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AI革命への“本飛行”に向けたJBS、ベネッセ、ソフトバンクの取り組み

生成AIを“使う”“創る”事例が続々 日本MSがCopilot/AOAIの先進ユーザー紹介

2024年03月21日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトは 、2024年3月18日、企業における生成AIサービス導入企業に関する説明会「GenAI Customer Day」を開催した。

 同説明会では、“AIを使う”もしくは“AIを創る”ユーザー企業として、独立系SIである日本ビジネスシステムズ(JBS)、通信教育・出版事業を展開するベネッセホールディングス、通信事業などを展開するソフトバンクが登壇した。

 日本マイクロソフトの執行役員 常務 クラウド&AIソリューション事業本部長である岡嵜禎氏は、「企業はこれまで、生成AIを取り込むための準備段階にいたが、どんどん活用して、差別化要因とするフェーズに移っている」と説明。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&AIソリューション事業本部長 岡嵜禎氏

 企業の生成AI活用において、マイクロソフトが“AIを使う”ために用意するのが、「Copilot for Microsoft 365」を中心としたマイクロソフト製品に組み込まれた生成AIサービスであり、“AIを創る”ために用意するのが、ローコード・ノーコードでの独自のCopilotを構築するための「Copilot Studio」や、Azure上で展開する生成AIサービスである「Azure OpenAI Service(AOAI)」となる。

 岡嵜氏は、Copilotという名称から、生成AI活用のフェーズを飛行機のフライトに例えた。まずは“機体整備”のフェーズでクラウド化やセキュリティ、IT活用人材、データ戦略などを整える。次に“訓練飛行”として、Copilot for Microsoft 365やCopilot Studioなどで“身近な課題を”解決する。そして最後に“本航行”として、AIを活用したビジネスや環境、人の変革の達成を目指すことを提案する。

飛行機になぞらえたAI変革への段階的な試み

日本ビジネスシステムズ:従業員の月当たりの価値創出時間が14時間増

 “AIを使う”ユーザー企業としては、国内でいち早くCopilot for Microsoft 365の全社導入を決めた日本ビジネスシステムズ(JBS)が登場。同社の取締役専務執行役員 ビジネスグループ統括、デジタルセールス本部担当である後藤行正氏が詳細を説明した。

日本ビジネスシステムズ 取締役専務執行役員 ビジネスグループ統括、デジタルセールス本部担当 後藤行正氏

 後藤氏は、「『優れたテクノロジーを、親しみやすく』というJBSの企業理念に基づき、社員にCopilot for Microsoft 365を親しんで使ってもらうことは、企業として重要なステップになる」と導入の目的を語る。

 JBSでは、2023年の8月に、Copilot for Microsoft 365のアーリーアクセスプログラムに参加。まずは300ライセンスを希望するユーザーに先行付与した。その後、定期的な勉強会の開催や使用状況の分析、Microsoft 365をよく利用する総務や人事、法務などの部門における活用促進を経て、2024年の3月より全社展開を開始している。

JBSのCopilot for Microsoft 365全社導入の流れ

 後藤氏は、現時点での代表的なCopilot活用のユースケースとして、「議事録作成」と「契約書のチェック」を紹介した。

 議事録作成では、Teamsで行った会議の要約を迅速にWordやPowerPointで利用できるよう、プロンプトを独自に開発。

 また、法務部では契約書の確認業務に活用しており、確実にチェックしなければいけない文言や項目をCopilotに一括で確認してもらっている。Copilotを利用することで、一人あたり週に15件ほど発生し、1件あたり平均15分要していた確認業務を、平均5分にまで短縮できたという。

JBSのCopilot for Microsoft 365の活用(議事録作成)

JBSのCopilot for Microsoft 365の活用(契約書のチェック)

 また、同社は従業員の働き方を分析・可視化する「Microsoft Viva Insights」を利用しているが、Copilotの導入によって、従業員の1か月あたりのメール業務が2時間、チャットに要する作業が3時間、会議も3時間、それぞれ短縮されたという。これらの業務が削減されたことで、従業員の価値創出時間が14時間捻出できたという効果計測を得ている。

Microsoft Viva Insights を使用したCopilot for Microsoft 365の効果計測

 後藤氏は、「AIの活用が社員一人ひとりにとって『当たり前』になることが一番のゴール。未来への投資になることを確信している」と強調した。

ベネッセホールディングス:生成AIの活用は精度ではなく、利便性高く使えるか

 続いて、“AIを創る”ユーザー企業として、ベネッセホールディングスの専務執行役員 CDXO 兼 Digital Innovation Partners 本部長である橋本英知氏が登壇。

ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO 兼 Digital Innovation Partners 本部長 橋本英知氏

 ベネッセにおける生成AIの活用は、まずグループ社員1万5000人が、ビジネスチャットボットをセキュアに利用できる環境を構築するところから始まったという。その後もトライアルを重ねながら、コンタクトセンター業務やウェブサイトの更新にも生成AIを適用。そして現在は、顧客向けの生成AIサービスの提供にも至っている。

 今回は、従業員向けに社内の情報検索の利便性を向上させる「社内相談AI」の取り組みを紹介した。例えば、新たな企画を立ち上げる際には、経理や財務、法務、情報セキュリティなどの部門に相談して、各情報を確認しなければならない。橋本氏は「“大企業あるある”で、チャレンジのハードルになっている」と言い、この問題を解消するサービスとして社内相談AIの開発を進める。

ベネッセの社内情報検索を向上させる“社内相談AI”

 社内相談AIは、当初はオリジナルで開発を進めており、PoCではイントラネット上にある750ページ分の情報を投入することで正解率の向上を目指した。「どういった形でデータセットを利用するのかが大事だと実感した」と橋本氏。

 しかし、精度向上のためのデータセットや機能の追加が素早く実施できないという課題があり、Copilot Studioによる内製化を選択した。

社内相談AIのPoCの結果

「Copilot Studio」を活用して内製実装へ

 Copilot Studioについて橋本氏は、「圧倒的に良かったのは『ノーコードで開発できること』と『安価なこと』。ユーザーごとのアクセス制限もできて使いやすい」と語る。2024年2月には本番リリースを行い、1週目は日に100~200件の相談を受けたが、2週目からは20~50件に落ち着き始めたという。

 回答精度は、オリジナル開発版の81%から86%とやや向上したものの、「データの解釈違い」や「該当データがない」パターンが54%あるのが課題だといい、データセットの精緻化や追加によって改善を進めている。

社内相談AIの利用状況と回答精度の評価

 また、データセットだけではなくUXも重視しており、当初は社内ポータルのトップから遷移していたが、Teamsの「相談AI」アイコンからダイレクトに飛ぶよう改善。また、生成AIの回答や評価のアンケートなどの表現にも気を遣い、「腹立たしくならないよう」チューニングをしているという。「(生成AIの活用は)精度ではなく、利便性高く使えるか。加えて、独自のデータをどれだけ使える形にするかだ」と橋本氏。

精度だけではなくUXにもこだわる

ソフトバンク:「LLM自律思考型」のコールセンター業務自動化サービスを構築

 最後に紹介されたのは、より複雑なユースケースをAzure OpenAI Serviceで実装するユーザー企業だ。代表して「世界で最もAIを活用するグループ」を目指す、ソフトバンクのIT統括 専務執行役員 兼 CIO である牧園啓市氏が登壇した。

ソフトバンク IT統括 専務執行役員 兼 CIO 牧園啓市氏

 ソフトバンクは、2022年度の通期決算説明会より、トップメッセージで生成AIの全社活用を推進、グループ企業内で定期開催する優勝賞金1000万円の「生成AI活用コンテスト」では、累計11万件以上のアイディアが集まっているという。そして、同社がAzure OpenAI Serviceを活用して進めるのが「社内業務」と「コールセンターでの生成AI活用」だ。

 社内業務においては、「生成AIは、利用者でなければどうやって使うべきかが分からない」(牧園氏)という考えのもと、徹底的に利用するための環境を整備。既にすべての部門で、APIを利用した開発ができるようになっている。加えて、AIガバナンスや情報共有、教育や育成などの推進体制の構築も行い、この両輪でAI活用に取り組む。

ソフトバンクの生成AIの業務活用の取り組み

 またコールセンターにおいては、日本マイクロソフトとの業務の自動化サービスを共同開発中で、2024年7月以降、自社のコールセンターに順次導入する予定だ。

 これまでもコールセンター分野での生成AI活用には取り組んで来たが、LLMがインテント(検索意図)を分類し、決められた順序と固定化されたスクリプトで対応するフロー追従型では、高度な対応が難しかったという。そこで、Azure OpenAI Serviceを中心としたインテリジェントプラットフォームを用いて、顧客との会話内容に応じてLLMが必要な機能やデータソースを参照する「LLM自律思考型」のシステムを開発。柔軟かつ高精度な顧客対応を目指すという。

 同サービスは、効果検証の結果を踏まえ、カスタマイズを施した個社提供や、業種業界ごとの機能を追加したSaaSなど、ニーズにあったサービス展開を検討しているという。

開発アプローチの変化。フロー追従型から「自律思考型」に

「Azure AI Search」を活用してRAGでの連携を実施、独自データベースを参照する

 その他のAzure OpenAI Serviceを活用した、より踏み込んだユースケースとして、DMM.comはサポートセンターの問い合わせを内製システムとAzure OpenAI Serviceで要約し、顧客の反応を分析。デンソーでは、会話型アームロボットを開発、GitHub Copilotを駆使して2か月で実装した。電通は、ノンコア業務をアウトソースできる「Smart Work コンシェルジュ」を展開する。

 メドレーは、医療介護の求人サイト「ジョブメドレー」にて、求人作成補助機能を提供する。ダイドードリンコは、商品パッケージのラベルや成分表示などの、リーガルリスクや注意事項の確認作業を最適化。日清食品ホールディングスは、同社専用の生成AI環境を構築して、業務領域に適した使い方ができるよう100種類以上のプロンプトテンプレートを展開しているという。

Azure OpenAI Serviceの高度なユースケース

フォトセッションの様子

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