フードクリエイター・たがみまきさん/海外生活で改めて知った和食の素晴らしさが、無添加冷凍離乳食宅配ビジネスの原点

文●文●山野井春絵

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「健康は、口から入るもので守られる」…実体験からくる発想で、冷凍離乳食の宅配ビジネスを立ち上げた、たがみまきさん。無添加、手作りにこだわる離乳食は評判をよび、働きながら子育てに奮闘するパパママはもちろん、大学病院の医師や看護師の福利厚生としても採用されている。現在は高松にセントラルキッチンを構え、東京と行き来して活躍するたがみさんに、ライフシフトのきっかけを聞いた。

無添加冷凍離乳食mom’s代表、フードクリエイターのたがみまきさん(53)。無添加と手作りにこだわった離乳食を宅配するサービスを手がける。

駐在先のインドネシアで、和食の魅力を再発見

香川県出身のたがみまきさんは、地元のテレビ局に勤務した後、結婚して上京、しばらく専業主婦として子育てに専念していた。夫は転勤族。全国各地をまわり、2人の息子がそれぞれ高校生と中学生だった頃、インドネシアのジャカルタに居住した。そこでは食文化の違いに戸惑いながらも、和食の素晴らしさを再発見するきっかけを得たと話す。

「インドネシアの郷土料理は、とてもおいしいです。でも、基本的に外食文化で、お世辞にも栄養バランスが良いとは…。野菜も、チャーハンにきゅうりが一切れついているだけとか(笑)。酸化が進んだ油も気になったので、外食はほどほどに、ほとんど自宅で和食を作っていました。異なる食文化に接してみて改めて、だしの力、素材を生かす調理法など、和食って本当に素晴らしいな、と。口から体に入れるものをどう選ぶかが、健康にとって大切なんだと痛感した、インドネシアでの体験は、現在の仕事の原点になっていると思います」。

子どものごはん作りに悩むワーキングマザーたち

帰国後は、フードクリエイターとして、手作り調味料のワークショップ、お弁当作りなどをするように。あるとき、1歳の子を育てる元同僚の家に遊びに行ったとき、ワーキングマザーの日常の大変さを目の当たりにした。」

料理本やネットで調べ、既存のこんにゃくレシピをいろいろ試してもみたが、今ひとつピンとくるものがない。オリジナルの試作を繰り返している間に、切り方やゆで方など、下準備にひと手間加えることで、和食だけでなく、あらゆる料理に展開できる可能性を見つけていったという。

「夫婦で働いて、家事もして、大人のご飯も用意しながら、まったく別の工程が必要となる子どもの離乳食も作らなければならない。私が子育てをしていた時期は専業主婦だったので、彼女の忙しさを見て仰天しました。これは大変だ、と。そこからの着想ですね、離乳食作の代行は、きっとニーズがある、と」

とはいえ、たがみさんは、すぐに離乳食作りをはじめたわけではなかった。 家事代行サービスに登録して、働くママの家庭を訪れ、リサーチをしたのだ。

「潜入捜査じゃないですけど(笑)。『離乳食の作り置き』というキーワードを特技の中に入れておいたら、やっぱり反応があったんです。実際に、タワマンに暮らすママのところへ仕事で行ってみると、その方は、慣れない離乳食作りに疲弊していました。そこで、レクチャーしながら離乳食を作ったら、本当にホッとした顔をされて。そのお宅には、何度か伺いました。離乳食宅配ビジネスを始める際にも、そのママがモニターになってくださったんですよ。今でもいいお付き合いが続いています」

そして、はじめは東京のアトリエで、料理の得意な知人たちに声をかけ、4人ほどで離乳食作りをスタート。無添加・手作りにこだわった冷凍離乳食の宅配はすぐに評判となり、SNSなどで広まっていく。


7・8ヶ月の「モグモグ期」、9〜11ヶ月の「カミカミ期」など、月齢に合わせた離乳食を製造販売している。

高松に離乳食専門のセントラルキッチンをオープン

高松市にあるセントラルキッチンも、笑顔がたえない。スタッフたちはみんな生き生きと働いている。

現在は、主に高松市にあるセントラルキッチン離乳食を製造しているたがみさん。東京と高松を行き来する、多忙な日々を過ごしている。

「東京の食材の鮮度、価格には限界があると感じるようになって。一方、海と山に恵まれた高松は、食材に恵まれています。もともとママさんたちが苦手とする『魚』をたくさん取り入れたいと考えていたので、この地元でセントラルキッチンが作れないか、と考えるようになりました。クラウドファンディングに挑戦したところ、3日で目標金額を達成! …蓋を開けてみたら、支援してくれたのは親類や友達がメインで、ほとんどお祝い金のようなものでしたが、嬉しかったですね」

とれたての野菜、水揚げされたばかりの魚などを使った無添加の離乳食作りは、フードプロセッサーは使わず、すべてが手作業。発注が増え、人手を募ったところ、地元の83歳の女性が来てくれたという。

「83歳の方は、一日2時間、とても楽しく働いてくださるんです。ほかにもバラエティ豊かなスタッフに恵まれて、とてもありがたいなと思っています。地域でのご縁も、大切にしていきたいですね」

「三方良し」で、みんながハッピーに

たがみさんのモットーは、近江商人の心得、「三方良し」。 売り手良し、買い手良し、世間良し。売り手も買い手も満足し、かつ社会貢献できることが良い商売と説いたことばだ。職場を支えてくれるチームを大切にしながら、これからもいい離乳食を作り続け、利用する家庭に幸せを届けたい、と意気込む。

子育てもひと段落。これから何をしたらいいかわからないという40代、50代は多い。そういう人たちに、アドバイスがあるとしたら…?

「特技を見つめ直してみること、でしょうか。好きなもの、やっているとうれしいもの、これまでやって来た中に、きっとヒントがあると思います。ウキウキするもの、ことを極めていった先に、ハッピーが待っていると信じています」

「おいしそうに食べる赤ちゃんの笑顔と、パパママの安心した笑顔を見られるのが、何よりのやりがいです」。と語るたがみさん。

Profile:たがみまきさん

たがみ・まき/1971年、香川県生まれ。フードクリエイター、無添加冷凍離乳食mom’s代表。短大卒業後、地元のテレビ局勤務を経て、結婚とともに上京。専業主婦として子育てに専念する。全国各地への転居、海外赴任を経て、和食の素晴らしさを再確認。離乳食は調味料を極力使わず、出汁のうまみや野菜本来の持つおいしさを大切にする料理。共働き世帯の子育ての悩みに寄り添い、安心・安全な離乳食・幼児食で「悩める子育て世帯の助けになりたい」と奮闘中。全国で開催の試食・相談会では、パパママの悩みを受け止め、月齢に応じた食のアドバイスを実施している。

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