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業務を変えるkintoneユーザー事例 第240回

kintoneの出会いから4年、令和の時代を迎えた管工事会社の変革

抵抗されるkintone導入 夢の国と同じ「入口ひとつ」が桜和設備の秘策

2024年09月11日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp  写真●サイボウズ

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 kintoneユーザーによる事例・ノウハウの共有イベント「kintone hive 2024 nagoya」が開催された。

 本記事では、2番手を務めた愛知県の桜和設備、清水敦氏によるプレゼン「ひょんなことから始まる夢物語」をレポートする。

桜和設備 清水敦氏

桜和設備に“良いこと”をもたらしたkintone、その出会いは4年前に遡る

 桜和設備は、東邦ガスグループの指定工事会社であり、名古屋市を中心としたエリアのガス・水道の管工事業を手掛けている。

 現在、同社のkintoneユーザー数は58人で(2024年6月時点)、これはPC作業をする従業員全員になる。それ以外の現場の社員は、トヨクモの連携サービス「FormBridge」でkintoneにアクセス。これにより社内の申請や伝票は、ほぼデジタル化できているという。

 同社がkintoneを利用し始めたのは、4年前。最初は、ガス事業部において工事管理システムとして導入した。それ以降、徐々に社内で適用範囲を拡げ、総務部、安全衛生、設備部、そして2024年6月に営業部で機器販売システムが稼働することで、晴れて全社でkintoneを利用する環境が整った。

ガス事業部から全社に広がるkintone活用

 お得意様である東邦ガスネットワークともkintoneでデータ帳票のやりとりをする。東邦ガスネットワークが開催する、顧客ファーストな「CS活動」を発表するイベントにおいても、3年連続でkintoneを利用した活動で受賞。今では「桜和設備さん、kintoneでDX上手くいってますね。効率化進んでいますね」と言われるようになった。

 清水氏は、「kintoneを導入していろいろな良いことがあった」と振り返る。事務仕事が楽になり、顧客からの評判も向上し、会社の見える化が劇的に進んだ。kintoneとの出会いは、ガス事業部のExcelの管理シートが壊れたことから始まる。

会社の時間を止めていた“伝統文化”と“エクセラー”

 4年前の桜和設備。当時は、昭和からのやり方を継承する形で仕事を続けていた。伝票類は紙の手書きで、情報が共有されないので重複作業の山。手書きの伝票を見ながらExcelに入力して、それをまた印刷するという繰り返し。「令和2年であったが、桜和設備は平成も迎えることもなく、昭和94年でした」と清水氏。

 時が止まっていた要因は、伝統を守っていくという風潮が強かったこと、そして、“エクセラー(Exceler)”という人達の存在からだ。彼らはExcelを複雑かつ巧みに操り、自身にしか分からない方法で完璧に仕事をこなした。属人化の温床である。

 ある日、Excelで作られた引込菅工事の管理シートが壊れてしまう。誰も修理ができず、困り果てていた。そこに、偶然居合わせた富士フイルムビジネスイノベーションジャパン(富士フイルムBIジャパン)の担当者が紹介してくれたのがkintoneである。

 富士フイルムBIジャパンに、急いで引込菅工事管理アプリを作ってもらい、そこから同社のkintoneの歴史が始まった。経営層に懇願して、ガス事業部でkintoneを使うことが決定。さらに7つの業務をkintoneアプリ化してもらうことになった。

kintoneの出会いはExcelシートの破損から

 するとあの人達がざわめきだした。

夢の国と同じ「入口はひとつ」作戦

 あの人達とは、昭和の伝統を守ってきた人、そしてエクセラーだ。前者は「今までのままでいいんじゃないですか」、「失敗したらどうするの」と反対し、後者は自信を持って「私達にはkintoneは必要ない」と言い切った。

 しかし、彼らを巻き込まないことには、前には進めない。そこでとったのが「入口はひとつ」作戦だ。各業務アプリと連携する、入口となるアプリを作成。別アプリにデータがコピーされるルックアップ機能を使って、入口で共通の情報を入力するだけで、それぞれの業務アプリが情報を取得してくれる。

入口はひとつ作戦

 「こうすることで全体がネットワーク化して、システムとしてうまく稼働するのではという考えで、この作戦をとりました」(清水氏)  

 入口アプリにはそれぞれの業務アプリの関連レコードを配置して、画面を見るだけで、現場で今何が起きているか、何を、誰が、いつ、いくらでやっているのかなどが把握できる。“現場の5W2H”、つまり「現場のストーリーが見えてくる」と清水氏。

 この構造は、清水氏がよく行く千葉県の“夢の国”と同じ構造だという。夢の国自体がストーリー性を持って作られているが、全てのゲストにストーリーを始めから見せるために、入口がひとつとなっている。「我々のシステムも、同じ入口から迎え入れることで、現場のストーリーが始まっていくのです」(清水氏)。

入口アプリ(工事基本マスタ)にて一目で現場の状況が把握できる

 入口はひとつ作戦は、順調に進んだ。「やはり形の見えるアプリが出てくると、みんな便利そうだね、使えそうだね、とだんだんと理解を示してくれるようになった」と清水氏。ただ、エクセラーは見た目がどうも慣れないということなので、ExcelのようなUIに変えるメシウスのプラグイン「krewSheet」も実装した。

 システム開発を始めて4か月、本稼働を迎え、桜和設備は、そこでようやくkintoneの本質を知ることになる。アプリはパートナーに作ってもらうものだと決めつけていたが、ノーコードで簡単にアプリが作れるのがkintoneだった。そこから内製化が進んでいく。

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