AMDは2024年10月10日(現地時間)、サンフランシスコで開催された自社イベント「Advancing AI」の基調講演で、第3世代のAIモバイルプロセッサー「Ryzen AI PRO 300シリーズ」を発表した。
このプロセッサーはCopilot+ PCなどのAI機能に特化。x86系アーキテクチャーが採用されており、インテルのLunar Lakeなどの競合となるプロセッサーだ。
今回発表されたのは、「AMD Ryzen AI 9 HX PRO 375」、「AMD Ryzen AI 9 HX PRO 370」、「AMD Ryzen AI 7 PRO 360」の3製品。製造プロセスは4nmで、アーキテクチャーはCPUが「Zen 5」、GPUが「AMD RDNA 3.5」、NPUが「AMD XDNA 2」となる。
それぞれの主なスペックは下記にまとめている。上位2モデルで異なるのはNPUのTOPSのみだ。NPUの性能で差別化されているのは、AIモバイルプロセッサーならではと言えよう。
Ryzen AI PRO 300シリーズの主なスペック | ||||||
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モデル名 | コア/スレッド数 | ブースト/ベース周波数 | 合計キャッシュ | 内蔵GPU | TDP | TOPS |
AMD Ryzen AI 9 HX PRO 375 | 12C/24T | 最大5.1GHz/2GHz | 36MB | Radeon 890M Graphics | 15〜54W | 最大55 |
AMD Ryzen AI 9 HX PRO 370 | 最大50 | |||||
AMD Ryzen AI 7 PRO 360 | 8C/16T | 最大5GHz/2GHz | 24MB | Radeon 880M Graphics |
「Ryzen AI PRO 300シリーズ」は、「Ryzen 7040シリーズ」(第1世代/Phoenix Point)、「Ryzen 8040シリーズ」(第2世代/Hawk Point)に続く第3世代のAIモバイルプロセッサー。コードネームでは「Strix Point」と呼ばれている。
NPUの処理能力が第1世代は10TOPS、第2世代は16TOPSだったところ、第3世代は3倍以上の50TOPS以上と大幅に向上。マイクロソフトのCopilot+ PCの要件である40TOPSを大きく超えているわけだ。
「Ryzen AI PRO 300シリーズ」の進化はNPUだけではない。「Ryzen PRO 8040シリーズ」と比較すると、コア数/スレッド数は最大8C/16Tから最大12C/24Tへ増加、内蔵GPUの12CUから16CUに増量されている。またトータルキャッシュも24MBから32MBへと増やされた。CPU、GPU、NPUのアーキテクチャーも進化しており、総合的に性能が強化されているわけだ。
AMDによれば、最上位の「Ryzen AI 9 HX PRO 375」は、インテルの「Core Ultra 7 165U」(12コア[2P+8E+2LPE]、14スレッド、最大4.9GHz、15W)に対して最大40%高いパフォーマンスを発揮。また、ビデオ再生で23時間のバッテリー駆動、Microsoft Teams利用時で最大9時間のバッテリー駆動を実現しているという。
バッテリー消費の激しいMicrosoft Teams使用時に9時間の駆動時間を達成しているのは、強化されたNPUに、CPU、GPUで行なっていた処理の多くをオフロードできているためだ。
なお製品の公式サイトには、「Ryzen AI 9 HX PRO 375」と「Core Ultra 7 165H」(16コア[6P+8E+2LPE]、22スレッド、最大5GHz、28W)とも性能を比較しており、「CINEBENCH R24」(マルチタスク)で40%、「PassMark 11 Overall」(システム)で50%高速とされている。
AMDによれば、「Ryzen AI PRO 300シリーズ」を搭載するノートPCは、2025年までにHPやレノボなどのOEMパートナーから100台以上リリースされる予定とのこと。NPUを搭載、強化したPCが当然の時代となり、多くのAIアプリケーションが提供されることで、利便性を向上させてくれることに期待したい。