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「Snowflake World Tour Tokyo 2024」基調講演レポート

新Vポイント始動の裏側、短期間・低コストで実現したSnowflakeによる企業間データ連携

2024年09月20日 13時30分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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JERA:Snowflakeでデータ・AIの力を現場に、データの相互連携におけるApache Icebergにも期待

 続いては、JERAにおけるデータ利活用の事例だ。同社は、東京電力と中部電力の火力事業と燃料事業を統合した、国内発電量の3割強を担う電力事業者である。

 JERAがデータドリブンカンパニーを目指し、全社規模で変革プロジェクトを立ち上げたのは2019年。事業統合したばかりだったため、まずはフルクラウド化を進め、インフラを全面刷新した。そして翌年、脱炭素とビジネスモデル変革を目指す「Digital Power Plant」という発電所DXプロジェクトを立ち上げる。その2年後、データ基盤としてSnowflakeの利用を開始した。

 JERAの執行役員 ICT推進統括部長である藤冨知行氏は、「このプロジェクトは、“あらゆる垣根を越えて、データとAIの力を現場に”というテーマで取り組んでいる」と説明する。

発電所DX「Digital Power Plant」

 国内26か所の火力発電所では、Digital Power Plantによって働き方が大きく変わった。発電所の運営に関わる情報をリアルタイムで収集して、Snowflakeで一元管理、それを市場動向などと組み合わせてAI分析し、提案された最適解を基にアクションを実行している。「全発電所の所員が情報を等しく、時間・空間を超えて活用できるようになった」と藤冨氏。

 その他にも、AIを活用したボイラー運転の最適化で、CO2を年間4.5万トン、燃料費を約1億円削減、データとAIから算出した予知保全で、メンテナンス費を20%削減している。

 加えて注力するのが「脱炭素エネルギー」だ。例えば、愛知県の碧南火力発電所では、燃料の20%を石炭からアンモニアに転換する実証実験に成功している。ただ、本当に難しいのは、次世代エネルギーである水素・アンモニアを作ることであり、莫大な投資が必要になる。国内だけでは実現できず、多くのパートナーとの連携も不可欠だ。このサプライチェーンの構築では、各工程でCO2を排出していないことも証明しなければならない。

水素・アンモニアサプライチェーンの構築

 そのためにJERAが見据えるのが、各事業者の保有するデータプラットフォームをつなぐ未来だ。「排出量のトラッキングやモニタリング、バリューチェーンのトレーサビリティなどが重要なポイントになる」と藤冨氏。業界や事業者の垣根を越えて、データ活用可能な未来の実現のために、「テーブルフォーマットの共通化、データの相互連携において、SnowflakeのApache Icebergの取り組みに期待している」と語った。

JERA 執行役員 ICT推進統括部長 藤冨知行氏

Snowflakeが解決するエンタープライズAIに至るまでの“3つの課題”

 また、基調講演では、2024年2月に本社CEOに就任したSnowflakeのスリダール・ラマスワミ氏が登壇。12年目を迎えたSnowflakeの注力領域について語った。

 Snowflakeは現在、1万以上のパートナーと協力して、1万社以上のユーザー企業にデータプラットフォームを展開しており、日々行われるジョブの実行数は実に50億万件に上る。そんな同社が今年から標ぼうしているのが「AIデータクラウド」だ。ラマスワミ氏は、「我々は、エンタープライズAIの時代を迎えている。つまり、企業がAIを簡単かつ効率的に活用できる、そして最も重要なのはAIが信頼できる時代であることだ」と説明する。

Snowflake CEO スリダール・ラマスワミ(Sridhar Ramaswamy)氏

 エンタープライズAIを推進するAIデータクラウドにおいて、Snowflakeは2つのアプローチを用意する。AIによってデータフローを最適化する「AI駆動のデータプラットフォーム」と企業データを用いてAIプロダクトを構築する「データ駆動のAIプラットフォーム」だ。

AIデータクラウドのアプローチ

 この2つのアプローチでAIデータクラウドとしてのプラットフォームの拡充を進めるSnowflakeであるが、AI・データを活用に至るまでに解決すべき課題が3つあるという。

 ひとつ目の課題が「複雑性」だ。様々な情報ソースにわたり、より多くのデータを管理するためには複雑性は避けられない。「複雑化はサイロ化されたデータやツールによって引き起こされ、さらには専門性が自由なデータ移動を妨げる」とラマスワミ氏。この問題を解決できない限り、AI戦略は有効にならないといい、複雑性をユーザーに転嫁することは絶対にしないと付け加えた。

 2つ目の課題が、「コスト」だ。複雑性とあわせてインフラコストは上昇し続けており、隠れたオーバーヘッド、高額なリソースに加え、AIの登場で予測不能なコストも発生している。Snowflakeは、シングルプラットフォームのマネージドインフラストラクチャーを従量課金で提供しており、「効率化については、決して止まることがなく、絶えず努力していく」とラマスワミ氏。

 そして最後の課題は、「セキュリティとプライバシー」だ。各国でAI規制も進む中、セキュリティとプライバシーの制約を乗り越える必要がある。Snowflakeでも、Snowflake Horizonの「Trust Center」にて、リスクの見える化を進める。

 ラマスワミ氏は、「我々は、あらゆるデータタイプ、あらゆるコンピュートに関わるニーズ、あらゆるペルソナを、統合され、使いやすく、TCOに優れたデータプラットフォームでサポートする」と強調した。

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