを計測した。
やや地味目ではあるが、Ryzen 7 9800X3Dが他の2CPUに平均フレームレートにおいてしっかりと差を付けている。Ryzen 7 7800X3Dに対しては約10%、Core i9-14900Kに対しては約16%となった。
群衆の描写にCPUパワーを使うせいか、CPUの消費電力は全体に高め。Ryzen 7 9800X3DでCPUが100Wを超えているのは4本(Dead Space/ Starfield/ The Last of Us Part 1/ Cyberpunk 2077)だけだ。
「The Witcher 3: Wild Hunt」
The Witcher 3: Wild Huntは画質“低”、アンチエイリアスTAAUに設定。マップ“ノヴィグラド”内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
通行人の多い街マップでの検証なのでコア数の多いCore i9-14900Kが有利かと思っていたが、ここでも3D V-Cacheは強かった。Ryzen 7 9800X3Dは最低・平均フレームレートの双方において他のCPUを圧倒。特にCore i9-14900Kに対しては20%以上上の結果を出した。
消費電力についてはこれまで観測されたデータの傾向と変わらない。
「Tiny Tina's Wonderlands」
Tiny Tina's Wonderlandsは画質“最低”に設定。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
最低フレームレートこそRyzen 7 7800X3Dと大差なかったが、平均フレームレートでは9800X3Dは7800X3Dに対し約9%上回った。さらにCore i9-14900Kに対しては約19%上になるなど、インテル製CPUを突き放している。
ここまで代わり映えのしないグラフを50個以上出しているのは少々申し訳ないが、グラフ化して並べることで見えてくる情報もあるのだ。
「Uncharted」
Unchartedでは画質は“低”、レンダースケールは100%に設定。チャプター“十二の塔”においてマップ内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
Unchartedでは平均フレームレートは240fpsで頭打ち。だが最低フレームレートは3D V-Cacheを搭載するRyzenの方が伸びるという結果が得られた。最低フレームレートのトップはRyzen 7 7800X3Dだが手動計測によるデータなので、9800X3Dとの差はブレの範囲で片付けても問題ないだろう。
フレームレートに差がなくてもCPUの消費電力には差があるというパターンが、ここでも展開されている。
「Valheim」
Valheimでは画質“Low”、アンチエイリアスはFXAA、レンダースケール100%に設定。マップ内の一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
グラフィック(の見映えが)ローポリ寄りなので差がつかないだろうと思っていたが、予想に反してRyzen 7 9800X3Dが他を引き離した。Ryzen 7 7800X3Dに対しては10%、Core i9-14900Kに対しては17%上回っている。
コメントすべき部分はない。
「Witchfire」
Witchfireでは画質は“Low”、アップスケーラーはオフ(レンダースケール100%)に設定。マップ“Apothecary”における一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
これが最後の検証になるが、Witchfireでは平均フレームレートに差はなく、最低フレームレートではRyzen 7 7800X3Dが9800X3Dを上回る結果が出た。なぜこのような結果が出るのかまで考察できる材料はないが、中にはこういった結果が得られるゲームもあった、という点は覚えておきたい。
1本くらいはRyzen 7 9800X3Dの消費電力が7800X3Dを下回るかもしれないと考えていたが、どう頑張っても9800X3Dの消費電力が大きいデータしか出てこなかった。
Ryzen 7 9800X3Dの総合的なパフォーマンス
以上でゲーム検証は終了だが、次の表はRyzen 7 9800X3DがRyzen 7 7800X3DとCore i9-14900Kに対しどの程度平均フレームレートにおいて上回ったかをパーセントで示したものだ。Ryzen 7 7800X3Dのところに110%とあれば、Ryzen 7 9800X3Dは7800X3Dに対し10%高い平均フレームレートを出したという意味になるし、98%ならばRyzen 7 9800X3Dの方が2%低いフレームレートを出した、という意味になる。
ゲーム56本、58のテスト結果を概観すると、Ryzen 7 9800X3Dが7800X3Dに対し負け~イーブン~5%未満の辛勝に終わったものは25本、5%以上の伸びを記録したものは33本、うち21本が10%以上の伸びたものだった(徹夜明けで計算式が間違っていないといいのだが……)。中にはRyzen 7 7800X3Dに僅差で負けたものもあったが、全体としては勝ち越しており、なおかつ勝つ場合は10%以上の差をつける場合が多いとことになる。
またCore i9-14900Kと比較すると負け~5%未満の辛勝までは18本、10%以上の伸びは34本という結果になった。時間やストレージ容量の制約からテストできなかったゲームも多いが、ここまでデータを揃えればRyzen 7 9800X3Dは現時点での最強ゲーミングCPUであると断言できるだろう。
何をもって最強CPUかという議論はあるが、筆者の場合Ryzen 9 7950X3Dのようにセットアップに特定のコツ(Xbox Game Barのアップデートやゲーム情報の管理など)も不要で、どんなゲームでも確実に速くなる、という意味で最強という単語を使っている。この点はご理解いただきたい。
ワットパフォーマンスについて
最後に、各ベンチマークにおける平均フレームレートを、各CPUの消費電力で割り10倍したもの、すなわち“10Wあたりのフレームレート”をワットパフォーマンスとして比較してみたい。当然数値が大きいほど電力効率が良いということになる。
58のテストのテストでほぼ共通しているのは、Ryzen 7 9800X3Dの消費電力は7800X3Dより20~40W程度高いことが多く、さらにレームレートにおいては差がない状況でも9800X3Dは7800X3Dよりも電力を消費していた。ワットパフォーマンスという点でいえばRyzen 7 7800X3Dは非常にバランスが良く、9800X3Dが勝っているシーンは1つとして存在しない。
Ryzen 7 9800X3DはTDPを120Wまで引き上げ、ベースクロックも高く設定する攻めの仕様を採用した。Zen 5のシングルCCDのスイートスポットが105Wあたりにあることを考えると、それを超えたTDP 120W設定はいかにフレームレートにおいて旧世代やライバルを打ち負かすか、が至上命題だったのだろう。ワットパフォーマンスでは今ひとつだが、Ryzen 7 9800X3Dがゲームのフレームレートを稼げる新ゲームキングであることは疑いの余地はない。
以上でゲーム56本、58個のテストを用いたRyzen 7 9800X3D検証は終了だ。中にはCore i9-14900KやRyzen 7 7800X3Dに負けてしまったゲームもあったが、差としては極めて小さく、ベンチマークの誤差と判断しても差し支えない程度の差であった。
だが今回の検証結果に満足していない人もいるだろう。筆者はCPU検証をする際、GPUのボトルネックがなるべく出ないように画質を下げて検証するからだ。そこで追加検証として、高画質設定(WQHD+高画質)におけるパフォーマンス検証も進行している。手間がかかるので時間はかかるが、2024年最強のゲーミングCPUの実力を見極めたい方は、次回の検証をぜひ楽しみにしていただきたい。
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