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セゾンテクノロジー、サイボウズ、ウイングアークが「HULFT Technology Days」でかく語りき

データ・AI時代に「ジャパンITの勝ち筋は?」 国産ソフトメーカー3社が語る過去・現在・未来

2024年11月01日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

提供: セゾンテクノロジー

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パネルディスカッションは『データを制するものはAIを制す 国産ソフトメーカーの3社が考えるジャパンITの勝ち筋』というタイトルで開催された

 「DXのバラバラを、スルスルに。AI活用はデータ連携から。」をテーマに、セゾンテクノロジーのイベント「HULFT Technology Days 2024」が開催された。

 10月10日の会場開催で繰り広げられたのは、日本のソフトウェア市場をけん引する、セゾンテクノロジー、サイボウズ、ウイングアーク1stの「国産ソフトメーカー3社」が集まったパネルディスカッションだ。

 ASCII編集部の大谷をモデレーターとして語られたのは、イベントテーマである「AI時代のデータ活用」、そして「国産ソフトメーカーの課題と強み」。各社の技術リーダーの視点から、ジャパンITの勝ち筋を探る。

 なお、パネルディスカッション含む、HULFT Technology Days 2024のアーカイブ視聴(配信期間:10/21〜11/15)は、 HULFT Technology Days 2024公式サイト(https://www.hulft.com/hulftdays/2024)から申し込める。

国産メーカーは、外資系クラウドにやられっぱなしだったのか?各社の生き残り策

 最初のトークテーマは「国産クラウド10年の答え合わせ」だ。

 出発点は、ASCII大谷が2023年末に書いた記事、「国産クラウド13年目の風景は荒野じゃなかった」である。約10年前、外資系クラウドの攻勢は激しく、「このままでは国産クラウドは生き残れない」という予想が確かにあった。しかし、サイボウズデイズ(サイボウズ年次イベント)の盛況ぶりから、「全然そんなことなかった」と思い直すという趣旨の記事である。

 とはいえ、差が生まれているのは事実であり、国産メーカーによって戦略の違いが生き残りの差を分けているのではないか。実際の各社の取り組みを振り返る。

 「すごく感慨深い」と言うのは、サイボウズのNew Business Division 副本部長である伊佐政隆氏だ。「Gmailが登場して、ストレージが1ギガもついて、無料で使える。これはすごい!」と喜んでGoogleのサービスを使っていたものの、2007年にGoogleの法人向け組織が日本で設立。「これはやばいぞ」と思ったと、サイボウズの転機を振り返る。

 SNSを見ても「これサイボウズ死んだな」と言われ、サイボウズ社内でも悲観的な意見が多かったという。しかし、サイボウズも黙っていなかった。スローガンとして「大航海時代」を掲げ、とにかく新規事業を立ち上げた。最終的に生き残ったのが、「kintone」を始めとするクラウド型のSaaSビジネスである。2023年にはクラウド売上割合が87.6%にまで達し、今やクラウドの会社だ。

サイボウズ New Business Division 副本部長 伊佐政隆氏

 セゾンテクノロジーの転機は、2015年にラスベガスで開催された「AWS re:Invent」だったと、同社の執行役員 CTO 有馬三郎氏。そこで、“壮大なアイデアで、ビジネスで長期的な成果を生み出す”という、AWSの信念を体現したパートナーに贈られる「Think Big」賞を受賞した。クラウド時代にオンプレミスのデータを連携するというファイル転送ツール「HULFT」の在り方が評価され、「ここに勝ち筋がある」と手ごたえを得た。

 その後、海外拠点を設けて世界に打って出るも、苦戦が続く。その中で出した答えが、「われわれもクラウドで、マネージドサービスで勝負しよう」というもので、日本発のiPaaS「HULFT Square」を開発するに至っている。

セゾンテクノロジー 執行役員 CTO 有馬三郎氏

 打って変わり、外資系クラウドを意識してこなかったのがウイングアーク1stだ。同社のCTO室 室長である安田昂平氏は、「変わらず、つねにお客様に目線を向け続けてきた」と語る。

 10年前は、同社CTOの島澤甲氏が「100億件のデータを1秒で実行する」と意気込み、データベースエンジン「Dr.Sum」をゼロベースでインメモリ型に変えようと打ち込んでいた時期だという。国産メーカーとしての同社の考え方は、「外資系クラウドもWatchしているが、『目の前のお客様を驚かせたい』というマインドが強い」と一貫している。

ウイングアーク1st CTO室 室長 安田昂平氏

どのエンジニアも生成AIで効率化、開発の自動化は難しいが“初速”を変える

 2つ目のトークテーマは「エンジニアはどのようにAIを活用するのか」だ。

 「私の知っている企業で、人手不足で困っていないところはない」(ASCII大谷)という状況な中、人材の採用に加えてリスキリングにフォーカスする企業も増えている。AI Insideの2022年の調査では、AIスキル・経験の未習得者の約2割が、AIやデジタルツールを活用できる「AI人材」になりたいと答えている。今まさに、クラウドからAIへと時代が移り変わる中で、組織やエンジニアはどうAIを活用しているのか。

角川アスキー総合研究所 デジタルメディア部 専門メディア課 TECH.ASCII.jp編集長 大谷イビサ

 ウイングアーク1stの安田氏は、「人手不足は我々も同じ課題。採用活動の激化は避けられない」と前置きをしつつ、今進めているのは“パイを広げる活動”だという。それは学生の青田買いで、しかも小学生に対するアプローチだ。秋葉原のエンジニア向け施設でプログラミング教室を開催し、参加した小学生には、選考における面接を確約しているという。

 加えて、同社エンジニアは、コーディングはもちろん、要件定義や基本設計にも生成AIを活用しているといい、「やはり生成AIを活用する・しないで、開発の“初速が変わってくる”。生産性に直結しているのではないか」と安田氏。

 一方のサイボウズでは、ソフトウェア開発というよりも組織全体で、「AIが前提になるような未来を想像しながら動こう」というメッセージを出しているという。製品への生成AIの適用においては、「“AIを使うこと”をいかに意識させずにその価値を提供できるかがサイボウズの立ち位置として重要になってくる」とサイボウズの伊佐氏。

 もちろんエンジニアも生成AIを活用しているが、AI人材という意味では、一時期にデータサイエンティストと言われたデータ活用のプロこそが、AIエンジニア的なポジションにシフトしているという。ただ、生成AIアプリを作りたいかというのは、「エンジニアの温度差が結構激しい」と付け加える。

HULFT Technology Days 2024では、基調講演を始め、ユーザーセッション、パネルディスカッションなどが展開された

 セゾンテクノロジーの有馬氏は、「当初は生成AIでエンジニア不足が解決できると言われていたが、現状、開発を自動化できるかというと、そうでもない」と述べる。ただ、多くの海外のスタートアップに会う機会があった際に、「プログラミングで生成AIを活用しているか」と尋ねてまわると、全員もれなく使っていると答えたという。

 そして、「ソフトウェア開発の多くの工程を占める、保守や改修にどこまでAIを使えるかが重要で、実際の開発プロセスの中にAIを組み込んでいかなければいけない」と強調した。

データとAIの時代において、国産メーカーの勝ち筋はどこにあるのか?

 最後のトークテーマは「データを制するものはAIを制す」だ。

 ASCII大谷は、日本マイクロソフトと開催したRAGをテーマとした生成AIコンテスト「AI Challenge Day」で審査員を務めた際に、優勝したチームは「データ分析のスキルが優れていた」と実感したという。結局、「AIの利活用のボトルネックは、分析可能な状態にまでデータを“精錬する”ことではないか」と大谷。今後のAI時代において、データの在り方どうなっていくのか。

 「データはもちろん大事」だとするのは、セゾンテクノロジーの有馬氏。「生成AIを何に使うのか」という目的が最初にあるべきだが、それ以降は絶対に精度の問題にぶつかるという。何のデータを見ているのか、そのデータはいつできて、どこから来て、誰が作ったのかを明らかにする必要がある。「データの信頼性は、“データの下流まで保持しておくべき”ということが、今後ますます重要になる」と有馬氏は強調する。

 サイボウズの伊佐氏は、AIを前提としたプロダクト開発において難易度が高いのは、データの「アクセス権」の考え方だという。「AIでは社内のあらゆる情報が瞬時に把握可能。ただし、誰に返せば良いのか、この判断を間違えてしまうのは問題。データのアクセス権をセットでハンドリングしなければいけない」と伊佐氏。

 加えてkintoneのユーザーにみられるのが、“データがデータになっていない”という問題だ。その場合、業務フローをデジタルに乗せていく必要があるが、「今からやるのであれば、AIで活用できるよう正確性の高いデータを集めるべき」と付け加えた。

 ウイングアーク1stの安田氏は、「機械学習やディープラーニングの頃から“前処理が8割”という考え方は変わらない」と述べつつ、「AIを使うことを目的にするのは本末転倒」というのも、昔から変わらないという。夢のようなツールと思われがちだが、ユーザー企業が真に求め得ているのは課題を解決することに尽きる。「課題の理解が深いとデータ整形にも活かされる」と強調した。

 最後に3人に、データとAIの時代において、国産メーカーの勝ち筋はどこにあるか、改めて尋ねた。

 ウイングアーク1stの安田氏は、「やはりわれわれの強みは、パートナーやユーザー企業との距離が近いところ。開発者本位になってしまったら元も子もない。このスタンスを変えず、プロダクトのバリューチェーンに携わるすべての社員が、同じ考えを持つことを大事にしていく」と説明。

 サイボウズの伊佐氏は、「サイボウズのクラウド戦略の中心は、ここ10年『エコシステム』が中心。パートナーとお客様のデジタル変革のきっかけを作るよう努めてきた。引き続き、日本企業と同じビジョンを追いかけていく」と語る。

 そして、セゾンテクノロジーの有馬氏は、「HULFTは、信頼性を決め手にお客様に導入してもらっている。勝ち筋は信頼性ではあるが、変化の速い現在、それだけにこだわるとついていけない。信頼性とスピードを兼ね合わせて、すばやくリリースをして、すばやくフィードバックをもらう。この回転を増やしていくことにAIを活用したい」と締めくくった。

 なお、パネルディスカッション含む、HULFT Technology Days 2024のアーカイブ視聴(配信期間:10/21〜11/15)は、 HULFT Technology Days 2024公式サイト(https://www.hulft.com/hulftdays/2024)から申し込める。

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