このページの本文へ

クラウドが普通になった市場をベテランはどう見るのか?

実は寝てなかったサーバーワークス大石社長 クラウドビジネスの洞察すごかった

2024年09月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

G-genのGoogle Cloud事業は順調 AIやモバイル、アプリ案件で強み

大谷:マルチクラウドというトピックだと当然、御社のグループ会社であるG-genのGoogle Cloud事業についても聞きたいと思います。

大石:おかげさまで順調に伸びているのですが、基本はAWSとGoogle Cloudを組み合わせて使うという領域です。政治的な理由でAWSを入れられない小売のお客さまの受け皿としてスタートしたのですが、今ではメインはAWSだけど、GoogleのBigQueryは使いたいというお客さまのニーズを満たせるようになっています。

ただ、最近はGoogle Cloud前提でシステム構築するスタートアップも出てきましたね。ここらへんはエンジニアに向けたGoogle Cloudの神通力が効いている気がしますね。

大谷:こちらも具体的な事例を教えてください。

大石:Google Cloudだと、カーテンを製造しているサンゲツさんの事例は面白いですね。カーテンって、めちゃくちゃ型番があるんです。だから、お客さまは古い生地を持ってきてこれがほしいと言っても、社員は一瞬わからないみたいとのことでした。そこで、サンゲツさんはVertex AIを用いてデータベースを構築して、お客さまが写真をくれたら、型番がわかるようにしています。

大谷:実に美しい「ザ・AIな事例」ですね。

大石:あと、風月フーズさんはkintoneからGoogle AppSheetにリプレースした事例ですね。kintoneってとてもいいサービスなんですけど、データとビューが一体化しているので、作った人以外がわかりにくいというデメリットがあります。でも、AppSheetはデータとビューを分離できるので、データはプロフェッショナル、ビューは現場の人が作るみたいな役割分担を実現しています。

やっぱりGoogle Cloudだと、AIやモバイル、アプリに近い案件が多いです。インフラだったらAWSで問題ない。だから、いい意味で使い分けだなと思います。

エンタープライズの世界では、これからもAWSが選び続けられる

大谷:現状、AWSとGoogle Cloudの案件はどれくらいの割合なんでしょうか。

大石:9対1の割合で、AWSの方が多いです。ただ、伸びしろが大きいのでGoogle Cloudの成長は高い。8:2、7:3くらいにはなるかもしれません。

大谷:Google Cloudを積極的に選ぶ理由って、どう分析していますか?

大石:Firebaseがあるので、生産的なモバイルアプリを作りやすいというのはありますね。

あと、先日AWSの資格12冠のG-GenのCTOが言っていたのは、AWSは歴史が古い分だけ、セキュリティ機構がアドホックになっているということです。AWSって最初IAMというIDベースの管理システムから構築されて、その後AWS Organizationsのような組織管理に移ってきています。

でも、Azureは最初からActive Directoryだし、Google Cloudも組織全体でセキュリティを管理する仕組みが備わっています。ゼロからスタートするのであれば、複雑なIAMやAWS Organizationsを覚えるよりもシンプルでわかりやすいと話していました。

大谷:なるほど。歴史の厚みがあだになっている部分があるんですね。

大石:とはいえ、AWSとGoogle Cloudを比べれば、サービスの安定度や運用品質はAWSの方が圧倒的に上です。ですから、エンタープライズの世界では、これからもAWSが選ばれ続けると思うし、当分ひっくり返らないと考えています。

インテグレーターの役割は「航空機を作る」のではなく、「運航すること」

大谷:クラウドに関してはユーザー事例も増え、ユーザーコミュニティも盛んになっていますが、ユーザー側の選択眼は磨かれてきたんでしょうか?

大石:うーん。そんなに選球眼が磨かれてきたとは思えないですね。というのも、これはわれわれの反省でもあるのですが、AWSしかやってなかったときは、選球眼はありませんでした。Google Cloudのことなんて知らなかったので。

でも、G-GenでGoogle Cloudをやるようになって、違いを理解できるようになりました。こういうワークロードはGoogle Cloudの方が向いていると感じる一方で、改めてAWSのよさやすごいところも理解できました。

大谷:その観点はあるかもしれませんね。しかも後発ですし。

大石:ゲーテの言葉に「母国語しか知らない者は、母国語すらしらない」というのがあるのですが、まさにそんな感じ。Google Cloudをやることで、よりAWSのことがわかるようになったというのはありますね。

大谷:AWS御三家と呼ばれるところも、Google Cloudやり始めているので、同じ感想持つかも知れませんね。

大石:お客さまもわれわれに相談しやすくなったと思います。AWSしかやってなかった今までは、AWSを使うことを決めているお客さましか来なかった。今はもっとフワッとした相談も増えてきていますね。現場で使っているメンバーの目利きは、当分インテグレーターの方が強いと思います。

大谷:SaaSの導入が増えていることもあり、クラウドを使うことにフォーカスが当っているような気がするのですが、そんな中でクラウドインテグレーターの役割って改めてなんでしょうか?

大石:「クラウド作る」に比べると、「クラウド使う」って簡単なように見えるのですが、単に技術の方向性が違うだけで、クラウドをきちんと使いこなすのは簡単ではないと思っています。

私はこれを航空機メーカーとキャリアとの違いで例えています。ボーイングは航空機を作っていますが、ANAやJALのように航空機を運航できるわけではないはずです。クラウド作るのはAWSに任せ、きちんと使いこなせるようにするのは僕らのようなインテグレーターの役割だと思っています。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    sponsored

    60年の時を超え「COBOL」がGitHub Copilotでよみがえる 勘定系アプリの“超難関”モダナイに7社が挑戦

  2. 2位

    ビジネス・開発

    富士ソフトがエンジニア1万人超を「AIネイティブ」化 実装力を武器にフィジカルAIなど3本柱に注力

  3. 3位

    ITトピック

    IT技術者の8割超「AI生成コードには人間のレビューが必要」/「偽・誤情報を見破れる」と自信を持つ人はICTリテラシーテストの正答率が低い、ほか

  4. 4位

    ITトピック

    実用化が楽しみすぎるスマート技術たち 「長距離ワイヤレス給電」から「室内向け太陽電池」「超音波センサー」まで

  5. 5位

    ITトピック

    6.4万人の熱狂をAIが導く FIFA W杯全スタジアム「デジタルツイン」化が変えた観戦体験

  6. 6位

    TECH

    攻撃するAIと防御するAI 日本企業のセキュリティ対策にいま何が必要か?

  7. 7位

    sponsored

    「現場に行くのが当たり前」を変えたアズビルのリモート調整 効果はプライスレス

  8. 8位

    Team Leaders

    SharePointリストへの登録データを、CSVファイル形式に成形/変換して自動保存する方法

  9. 9位

    ビジネス

    開発案件の立ち上げを「60分から1分」に ソースコード管理も一本化したKDLのBacklog活用術

  10. 10位

    ITトピック

    「クロスの定義とは?」 AIに“サッカー言語”を教えることから始まった、FIFAとLenovoの協業

集計期間:
2026年07月19日~2026年07月25日
  • 角川アスキー総合研究所