2024年2月9日、セゾン情報システムズはファイル転送ツールの最新版「HULFT10」を発表した。10年ぶりのメジャーバージョンアップとなるHULFT10では、従来のバージョンアップ版に加え、新たにAmazon ECS(Elastic Container Service)に対応したコンテナ版をリリース。OpenShift対応版やコマンドモジュール版も用意され、最新のIT環境での利用ニーズに応える。
今後もHULFT職人が必要なら、もう使えないの声
HULFTは30周年を迎えた老舗のファイル転送ツール。2008年のHULFT7では内部統制やコンプライアンス対応、2014年のHULFT8ではインターナショナライゼーションを強化。バージョン9を飛ばした今回は、10年ぶりのメジャーバージョンアップとなる。
今回のバージョンアップは、ユーザーとのディスカッションが起点となった。従来は安定稼働やセキュリティなど手堅さを売りにしてきたHULFTだが、ユーザー企業の声を聞くと「システムのクラウド化」「ISDNの廃止・インターネット化」「レガシーシステムの終息」などの今のHULFTでは対応できない課題が挙がった。さらにヒアリングの過程で、ユーザーやパートナーからは「AWSのベストプラクティスにのっていない。HULFTを無理矢理使うのはおかしい」「インターネットでHULFTを提案できない」「前提知識と設定項目が多く、初心者がすぐに使いこなせない。HULFT職人が必要」などの厳しい声も得られたという。
そして、これらの課題や声はすべて「IT技術者の不足」という根本的な課題に行き着く。せっかく機能強化しても使いこなせるエンジニアがいなければ、ユーザーメリットにはつながらない。そのため、「HULFTを扱うには専門のHULFT職人が必要になる」という状況を打破しない限り、引き続きHULFTを使ってもらえないという強い危機感があったという。
「30年の環境変化の中で、HULFTの価値を提供できない境界線が生まれている」とセゾン情報システムズの樋口義久氏。ユーザーの声を受け、今回は「境界線を超えた進化」がHULFT10の大きなテーマとなった。具体的には、コンテナ対応やオートスケールなどのクラウド環境での利用、HULFT単体でのTLSを用いたインターネットへのダイレクト接続、APIによる外部システムとの連携、AWS Marketplaceでの購入や従量課金、UI/UXの刷新など、10年ぶりのメジャーバージョンアップにふさわしい強化が施されている。
スケーリング対応のコンテナでHULFT10が利用可能に
今回発表された「HULFT10 for Container Services」は、コンテナイメージで提供される新しいHULFTのエディションになる。AWS Marketplaceからすぐに入手でき、購入から利用、支払いなどのプロセスを一元管理することが可能。1コンテナあたり1時間2.3ドルからの従量課金制で利用できる。
AWSのコンテナオーケストレーションサービスであるAmazon ECSに対応し、リソースやコストを最適化。コンテナイメージは管理と転送を行なう2つのコンテナから構成されており、両者とも障害時や負荷上昇時のスケーリングに対応する。管理用のコンテナはWebベースの管理画面を搭載し、ファイル転送前後のWebAPIリクエストにより、外部のサービスとシームレスに連携する。発表会の後半ではクラウド型ID管理を提供するOktaやチャットサービスであるSlackとの連携も披露され、クラウド環境で利用できるHULFT10がアピールされた。
HULFT10では、今回発表されたHULFT10 for Container Servicesに加え、WindowsやLinux、z/OSに対応した従来のバージョンアップ版、オンプレで利用できる「HULFT10 for Container Platforms」、コマンドモジュール形式の「HULFT10 CLI」なども提供される。HULFT10 for Container Servicesは四半期ごとのバージョンアップを実施し、他のラインナップは2024年の第3四半期にリリース予定。また、HULFT10 for Container Platformsはニーズの高いRedHat OpenShift Platformへの対応を予定している。
なお、発表会を行なった2月9日は「データをつなぐ日」とのことで、同社が記念日登録しており、昨年は「HULFT Square」をリリースしたが、今年はHULFT10を発表した。また、同社は4月1日にセゾン情報システムズからセゾンテクノロジーに社名変更する。