AITRASを活用したデモストレーションも披露
説明会の後に、AITRASのユースケースを紹介するデモンストレーションが披露された。
通信の安定性を紹介するために、まず100台のスマホで動画をストリーミング再生するデモが披露された。SFCのAITRASエリアは20セルで構成されるが、各セルに5台のスマホを設置して同時に動画を再生。その様子がZoomで中継された。ややわかりにくいデモではあったが、100台が同時に接続しても、スムーズに動画を視聴できることはわかった。
NVIDIA AI Enterpriseを活用するエッジAIサービスの事例として、3つのデモも披露された。
まずは自動運転。AIによって遠隔サポートを支援するもので、ソフトバンクが開発した「交通理解マルチモーダルAI」を使用。ライブレコーダーが捉えた映像や、交通状況を問うプロンプトなどからリアルな状況を理解し、予測困難な状況でもリスクを回避できるというものだ。
SFC内の道路で、横断歩道の手前に停車している車両があり、横断歩道を渡る人がいるかどうかを確認できない状況で、自動運転のバスが走行。停車中の車両に並んで一時停車した後、安全が確認できてから発車する様子を確認できた。ドライバーが運転している場合と同じような判断速度であった。
次に見せてもらったのが、四足歩行のロボットが不審者を追いかけるデモ。あらかじめプログラムされた動作だけでなく、状況を判断して、臨機応変に動けるLLM(大規模言語モデル)ロボットを使用。当然のことながら、通信で遅延が生じると、不審者を追随することはできない。デモでは、約0.1秒ほどの低遅延で、ロボットが小走りに逃げる人を追いかけていた。また、遅延を1秒ほどにして、ロボットが立ち往生してしまう様子も実演された。
最後に見せてもらったのが、RAG(検索拡張生成)のデモ。一般的なLLMが事前に学習した情報のみに基づいて回答するのに対して、RAGは社内の機密情報など、LLMでは呼び出せない情報も回答できる。デモでは、テキストだけでなく音声や画像も認識する「マルチモーダルRAG」を使用。通常のLLMと、RAGを有効にした場合の回答の違いが示された。なおデータは、インターネット上のクラウドではなく、エッジAIに保存されるので、機密性も保持されるようだ。
宮川社長はAITRASの海外展開にも意欲
ソフトバンクは2025年以降、AITRASの実用性と効果の実証を目的として、通信事業者向けにAITRASのリファレンスキットを提供する計画だ。
AITRASの説明会には、当初は登壇の予定がなかったソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏も駆けつけて、AITRASの優位性をアピールした。SFCでの実証実験は「世界に向けた第一歩。AITRASの有効性を証明して、海外にも輸出していきたい」と意欲を示していた。