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音楽やマンガ、GISなどゲームに留まらない新発想も誕生。行政からエンタメまでカバーした東京ハッカソン

「PLATEAU Hack Challenge 2024 in Tokyo」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

 2024年9月7日・8日、国土交通省はハッカソンイベント「PLATEAU Hack Challenge 2024 in Tokyo」を東京・大崎のTUNNEL TOKYOにて開催した。ハッカソンでは、「あなたが創るまだ見ぬ世界」をテーマに約40名弱の13チームが作品づくりに挑んだ。

 PLATEAU Hack Challenge 2024 in Tokyoは、2025年2月の「PLATEAU AWARD 2024」に向け、全国の都市で開催されるハッカソンイベントの東京大会だ。テーマは「あなたが創るまだ見ぬ世界」。PLATEAUの3D都市モデルを大胆に活用して、新しい価値を生み出すことを目的とし、地域をテーマにした作品、ゲーム、AR/VR、シミュレーションなど多彩な用途でPLATEAUをハックしていく。

 ハッカソンの前に、国土交通省の十川優香氏がPLATEAUの概要を説明した。

国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 企画専門官 十川 優香氏

 Project PLATEAUは、国土交通省が産官学のさまざまなプレイヤーと連携して推進する、都市デジタルツインの社会実装プロジェクトだ。3D都市モデルと呼ばれる、実世界の都市を仮想的な世界に再現した3次元の地理空間データの整備・活用・オープンデータ化を進めている。

 PLATEAUの最新情報や開発に役立つチュートリアルや技術資料などはPLATEAU公式サイトに掲載されているので参考にしていただきたい。また、PLATEAUに関してこれまでに開発されたツールキットやソフトウェアのソースコードなどがGitHubに公開されており、無償で利用可能だ。

 続いて、株式会社シナスタジアの鈴木智貴氏がPLATEAU SDK for Unity/Unrealの機能を紹介した。

株式会社シナスタジア 鈴木 智貴氏

 PLATEAU SDK for Unity/Unrealは、PLATEAUをゲームエンジンで扱うために開発されたオープンソースのツールキットだ。UnityとUnreal Engine 5に対応し、都市シミュレーションや実在の都市を舞台にしたゲームづくりに使える。3D都市モデルの形状データに加え、PLATEAUの属性データも利用可能だ。

 2023年度には、テクスチャを統合して描画負荷を軽減する機能、テクスチャがない場所にデフォルトのマテリアルを貼る機能などが追加された。また2024年8月に公開されたバージョン3.0.1には、属性情報に応じたマテリアルの変更、属性情報をシーンに保ったままモデルをFBXファイルに書き出して軽量化する機能(Unity)、平面の3Dモデルの高さを地形に合わせて調整する機能などが追加されている。2024年末にも新機能が公開される予定なので、PLATEAU公式サイトなどで最新情報をチェックしておこう。

 また、PLATEAU SDK for Unityの機能を拡張するアドオンとして、PLATEAU SDK Toolkits for Unityも公開されている。PLATEAU SDK Toolkits for Unityには、3D都市モデルのグラフィックスを向上させるRendering Toolkit、人や木、車などのアセットを配置するSandbox Toolkit、3D都市モデルを活用したARアプリ開発ツールであるAR Extensions、Cesium for UnityやBIMモデルとの連携を可能とするMaps Toolkitが含まれる。9月6日に公開されたSandbox Toolkitの新バージョンでは建築物や看板など追加できるアセットが増えているので、ぜひ活用していただきたい。

チームビルディング、アイデアソンを通じて13チームがハッカソンに挑戦

 1日目はチームビルディングとアイデアソンのあと、各チームの開発方針を発表し、昼からハッカソンが始まった。

 テクニカルサポーターとして、株式会社シナスタジアの鈴木智貴氏、株式会社MIERUNEの西尾悟氏、株式会社ホロラボの加茂春菜氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社の石井勇一氏が参加。司会進行役は一般社団法人MAの伴野智樹氏が務めた。

サポーターを務めた鈴木 智貴氏(写真左上)、西尾 悟氏(写真右上)、加茂 春菜氏(写真左下)、石井 勇一氏(写真右下) <画像>00_

2日間を通して司会進行を務めた伴野 智樹氏

 2日目は午前10時からハッカソンを再開し、16時から各チームの成果発表が行われた後、審査と授賞式が行われた。

 審査員は、立教大学大学院 人工知能科学研究科 特任教授の三宅陽一郎氏、OGC CityGML仕様策定WG 副議長の石丸伸裕氏、株式会社シナスタジアの崎山和正氏、国土交通省の十川優香氏の4名が務めた。

審査員を務めた三宅 陽一郎氏(写真左上)、石丸 伸裕氏(写真右上)、崎山 和正氏(写真左下)、十川 優香氏(写真右下)

 審査基準として(1)3D都市モデルの活用、(2)アイデアと独創性、(3)完成度の3点から各作品を評価し、グランプリとオーディエンス賞、奨励賞が選ばれた。以降、受賞作を中心に各チームの発表概要を紹介する。

グランプリ作品「AIまちづくりファシリテーター」(チーム名:シャキシャキ)

 グランプリは、まちづくりワークショップでの理解共有をテーマに、住民がもっと議論に参加しやすくなるエージェントAI「AIまちづくりファシリテーター」を開発したチーム「シャキシャキ」が受賞。チームには商品券3万円が贈呈された。

グランプリを受賞したチーム「シャキシャキ」

 まちづくりワークショップといった場で市民が都市計画を理解したり自身の意見を共有する手段としては可視化が有効だが、専門知識のない一般市民にとって地理情報を扱うことには技術的なハードルがある。また、ワークショップで生まれた意見をふせんに記し地図上に貼り付ける方法もよく取られるが、記録がデータ化されず、議事録を残してもわかりづらく、読み返されることはほとんどない、と課題を指摘。開発した「AIまちづくりファシリテーター」は、AI AgentとWebGISを組み合わせた、音声と3D地図によるWebアプリだ。

 デモでは、空き地の活用を例に、システムの使い方を紹介。新たにアジア料理店を作る提案では、音声で「周辺のアジア料理の店はどこ?」と話しかけると、周辺の店が着色表示される。そのほか、最寄り駅までの最短距離のルート表示、高層ビル/低層の建物が建った際の見え方の違いも音声でシミュレーションできる。

駅までのルート(白いライン)を表示

 技術的には、音声入力をOpenAIのWhisperで文字に変換してChatGPTで適切な地理的処理を思考させ、「最短経路であればOpenStreetMap」、「店舗の情報であればホットペッパーグルメを参照」といった処理を行い、その結果をdeck.glなどを用いて可視化させている。

 このツールをワークショップで使えば、専門知識のない人でも自由に分析して議論に参加でき、いつでも誰でも議論の内容を見返せる。

 審査員の石丸氏は「都市計画は3D都市モデルを応用したアプリケーションの本丸。難しい課題に正面から取り組まれた素晴らしい作品。見せるだけではなく、建物の大きさの違いのシミュレーションといったところまで、しっかりと作り込まれている」と評価。また、崎山氏は「いろいろな要素技術を組み合わせて、ひとつのシステムとして構築されている」と、その技術力の高さを称えた。

オーディエンス賞「whack a building」(チーム名:ちーむくらばら)

オーディエンス賞を受賞した、ちーむくらばらの桑原 遼介氏

 ちーむくらばらの「whack a building あの街を一緒に叩こう」は、ビル版のモグラたたきゲームだ。地面から出たり潜ったりするビルを叩き、得点を稼ぐ。

ビル版のモグラたたきゲーム「whack a building あの街を一緒に叩こう

 3D都市モデルの建物の高さやフロア数などの属性情報を参照し、建物規模に応じて上下するスピードや頻度の変化させているほか、建築面積を獲得ポイントの設定に用いている。

3D都市モデルにおける建物の高さやフロア数、建築面積といった情報を利用

 属性情報を利用しているので、舞台となる都市によって難易度が変わり、日本全国さまざまな都市で楽しめる。建物用途によってボーナス得点が得られるなどの要素を加えるとさらに面白くなりそうだ。

 石丸氏は、「完成度が高く、そのままアーケードゲームになりそう。属性情報をそのまま見せるのではなく、動きに生かした非常に楽しい作品」と絶賛した。

奨励賞「都市の緑化を啓発!~植物咲かせ爺さんゲーム~」(チーム名:花咲か爺さん)

奨励賞を受賞したチーム「花咲か爺さん」

 チーム「花咲か爺さん」が開発した「都市の緑化を啓発!~植物咲かせ爺さんゲーム~」は、楽しく都市緑化を学ぼうというゲームだ。

 3D都市モデル上でキャラクターを操作し、建物の屋上を飛び回って緑化していき、チェックポイントを通りゴールするとスコアが表示され、緑化具合を確認できる。

3D都市モデルの建物上をキャラクターが走り、通ったところに樹木が生えてくる

 発表時点では未実装だったが、スコアの算出要素として木が生えることで減少するCO2量や低減温度、緑化面積、植物の多様性などを加えることで、遊びながら都市緑化の知識を学べるようにしていきたいとのこと。

 また、都市緑化に関する規定や屋根形状、日照時間などの条件も加味して、属性情報に応じて緑化に向く場所に木をはやすことでボーナス得点を付与する、といったゲームに仕上げていきたいそうだ。

 崎山氏は、「社会課題をテーマにした訴求性が高い作品。社会課題の解決の部分とゲーム性をもう少し関連付けることで、より実用性を高めていただければ」とコメントした。

斬新で自由なアイデアにあふれた10作品

 惜しくも入賞を逃した作品も独創的で面白いものばかりだ。各チームの作品を紹介していこう。

蒼穹の繭(チーム名:PLATEAU_IPUT)

チーム「PLATEAU_IPUT」

 新宿にあるモード学園コクーンタワーをロケットに見立てたシューティングゲームだ。

 コクーンタワーが宇宙に飛び立ち、岩(隕石)を避けながら進んでいく。進んで行く中でエネルギーポイントや東京都庁が現れ、エネルギーを獲得するとロケットの体力が回復し(エネルギーがゼロになるとゲームオーバー)、東京都庁を獲得するとコクーンタワーと合体して、速度が上昇する。

ゲームを開始するとコクーンタワーが宇宙へ飛び立つ

 苦労・工夫した点として、コクーンタワーと東京都庁にはPLATEAUの3D都市モデルのデータを使用したが、個別で扱うとテクスチャ情報が落ちてしまったので、自分たちで張り直したという。

しかのこダッシュ(チーム名:ムスカーズ)

チーム「ムスカーズ」

「しかのこダッシュ」は、鹿のキャラクターと全国を走り回る都市探索型アクションレースゲーム。鹿のキャラクターを操作し、都市を上空から俯瞰しながらチェックポイントの鹿せんべいを取って回り、鹿せんべいを早く食べ終えるタイムを競う。

場面に応じてVRモードとARモードに切り替わる

 VRモードとARモードがあり、シームレスに切り替えながらプレーするのが特徴だ。ARモードでは都市空間に没入しながらキャラクターを操作し、鹿せんべいを取っていく。次のチェックポイント(都市)への移動では気球に乗り、空に上がるとVRモードに切り替わり、都市を俯瞰しながら飛び回れる。PLATEAUのデータをリアルタイムにダウンロードすることでアプリのデータ量を抑えているそうだ。

 実際の地理空間にもとづいた臨場感があり、遊びながら都市の地理や文化を学べる。今後は、全国でさまざまなステージを展開し、鹿せんべいだけでなく各地の名産品を登場させる計画だ。

マンガプラトー!(チーム名:Boom!)

チームBoom!

 チームBoom!は、日本のポップカルチャーの聖地である渋谷を舞台に、マンガに出てくる擬音語や吹き出しが街の中に現れるゲームを開発した。

 プレイヤーは街に現れる擬音の吹き出しに飛び乗り、高所に移動しながらコインを集めていく。にぎやかな場所ほど擬音が多く、車通りのある場所では「ゴゴゴゴ」、ファッションビルでは「ザワザワ」といった擬音語の文字や音符が現れる。リアルとコミックを融合させることによって都市の魅力を世界に発信することができる。

場所に応じて、その特徴に合った擬音語が現れてくる「マンガプラトー!

 今後は、街で拾った音や属性データを用いてマンガ文字を自動生成する機能を追加していきたいとのこと。音符やマークなどの記号を使った表現は、外国人にもわかりやすく、街案内や名所の紹介にも活用できそうだ。

~信号クイズアドベンチャー~ はしれ松元!(チーム名:はしれ松元!)

チーム「はしれ松元!」

「~信号クイズアドベンチャー~ はしれ松元!」は、街を観光しながらクイズで知識を深められるゲームだ。

 ゲームをスタートすると自動で進む街の観光が始まり、信号のある場所でYes/Noクイズが現れる。不正解だとゲームオーバー、クイズに正解すると次のステージに進める。

クイズに答えながら錦糸町からスカイツリーを目指して街を進む

 実装にはUnityを利用したが、チームメンバー全員がUnity初心者で開発に苦労したそうだ。今後は、人並みの再現やLOD4のデータを用いて建物内へも入れるように拡張していきたいという。

サトガエリチャット(チーム名:kenmaro)

チーム「kenmaro」

「サトガエリチャット」は、友達と疑似的に帰省体験ができるアプリだ。開発にはPLATEAUとUnity、マルチプレイヤープラットフォームのPhotonを使用した。

 プレゼンではQuest3を使って熊本県玉名市にバーチャル帰省する様子を動画で紹介。ボイスチャットも実装し、離れて暮らしている同級生らと思い出を語り合いながらバーチャル帰省を体験できるようにした。

デモ動画の画面。複数のプレイヤーで会話しながらVR空間で思い出の街を歩く

 作成した感想として、現状のPLATEAUのテクスチャは解像度が粗く補正が必要なことや、VRでの移動は人によって酔ってしまうといった課題はあると述べたが、マルチプレイヤーで友達と一緒に帰省や旅行体験ができるのは楽しそうだ。

PGCCイニシアティブ(チーム名:グランド6)

チーム「グランド6」

 都市が抱える課題を解決するために、街を階層化したコンパクトな未来都市を作ろうというアイデアを披露。「PGCC」とは、P:PLATEAUデータを使って、G:強引に、C:コンパクト、C:シティを描き議論の場にする、という造語だそう。

 例えば、雪国の都市では冬の除雪費が行政を圧迫するという課題があることから、「屋根のあるまちづくり」ができないかと考えていたという。そこで、PLATEAUのデータを活用して、4つの地域を4階層に重ねてコンパクトシティ化するモデルを作成して発表した。

4地域を階層化し、中央の巨大エレベーターで階層を移動する

 思いきったまさに“強引”なアイデアだが、PLATEAUを使ってこうした自由な発想をどんどん提案することも、まちづくりへの市民参加を盛り上げるきっかけになりそうだ。

LUNATEAU(ルナトー)~月面タワーバトル~ (チーム名:宇宙兄弟)

チーム「宇宙兄弟」

 LUNATEAUは、月面のクレーターに3D都市モデルの建物を積み重ねていくゲームだ。パズルゲーム「どうぶつタワーバトル」から着想したゲームで、建物をクレーターに落として積み上げていき、クレーターから出るまで建物が積み重なればクリアとなる。

LUNATEAUのデモ画面。実際に月にあるコペルニクスというクレーターをNASAのデータから再現したそうだ

 重力を地球の6分の1に設定し、宇宙での落下をリアルに再現。建物形状から物理計算し、建物がきちんと着地したり、倒れたりもする。うまく積み上げられるように落下位置や建物の向きを決めるのがポイントだそう。宇宙好きにはたまらない作品だ。

Bomber City ~はちゃめちゃ戦線~(チーム名:42meta)

チーム「42meta」

 強い建物がわかるゲームを作りたい。でも、「真面目な防災系ゲームはすでにたくさんある」。そんな気持ちから爆誕したのが対怪獣防災ゲーム「Bomber City」だ。このゲームは、「街に怪獣が攻めてきたとき、どの建物に隠れるべきか?」というところから、どの建物が堅ろうかを学べるとするものだ。

街中を飛び回りながら爆弾で怪獣を攻撃するゲーム「Bomber City

 怪獣から逃げながら爆弾で攻撃し、すべての怪獣を倒すとクリアとなる。ただし、爆弾を投げるとプレイヤー自身も被害を受ける。そこで、爆風を受けても倒れない「堅ろう建物」に隠れるのがポイントだ。

 建物の堅ろうさにはPLATEAUの属性情報を活用。遊びながら自分の街のどの建物が堅ろうなのかを知ることで、震災対策につながるとした。今後に向けては、いろいろな都市を舞台にするとともに、堅ろうさだけでなく、地形の起伏や建物の高さ情報なども取り入れたいとした。

Platt-ぷらっと(チーム名:blackcat)

チーム「blackcat」

「Plattーぷらっと」は、訪問した場所を保存できる3次元版チェックインアプリだ。チェックインアプリは、訪れたスポットと時間を記録して、保存・閲覧・共有できるサービスのこと。Plattではこれらの機能に加え、訪問した順に3Dアニメーションで表示する機能を搭載。アニメーションにすることで、街並みや場所の雰囲気を鮮明に思い起こせる。

Plattのデモ画面。マップ上で訪れた建物をクリックして(黄色のハイライト)、チェックイン。画面左の一覧に訪れた場所と時間の情報が追加される

 アニメーションでは、チェックインした場所の緯度経度を取得し、カメラの視点を移動させている。今後の計画としては、スポット間の経路を計算して歩いているようなアニメーションに改善するほか、訪れた建物の名称などを表示するほか、自分で写真やテキスト情報を加えられるように機能を追加していきたいとした。

Sonotecture(チーム名:sonotect)

チーム「sonotect」

 Sonotectureは、CityGMLを活用して都市の音とビジュアライゼーションの融合に挑んだ作品だ。音の生成には、CityGMLのデータをGeoJSONで読み込み、Tone.jsで音に変換。現在地の8㎞以内の建物をリアルタイムでフィルタリングし、建物の高さにもとづいて音が鳴るようにしたという。

「音としての建物」との発想から「街を聴ける」ようなものが作れたらと思いついたという

 このほかに建物の高さ以外の情報を活用したり、ユーザーの位置情報とデバイスの向きに応じて音が変わったりするようなアイデアもあったが、残念ながら今回は間に合わなかったとのこと。それでも、建物が密集した場所ではテンポを速くしたり、森ではのどかにしたりなど、都市のイメージや属性情報から音やリズムを変えていくと、より面白い音楽体験ができそうだ。

 以上、全13チームのプレゼンと審査結果発表の後に、各審査員からの講評があった。コメントの一部を紹介しよう。

 三宅氏は印象に残った作品として「Sonotecture」を挙げ、「現実の都市とリンクして、その場所でその都市の音を聴くという体験は、新しい感覚の楽しみ方」とコメント。また、「LUNATEAU」を「月の地形と都市の建物を組み合わせることで、世界の広がりを感じられる。最新の計測技術で蓄積された知識をユーザーが体験できる形に昇華した素晴らしい作品」と評価した。

 石丸氏は、「AIまちづくりファシリテーター」について「難しい部分に正面から取り組み、細かいところまで作り込んだ作品」と評価、「whack a building」については「属性情報の活用がPLATEAUを扱ううえでポイントになるが、属性情報を動きに生かした点がとてもよかった」と述べた。

 崎山氏は、全体として「短い時間の中で良い物を作り上げようと、みなさん工夫して取り組んでいた。ゲーム性が高いものやぶっ飛んだアイデアがあり、とても楽しかった」とコメント。

 十川氏は、まず全体を通じて「どのチームの作品も3D都市モデルならではの特性をふんだんに活用しており、エンタメから行政まで多方面でPLATEAUが使えることを示していただいた」と感想を語った。

 このほか、テクニカルサポーターの加茂氏は、今回のハッカソンの感想として「初めてのツールに挑戦したチームや、ビジュアルだけでなく音を扱うなど新しい取り組みがあり、学びの多い会だった」とコメント。西尾氏は「今までのハッカソンに比べてdeck.glやCesium、衛星データといったWebGIS、GISデータの利用が多く、PLATEAU GIS Converterも活用されていた。PLATEAUハッカソンは、回を重ねるごとにレベルが上がっている。とても面白いプロダクトが多かった」と述べている。

 今回は学生の参加者が多く、2チームは未経験からのUnityでの制作だったが、テクニカルサポーターによる支援と、PLATEAU SDKなどのツールをうまく活用し、完成度の高い作品に仕上げていた。

 地理情報や3Dアプリ開発になじみがないからこそ、自由で斬新なアイデアが生まれることもある。PLATEAUについては、全国の都市でハッカソンやアイデアソンを開催している。PLATEAUに関する解説やテクニカルサポートも実施しているので、気軽に参加してみてはいかがだろうか。

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