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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第304回

イーロン・マスク氏、ブラジル最高裁に白旗

2024年10月08日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 X(旧Twitter)を所有するイーロン・マスク氏と、ブラジルの連邦最高裁判所の判事の対立は、X側が折れる形で決着しそうだ。

 ブラジルの連邦最高裁は、Xが選挙結果などに大きな影響をおよぼす偽情報について、アカウントの凍結など必要な措置を講じなかったとして、2024年8月30日にブラジル国内からのXへの接続をブロックするよう命じた。この命令の前には、マスク氏は最高裁の強行な姿勢に反発し、ブラジル国内のXのオフィスを閉鎖していた。

 ブラジル版のCNNによれば、ブラジルの連邦最高裁は2024年10月4日、X側が制裁金を送金したものの、指定されたものとは異なる口座に送金してしまったという。X側に課せられた制裁金の額は2,860万ブラジル・レアルで、日本円に換算すると7億8千万円にのぼる。制裁金は、別の金融機関の口座に送られてしまったようだ。連邦最高裁側は、制裁金を受け取った金融機関に対し、正しい口座に制裁金を送金するよう要請したという。

 誤まった送金ではあったものの、今回のX側の動きは、X側がブラジル最高裁の決定に従ったという意味がある。マスク氏は、SNS上で担当のアレシャンドレ・デ・モラエス判事を強く批判し、対決姿勢を鮮明にしていたが、結果としてX側が折れた背景には、どのような事情があるのだろうか。

ブラジル撤退をにおわせるも…

 2022年10月のブラジル大統領選では、ルラ氏がボルソナロ前大統領を破ったが、2023年1月、選挙に不正があったと主張するボルソナロ氏の支持者らが、ブラジルの首都ブラジリアの大統領府、連邦最高裁、議会を襲撃した。大統領選の前後から、Xを含むブラジルのSNSでは、電子投票システムに不正があるとする偽情報が拡散され、政府機関への襲撃を呼びかけるツールになった。襲撃事件の後、SNSで拡散される偽情報の監視強化をめぐる議論が本格化した。

 モラエス判事はX側に対し、偽情報の拡散において中心的な役割を担ったアカウントのブロックを求めたが、マスク氏は「検閲にあたる」としてブロックを拒否し、ブラジルのオフィスを閉鎖した。これに対して、モラエス判事は8月末、ブラジル国内におけるXへのアクセスを遮断するよう命じていた。

ブラジル最高裁の命令を順番に履行

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