IEEE(米国電気電子学会)は、ディープフェイクの進化と同様に、その検出技術も進化していると提言した。同学会は、電気・電子分野における非営利の技術者組織であり、2024年上半期には、ディープフェイク検出ツールに関する記事を300件以上公開しているという。
IEEEによると、ディープフェイクを見破る技術は大きく分けて2つの手法があり、その有効性を見極める研究が盛んに行なわれているという。
ひとつは「機械学習」。膨大な量のディープフェイクと本物のコンテンツを機械学習モデルに投入して、両者の違いを認識できるようにする手法だ。この手法の課題は、新たに出現したディープフェイクが学習データと大きく異なる場合に、識別が困難になることだという。
もうひとつの手法は「セマンティック分析(意味分析)」だ。AIが画像内のリンゴや本を認識するマシンビジョン技術と同様の手法で、画像の内容やコンテキストを分析するものだ。この手法では、話し手の顔の血流パターンや頭の形、あるいは外見が、時間経過で一貫しているかも分析できる。また、意味をなさない物体間の関係性も分析対象となる。たとえば、バスルームの設計図において、シャワーヘッドが機能的に使用できない場所に設置されているのを見破るようにだ。
一部の生成AI企業は、ディープフェイクを見破るために「電子透かし」の技術も開発している。IEEEのシニアメンバーであるラーフル・ヴィシュワカルマ(Rahul Vishwakarma)氏は、 「もっとも効果的な技術の1つは、生成AIプラットフォームを使用して生み出された画像に埋め込む電子透かしです」と述べる。
また、ディープラーニングがディープフェイクを検出できるよう訓練するには、約5~6個の一般的なデータセット(人物の動画や画像)が使用される。研究者たちが抱える課題のひとつは、これらのデータセットに含まれている人々が白人男性である可能性が高いことだ。その結果、多様な背景を持つ人々のデータに直面した場合、ディープフェイクの検出は、うまく機能するかという疑問が生じるという。
最後にIEEEは、ディープフェイクの検出において人間の方が優秀かどうか、疑問を投げている。「IEEE Privacy & Securityジャーナル」に掲載された最近の研究では、人間と機械を対決させており、人間は平均してディープフェイクの約71%を識別、最先端の検出手法では93%を識別できている。しかし、人間は、検出アルゴリズムを欺いた一部のディープフェイク画像を偽物だと看破した。
ディープフェイクを見破るのが得意な人もいれば、そうでない人もおり、その研究は緒に就いたばかりだという。別の研究では、「スーパーレコグナイザー(人並み外れた顔認識・識別能力を持つ人)」の検出能力を調べており、彼らは一般の人々よりも必ずしも能力が優れてはいないことが示された。このことは、ディープフェイクを見破る能力は、顔を認識する能力とは異なることを示唆しているという。