最新パーツ性能チェック 第453回
性能も上がったが消費電力も増えた「Ryzen 7 9800X3D」最速レビュー、AI推論の処理速度は7800X3Dの約2倍!
2024年11月06日 23時00分更新
検証環境は?
Core i9-14900Kと比較
今回の検証環境は以下の通りだ。今回はシンプルにRyzen 7 9800X3Dと7800X3Dというゲーミング用では最強の8コアCPUを用意。さらにインテルの「Core i9-14900K」を準備した。時期的には「Core Ultra 9 285K」の方が適切なのかもしれないが、Core Ultra 200Sシリーズのゲームパフォーマンスは第14世代のCoreプロセッサーの域にすら到達していないという現実を踏まえた結果、Core i9-14900Kの方が検証相手として相応しいと判断した。
ビデオカードは検証中の物理的トラブルにより、いつもの「Radeon RX 7900 XTX」から1つ下の「Radeon RX 7900 XT」に変更している点にご留意いただきたい。この変更によりゲームパフォーマンスでGPU側がボトルネックに入りやすくなってしまったが、時間的制約上こうせざるを得なかったのだ(Ryzen 7 9700XやRyzen 9 7950X3Dなどが含まれていないのも同じ理由から)。またメモリーモジュールはAMDの指定によるDDR5-6000モジュールを使用しているが、メモリークロックはそれぞれのCPUの定格最大値にセットしている。
さらにResizable BARやSecure Boot、メモリー整合性やHDRといった機能はすべて有効としたが、インテル環境では後編のゲーム検証に備え、APO(Intel Application Performance Optimization)も有効化している。GPUドライバーはAdrenalin 24.10を、Windows 11は確実性を重視し23H2を選択した。
AMDテスト環境 | |
---|---|
CPU | AMD「Ryzen 7 9800X3D」(8コア16スレッド、最大5.2GHz) AMD「Ryzen 7 7800X3D」 (8コア/16スレッド、最大5GHz) |
CPUクーラー | NZXT「Kraken Elite 360」(簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.10) |
メモリー | G.Skill「F5-600J2836G16GX2-TZ5NRW」(16GB×2、DDR5-5200/DDR5-5600) |
ビデオカード | AMD「Radeon RX 7900 XT」リファレンスカード |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」(2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5、起動用)+ Silicon Power「SP002TBP34A80M28」 (2TB M.2 SSD、PCIe 3.0)× |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2) |
インテルテスト環境 | |
---|---|
CPU | インテル「Core i9-14900K」(24コア/32スレッド、最大6GHz、Performance Profile) |
CPUクーラー | NZXT「Kraken Elite 360」(簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASRock「Z790 Nova WiFi」(インテルZ790、BIOS 7.01) |
メモリー | G.Skill「F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW」(16GB×2、DDR5-5600) |
ビデオカード | AMD「Radeon RX 7900 XT」リファレンスカード |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」(2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5、起動用)+ Silicon Power「SP002TBP34A80M28」(2TB M.2 SSD、PCIe 3.0)× |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2) |
性能も消費電力も順当に成長
では「CINEBENCH 2024」のスコアー比較から検証をスタートしよう。10分間のプレヒートを経てスコアーを出すモードを使用している。
Ryzen 7 9800X3Dのマルチスレッド性能は7800X3Dから約25%向上、シングルスレッド性能は約19%と、Zen 4からZen 5へ更新された恩恵がしっかりスコアーとして観測できた。さすがに論理コア数が多いCore i9-14900Kのマルチスレッド性能には負けるが、シングルスレッド性能だけ見ればRyzen 7 9800X3DはCore i9-14900Kのすぐ後ろにつけている。Ryzen 7 9700Xのスコアーは1週間ほど前のレビューにおいてマルチスレッドが1150ポイント(環境が同一ではないので参考値)であるため、コア数が同一でもRyzen 7 9800X3DのTDPが120Wと高い分マルチスレッド性能が伸びやすくなっているようだ。
次は「Handbrake」を利用して動画のエンコード時間を比較し、さらにこの処理中の消費電力も比較してみよう。ソース動画は4K@60fps、再生時間は約3分。これをHandbrakeプリセットの“Super HQ 1080p30 Surround”を利用してエンコードする時間を計測した。エンコード処理においてはCPUのみを使用している。
Ryzen 7 9800X3Dは7800X3Dよりも約23%速い処理性能を示しており、CINEBENCH 2024のマルチスレッドスコアーの伸びとほぼ同程度となっている。処理の速さだけを考えると論理コア数の多いCore i9-14900Kが最速になるのは致し方ないが、この処理中の消費電力はどうだろうか?
そこでこのエンコード処理中に消費された電力をHWBusters「Powenetics v2」を用いて比較する。CPUとあるのは2系統のEPS12Vケーブルを流れる電力であり、システム全体とあるのはEPS12Vに加えATXメインパワーケーブル、さらにビデオカード用のPCIe 8ピンケーブル×2とx16スロットを流れる電力も直接測定したものである。この処理中の電力は下記グラフにおいて高負荷時と称しているが、平均値・99パーセンタイル点(99%ileと表記)・最大値でそれぞれ分けている。さらに、アイドル時とはアイドル状態で3分間放置した際の実測値の平均値である。
Ryzen 7 9800X3Dと7800X3DのTDPはともに120W。しかしCPUの実消費電力は2倍程度に増加している。以前Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600XのTDPを105Wや120Wに引き上げた時のパフォーマンス検証にもあるが、Ryzen 9000シリーズのダイの電力的特性はそのままRyzen 7 9800X3Dにも適用されているようだ。
このCPUの高負荷時平均消費電力とHandbrakeのエンコード速度(fps)を用い、CPUの消費電力100Wあたりのエンコード速度をざっくりと求めたのが次のグラフだ。
動画エンコードのワットパフォーマンスという点ではRyzen 7 7800X3Dが圧倒的に効率がいい。Ryzen 7 9800X3Dは処理時間は短縮されたがそれ以上に消費電力の伸びが大きいため、Ryzen 7 7800X3Dにはおよばない。同様にCore i9-14900Kは処理時間は高速だがCPUだけで平均310W以上食ってしまうため、ワットパフォーマンスは悪くなる。
ここでRyzen 7 9800X3Dと7800X3Dにフォーカスし、エンコード中のクロック・CPU温度・PU Package Powerなどがどのように推移するかチェックしておきたい。「HWiNFO Pro」を利用して追跡した。
この3つのグラフを総合すると、Ryzen 7 9800X3Dは7800X3Dに比べ、よりCPU温度が高い。サーマルリミットである95度に早々に張り付くような挙動をとるが、これはRyzen 7 9700XをTDP 105Wや120Wに設定した時とほぼ同じ挙動である。温度が高い理由はCPUソケットからより多くの電力を受け取り、高クロックで動かしているためだが、これは同時にRyzen 7 7800X3DはTDP 120W設定を生かし切れていないという評価につながる。3D V-CacheがCPUの上に覆い被さっているために限界を攻められていないことを示唆している。
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