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ベータマックスからPS5まで! ソニー製品栄枯盛衰物語 第40回

キヤノンとニコンの二大巨頭に挑んだソニー「αシリーズ」はいまや時代の最先端に成長した

2024年10月22日 12時00分更新

文● 君国泰将 編集● ASCII

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ソニーの一眼カメラ事業は苦しい出だしだった

 今やソニーの代名詞の1つにもなっている、デジタル一眼カメラ「αシリーズ」。ソニーのレンズ交換式カメラは、もともとコニカミノルタのカメラ事業を受け継いだものであり、2006年の初号機「α100」の発売にまでまでさかのぼります。

ソニー

α100(2006年)

 それまでは、コンパクトデジタルカメラ(Cyber-shot)と、デジタルビデオカメラ(Handycam)を販売していましたが、レンズ交換式カメラはソニーにとっては未開のゾーン。イチから作り上げるには、レンズからカメラ文化にいたるまでのノウハウもなかったところに、一眼レフという重い責任を引き受けたことで、参入を果たせました。

 ミノルタ時代から続くαマウント(Aマウント)を継承したところからスタートした初代モデルα100は、APS-Cサイズの有効1020万画素CCDセンサーと、ボディーに手ブレ補正機構を備えていました。その後、2007年にハイアマチュア向けのα700、2008年にエントリー機のα200、背面モニターでライブビュー表示できるα350を投入していきます。

 同じく2008年には、35mmフルサイズのCMOSセンサーを搭載したハイエンドモデルα900までを発売、一挙にラインナップを拡充しました。

ソニー

α900(2008年)

最初はソニー製カメラを斜に構えて見る人が多かった

 こうしてみると、ものすごく勢いのある怒涛の製品投入に見えるのですが、当時の肌感としては、レンズ交換式カメラ業界の空気感は、ソニーに対してとても冷ややかなものでした。

 まさに筆者のデジタル一眼カメラデビューはα100からで、自分のカメラの知識と力量からしても、始めるにはちょうど良い機種でした。

 サイバーショットやハンディカムのズームレンズに慣れすぎて、デジタルの綺麗さだけに囚われていたところに、レンズを交換することで、たとえば単焦点レンズを使うことで、写真の写りがここまで変わるのか! 絞りを変えることで映る被写体の表現がここまで変わるのか! とカメラの楽しさにズッポリとハマってしまいました。

 うれしがってソニーのストラップを付けて撮影に出かけることも増えて行ったのですが、ここである種の洗礼を浴びるようになりました。撮影現場に行くと、他メーカーのデジタル一眼レフカメラを持っている方々から向けられる奇異の目。

 「そのカメラ、ソニー製なの? 家電屋のカメラでまともに撮れるの?」と言われて、苦笑いするしかなく、そもそもそんなに写真撮影に自信がなかったこともあって、肩身の狭い思いをしていたこともありました。

 それもそのはず、この頃はデジタル一眼レフカメラといえば、キヤノンとニコンの2大巨頭が市場の8割を占めており、ソニーはそれこそ家電やゲームのイメージが強く、結びつかないのも当然といえば当然だったのです。

ソニーの技術が入ってくると俄然楽しいカメラに

 そして2010年にミラーボックス機構をなくした、トランスルーセントミラー・テクノロジーを採用したα55が登場、ソニーの独自技術が入り込んでくると、俄然と撮影も楽しくなってきました。

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α55(2010年)

 ボディーは身軽に持ち運べて、高速なオートフォーカスで連写できるのが気持ちよくて、AVCHD(1920×1080ドット)のフルハイビジョン動画を残せて、これからは写真も動画もレンズ交換式の時代だ! と確信しました。

 ただ正直に言えば、ソニーも他社もどうしてこうも同じデザインテイストなのだろう? と。もちろん撮影道具を突き詰めた究極の形ということに、自分の理解が追いついていないだけなのですが、サイバーショットでいろいろなチャレンジングなデザインをみてきただけに、毎度新しいボディーが出てきても見た目にトキメクことはあまりありませんでした。

ミラーレスとEマウントが登場したときの衝撃!

 ターニングポイントになったのは、2010年に投入されたソニー独自のEマウントモデル、いわゆるミラーレスカメラの誕生です。NEX-5/3というネーミングで、αという文字ないうえに、ペンタプリズムもなければミラーもない超小型ボディー。さらには今までのAマウントではなくて、より小さいEマウントレンズを採用する振り切りっぷり。

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NEX-5(2010年)

 レンズ交換式でありながらスタイリッシュなデザインは、再びカメラを持ち歩きたいという情熱を掻き立てるには十分でした。とはいえ、使い慣れてくると今度はオートフォーカスの遅さが気になってしまったり、使えるレンズの少なさも不満で、結局はAマウントボディーとの併用がしばらく続きました。

 ここからのソニー・Eマウントボディーの快進撃は皆さんもご存知のとおり。2013年にフルサイズ対応のミラーレスカメラ・α7/α7Rが登場してからは、もう情報が追いつかないくらい飛躍的な進化とともに、今やミラーレスカメラの先進メーカーとして名を馳せるまでになりました。

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α7(2013年)

 レンズ交換式カメラのマーケット、特にスポーツ撮影の分野においては、プロカメラマンから相手にされなかったこともすでに過去の話。

ゲームチェンジャー「α9」の登場で
もうソニー製カメラを笑う人はいなくなった

 2017年に登場したα9は、電子シャッターを備えてブラックアウトがなく、連写中もずっと被写体を目で追い続けられること、高速撮影が可能になること、物理的なシャッター振動がないからこそのサイレント撮影に加えて、些細なブレも排除。

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α9(2017年)

 シビアな撮影シーンにおいて成果を残さなければいけないという、プロの厳しい目にかなうゲームチェンジャーと呼ばれるほどの評価を受けました。

 そして2024年1月、「グローバルシャッター方式」の電子シャッターを搭載したα9IIIが登場しました。

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α9III(2024年)

 最高約120コマ/秒、AF/AE追従、ブラックアウトフリー連続撮影や、歪みのない「ゼロディストーション」、最速シャッタースピード1/80000秒(連続撮影時は1/16000秒)、すべてのシャッタースピードにおいてフラッシュ同調を可能にするという、これまでのローリングシャッター方式のカメラでは成しえなかった驚くべき性能です。

 スポーツや報道などの撮影で、今までのカメラでは到底無理だと思われた決定的な瞬間をとらえられるカメラを生み出したのです。8年前のレンズ交換式カメラ事業を受け継いで始まったα100から、誰が今のソニーの快進撃を予想できたでしょうか?

 きっとこれから先も、ソニーが得意とするカメラの進化を見せつけてくれることでしょう!

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筆者紹介───君国泰将

ソニー(とガンダム)をこよなく愛し、ソニーに生きる男・君国泰将氏

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