このページの本文へ

創業以来のビッグデータが精度の高いAIの決め手

生成AIは転職エージェントになれるか? Greenは試行錯誤する

2024年08月29日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 アトラエでは成功報酬型の求人メディア「Green」に生成AIを組み込む試行錯誤が昨年からスタートしている。17年に渡って蓄積した良質なビッグデータと最新の生成AIを組み合わせて、求職者をどのように支援するのか? アトラエの青野 雄介氏に話を聞いた。

アトラエ 青野 雄介氏

創業時からのビッグデータが強み 面接の合否や面接にかかった時間まで

 アトラエの「Green」は2006年にスタートした業界初の成功報酬型の求人メディア。Greenというサービス名は、転職者にとって自分だけの「青信号(Green Light)」を見つけられるサイトという意味を込めているという。職種ごとに一律固定の料金となっているので、安価に優秀な人材の採用ができるほか、求人企業と求職者が直接アクションできるサービスになっているのも大きな特徴。現在はIT業界に強いダイレクトリクルーティングサービスとして認知されている。

 Greenが実現したのはテクノロジーによる効率的なマッチング。リプレースしたのは、人材採用の広告やメディアではなく、人材紹介会社による求職者と求人企業のマッチングだ。成功報酬型モデルをいち早く採用した先行優位性に加え、アドバイザーやカウンセリングの施設コストが不要ということで、価格競争力も高い。

 そして、テクノロジー観点で他社に比べた競争力の源泉となっているのは、17年に渡って蓄積されたビッグデータだ。ご存じの通り、あらゆる人材の不足が社会問題となる中、求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルートなど求人市場は拡がる一方。その点、テクノロジー前提にスタートしたGreenは、サービス開始当初から求職企業と求職者のプロフィール、相互のアクション、選考データなど多種多様なデータを取得している。

 アトラエの青野氏は、「一次面接や二次面接の合否だけでなく、面接の間にどれくらいの日数を要しているのかまでデータとして取得しています」と語る。もちろん、品質にもこだわる。たとえば、募集企業の記事は、人手で取材して執筆しているため、職場の雰囲気や人間関係の印象などもきちんと盛り込まれているとのこと。ビッグデータとして重要な量、粒度、品質までを確保しているからこそ、他社と異なるアウトプットが提供できるという。

なぜこのスカウトがリコメンドされているのか? 生成AIが理由を説明

 ビッグデータを元にしたマッチング精度の改善も絶え間なく続けてきた。17年に渡って蓄積してきた応募データ、選考結果データを活用し、求職者にマッチング確度の高い求人をリコメンドするところまでは到達している。「成功報酬というビジネスモデルなので、マッチング効率が重要というのは前提なのですが、より質を高めることで、シェアや満足度を高めていけると考えています」(青野氏)。そのためのテクノロジーとして活用されているのは、当然ながらAIだ。

 現在取り組んでいるのは、「マッチング確度の高い求人への応募を促進する」という課題の解決だという。求職者からすると、今までのGreenは転職先をリコメンドされても、マッチング確度がなぜ高いかの理由がわからなかった。理由がわからないと納得感につながらないため、リコメンドされても、応募に至らなかったケースが多く見られたという。

 「リコメンドされた情報に対するアクションは、求職者側も迷っていました。これってわれわれ事業者からすると機会損失だし、求職者も情報過多の中で判断軸が見えず、うまくアクションできない不幸なんです」と青野氏は語る。特にGreenの強いエンジニア分野は長らく売り手市場でスカウトも多い。そのため、マッチング確度が高い理由をデータを元に求職者に説明し、納得感を醸成してもらうことが必要だったという。

 現在試しているのは、なぜリコメンドしたのかの理由を書いてくれる生成AIの活用だ。たとえば、「この職場では、青野さんの大型開発プロジェクトでのキャリアが活きます」 のようなテキストを具体的に書いてくれるという。求人情報や求職企業の記事、求職者のレジュメなどのデータを元に、リコメンドの理由をプロンプトで生成している。現在は、お試し機能ということで一部のページでリコメンド理由を表示してきたが、ユーザーからは反応も出てきた。

リコメンドの理由を解説してくれるAI機能

 過去には情報過多すぎるという課題に対して「求職情報を3行でまとめる」という機能を出したこともあったが、反応は今イチ薄かったとのこと。AIの機能がユーザーにフィットするか、果たしてありがた迷惑なのか、さまざまな試行錯誤が面白い。

職務経歴書のアップロードで、プロフィール自動反映

 もう1つの課題は「書類選考から入社までをサポートする」だ。今までは求職者のプロフィール情報の不足や面接時の受け答えにより、マッチング確度が高くても、入社につながらないという機会損失が発生していた。そのため、求職者のプロフィール情報の入力や面接時の受け答えを支援し、入社確率を上げていく必要があった。

 まずはプロフィール情報の拡充。これに関しては、求職者が用意している職務経歴書をアップロードすることで、自動登録する仕組みを設けた。「Greenの求職者は転職エージェントと併用していることが多いので、職務経歴書はすでにお持ちなんです。同じ内容をいちいち入力するのは求職者も手間ですし、われわれもプロフィールはなるべく埋めてほしいので、こうした機能を作りました」と青野氏は語る。

職務経歴書からプロフィールを自動作成

 こちらは職務経歴書のプロフィール自動反映機能ということで7月18日にリリース済み。PDFやWordファイルなら文書形式を問わず利用可能で、アップロードは数分で完了。Greenにあった文書形式で自動的に反映し、自ら修正することも可能だ。

プロンプトに正しいコンテキストを埋め込まないと、結果は同じ

 現在は面接時の受け答えをアドバイスする機能も試行している。「『こんな会社だから面接でこんなことを聞かれるはず』とか、『あなたのキャリアであれば、ここをアピールしたほうがいいよ』といった、通常は転職エージェントさんがやっているようなフォローアップを、生成AIで実現しています」と青野氏。現時点では過去のデータを元にしたアドバイスだが、将来的には面接官とのロールプレイなども実現できそうだ。

 ChatGPTから始まった生成AIブームも、十分に加熱し、サービスに埋め込まれる時代がやってきた。「プロンプトにきちんとコンテキストを埋め込んであげないと、誰がやっても同じ結果になってしまう。プロンプト力やUI/UXが重要というのは大前提として、入力するデータにどれだけ独自性があるかが課題。せっかくビッグデータを持っているので、Greenもいろいろなチャレンジをしてみたい」と青野氏は語る。

■関連サイト

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    sponsored

    60年の時を超え「COBOL」がGitHub Copilotでよみがえる 勘定系アプリの“超難関”モダナイに7社が挑戦

  2. 2位

    sponsored

    キャッシュレス決済の利用シーンを広げる 三井住友カードの「stera terminal light」とソフトバンクのIoT回線

  3. 3位

    TECH

    パンや酒、チョコづくりにも関わる微生物「酵母」の進化を追求

  4. 4位

    sponsored

    “120TB消失危機”を救ったBox。ゼネラルが挑むグローバルデータ統合の舞台裏

  5. 5位

    データセンター

    「関東・関西に次ぐDC集積地」目指す 北海道・石狩でデータセンター連合 さくら、NTT東らが参画

  6. 6位

    デジタル

    東京タワー相当の紙を“完全撤廃” 点検業務をkintone化した“現場ファースト”な改善術

  7. 7位

    ITトピック

    6割超の企業で「セキュリティは取引条件」 SCS対応も進む/パワハラと指導の違い、あなたの基準は?/AIへの危機感か 転職希望のIT人材が増加、ほか

  8. 8位

    デジタル

    IoTデバイスをサイバー攻撃から守る IoT向けゼロトラストの“3つのアプローチ”

  9. 9位

    ビジネス・開発

    富士ソフトがエンジニア1万人超を「AIネイティブ」化 実装力を武器にフィジカルAIなど3本柱に注力

  10. 10位

    sponsored

    「現場に行くのが当たり前」を変えたアズビルのリモート調整 効果はプライスレス

集計期間:
2026年07月26日~2026年08月01日
  • 角川アスキー総合研究所