エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のまち散歩 第8回

富山県の魅力たっぷり”四つのユニークなまち”を歩いてきたぞ② 【富山県・射水市(いみずし) 日本のベニス・内川、新湊編】

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事) 写真)玉置泰紀、坂下有紀(uchikawa 六角堂)

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 富山県のメディア連携情報発信事業の一環で、県の中央から東部に当たる、富山市八尾、射水市内川、魚津市、黒部市宇奈月を巡ってきたが、第2回は富山県射水市。射水市は、富山湾に面した都市で、県のほぼ中央部に位置する県第3位の都市で、富山市と高岡市砺波市に接していて、中枢中核都市に指定されている。 中央に射水平野、南部に射水丘陵がある。昭和43年(1968年)に、臨海工業地域の流通拠点として掘込港湾である「富山新港」が開港され、周辺には、旅客船バースや海王丸パーク、新湊マリーナ、元気の森公園などが、地域活性化の拠点となっている。

 今回、訪れた内川は、富山新港から東西約3420メートルを結ぶ運河で、海から海へとつながる珍しい川であり、両岸には漁師の番屋や町家造りの民家が並び、多くの漁船が連なって繋留されている風景は独特の情緒を醸し出し、「日本のベニス」と呼ばれ、人気を集めている。

内川には、懐かしい町並みと、気持ちのいい港町に新しくやってきた人たちの新しいスポットが共存している

 射水市の新湊地区を流れる「内川」は、2016年公開の映画「人生の約束」やドラマのロケ地としても注目され、約3.5kmの内川には10以上の個性的な橋がかかり、橋巡りや観光船のクルーズも楽しいが、少し川の内側に入っていくと懐かしい町並みが並び、伝統を感じさせる佇まいとともに、新たに入ってきた人たちが、古い建物をリノベーションしたおしゃれで気持ちの良いお店が増えてきていることもわかる。比較的最近できたスポットをいくつか回ってみたが、内川エリアを気に入ってやってきた人たちがいた。

●ブリッジ・バー
https://www.bridge-bar.jp/

 個性的な橋の中でも、とくに目を引く通称「手の橋(=山王橋)」のすぐ近くに2018年12月、ハワイ出身で日本語ペラペラ、おしゃべり大好きなオーナーのスティーブン・ナイト氏が、古民家をリノベーションしたバーをオープンさせた。ブリッジバーの意味は、ゆったりとした時間とおいしい異文化を味わえる“架け橋”。

 公式サイトに紹介されているスティーブン・ナイト氏の想い。

「長年の憧れだったこと。「店の上に住む」ことの意味について考えたい。

 近年多くの先進国では、少子高齢化・都会への人口流出・情報化などが、地方都市や市町村の空洞化という深刻な問題をもたらしている。

 また、スーパーから銀行、病院、保育所までもが巨大モールに集結され、かつては街の活力源だった個人経営の商店が姿を消そうとしている地域も少なくない。

 近所の「お店屋さん」の奥を覗けば、そこには店主やその家族の生活が間近に感じられる。「ごめんください!」と一声かければ、二階から「は~い!」と明るい返事が返ってきて、バタバタと階段を下りてくる足音が聞こえる。

 そこには地域に根ざした生活を送り、そして生業を営む人々がいる。

 失われつつある光景や生活のリズムを取り戻しながら、地域の人々や遠くから離れた旅人を玄関先で迎え入れ、よい循環を生み出し、街の活性化に貢献する。

 これは「なつかしさ」ではなく、「再発見」である。未来は「人と人とのつながり」から変えられる。しろくま興行(バーの運営会社)は、その思いを軸にこれからも活動する」

スティーブン氏(写真左)と筆者

・通称「手の橋(=山王橋)」

 半円形のバルコニー風のアプローチに、手をかたどった大理石の彫刻4基が設置されている。製作は、郷土出身の彫刻家 竹田光幸氏。

●古民家宿 禅楽
https://www.uchikawa-roman.jp/stay/zenraku/

 一日一組の宿泊施設。150年前から建つ漁師町の豪壮な古民家をリノベーションした。本物の和室を体験出来るように、家の歴史が漂う襖や、漁師の町に多く使われる鮮やかな朱壁、繊細な木彫りの欄間などはそのまま活かしている。開放感のある中庭には、ウッドデッキにプライベートサウナが用意されている。外にあるシャワー付きのバスタブは、クールダウンの水風呂で整うこともできるし、お湯をためて露天風呂として使うことも。最新の設備で新しいのに、どこか昔懐かしい空間が、内川の空気にあっている。

●喰べものや 世楽美(せらび)
https://www.instagram.com/tabemonoya__cest_la_vie/

 築80年以上経つという古民家を2年かけてセルフリノベーションした。外観の古びた印象から中に入ると驚きの空間に。夜はライトアップされて更に違った印象に。1階は重厚な蔵の扉に入ると客席になっていて暖炉が迎えてくれる。2階に上がると、ソファーのあるラウンジが嬉しい。埼玉県でシェフ歴をもつ店主が、富山の新鮮な魚介を活かして驚きのあるビストロ・メニューで楽しませてくれる。

●8ablish TOYAMA(エイタブリッシュ富山)
https://www.instagram.com/8ablish_toyama/

 2024年3月に射水市内の新湊きっときと市場内より内川沿いに移転オープンした。ヴィーガンアイスクリームやグルテンフリーマフィンが人気。

 8ablishは2000年に南青山でヴィーガンカフェCafe Eightをオープンして以来、23年にわたり青山で営業を続けてきたが、2023年11月に 麻布台ヒルズに移転した。コンセプトは「Eat Your Vegetables!(野菜をもっと食べなさい)」。「8ablish」の前身「Café Eight」は国内初のヴィーガンカフェとして知られ、ヴィーガン・オーガニックの草分け的な存在として国内外に多くのファン を持つ。

 2020 年「8ablish」リニューアルに加え、新たにスイーツ専門のブランド「エイタブリッシュ スイーツ」をスタートした。 動物性の素材、精製された白砂糖、化学調味料は使用せず、さらにスイーツの80%は小麦や大麦、ライ麦やオーツ麦などを使用しないグルテンフリーでつくられている。

●uchikawa 六角堂
https://inacafe.net/

 オープンしたのは2013年1月。元畳屋だった築90年以上の古民家カフェで、角地のため、角切りされた六角形のユニークなつくりに。可能な限り保存料・化学調味料無添加の食材にこだわり、オーガニックのコーヒーやネパール茶、各種サンドウィッチ、本格スパイシーカレー、有機砂糖をつかったスイーツなどが楽しめる。店の前の三叉路は、毎年10月1日の曳山祭りに、各町内から合計13基の曳山が列をなして通っていく。この場所は曳山を回転させるのが難しいという事で、ひとつの見せ場になっていて、二階の客席からは良く見通せる。

 ホームページには、建物との出会いが以下の様に綴られている。

 「不思議なカタチの、元畳屋さん。

 探検気分で内川散策を楽しんでいたところ、味わい深い雰囲気を醸しだす空き家を見つけました。

 三叉路の角地にあって、四角い家の角を二回切られた六角形。この地域では「角切り」といいます。家の壁面いっぱいに、懐かしい木枠のガラス窓がはめ込まれていました。

 昔、畳屋さんだったこの家は、当時築70年ほど。住む主人を失ってからすでに5年が過ぎようとしていました。人が住まなくなると、老朽化は一気に進みます。

 内川沿いに連なる家々は、70〜80年前に建てられたものがほとんど。この家も、本当は取り壊される予定でした。

 あちこちの古い家屋が取り壊され、独特の風景は、少しずつ確実に変わってきています。

 この風景がなくなってしまうのは、もったいない!なんとかその流れに待ったをかけたい一心で、譲っていただくことができました」

「日本のベニス」内川は、海から海へとつながる珍しい川で、両岸には民家が並び、多くの漁船が連なって繋留されている風景を彩る個性的な橋とクルーズが楽しい

 日本海に面した内川周辺は、19世紀に北前船の中継地として栄えてきた港町だった。内川の北側で富山湾に面する放生津町は、かつては"放生津”という港町として、湾内を行き来する船が多く出入りした。もとは漁港だったが、鎌倉時代のころに港町となり、日本海交易で栄えた。放生津には鎌倉時代になると、越中の武士を管理する守護所が設けられた。室町時代以降は、越中の守護で京都に住む畠山氏に代わって、婦負(ねい)郡と射水郡を管理する守護代の神保氏が居城を構え、港町の物流も管理する中で大きな経済力をつけていった。

 室町時代の明応2年(1493)、室町幕府を二つに分ける「明応の政変」が起き、当時10代将軍だった足利義材(よしき)は、大名・細川政元らとの戦いに敗れ、越中放生津へと流れてきた。義材がともに戦い政変の中で自害した畠山政長の重臣、神保長誠が支配地だったためである。放生津へは、京都の幕府から義材に従う役人らもやってきて、将軍家の正式な旗である御幡を立てさせ、5年間を過ごした。

 江戸時代に入ると、北前船の寄港地として栄え、物流や経済の中心地となった。内川が流れる放生津地区にお寺や神社が多いのは、そういった背景があるからだ。漁師町に蔵付きの倉庫がある程、豊かな土地なのだ。

 橋の中でも人気の「東橋」と、内川散策の拠点になる「川の駅新湊」、新湊内川観光船「ナイトクルーズ」を紹介する。

●東橋
新湊観光船・新港内川12橋めぐり

https://shinminatokankousen.jp/bridge.html

 全国でも珍しい切妻屋根付きの歩行者専用の橋。ベンガラに塗られたこの橋は周囲の家並みにも調和して、平成6年度手作り郷土賞を受賞した。スペインの建築家セザール・ポルテラ氏に基本デザインを依頼し、橋の両端には、ガラス張りでベンチを備えた休憩室があり、屋根には太陽と月をかたどった風見鶏がつけられている。夜になると橋の両側の休憩所に明かりが灯り、大きな提灯となって浮かび上がる。テーマは、「渡るだけではなく、立ち止まり、時を過ごす憩いの橋」。映画「人生の約束」(2016年)のロケ地にもなっていて、竹野内豊が演じるIT企業社長と部下の松坂桃李が会話するシーンに使われるなど、印象的な形で何度か登場する。

●川の駅新湊
https://kawanoeki.jp/

 川の駅とは、道の駅と同様、川のほとりに設けられた休憩施設のことで、トイレや休憩所、土産店などの施設がある。川の駅新湊には、射水市の特産品を販売する「うまいもんショップ」をはじめ、毎年10月1日に新湊市街を引き回す豪華絢爛な曳山を常設展示する「曳山展示室」、内川の風情を楽しむ「カフェレストラン」があり、内川散策の拠点となっている。新湊内川観光船の乗船場も同駅前にある。

●新湊内川観光船「ナイトクルーズ」(SeasonⅢ 2024.10月~)
https://toyama.visit-town.com/visittour/utikawa-nightcruise-season3
https://www.youtube.com/watch?v=qoEf7zBNSD8

 「内川」エリアから、「帆船海王丸」と「新湊大橋」のライトアップ、工場群の夜景が船上から楽しめる。海王丸パークでは帆船海王丸のライトアップ・イルミネーションを日没から22時まで毎日実施。帆船海王丸のイルミネーションは約400個のLEDで船体を彩り、ライトアップは21基のLED投光器により数分おきに色が変わり、大海原を航海する海王丸を表現している。帆船海王丸と新湊大橋ライトアップのコラボレーションは見もの。

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