このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

ルビコン川を渡って約10年、次の時代を切り開く新シリーズ

現代のDALIの魅力が存分に詰まった新スピーカー「RUBIKORE」シリーズ発表

2024年08月26日 11時00分更新

文● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ディーアンドエムホールディングスは8月26日、DALIの高級スピーカー「RUBIKORE」(ルビコア)を国内発表した。発売は10月になる見込み。

RUBIKOREシリーズ

 昨年40周年を迎えたDALI。同社はその前年(2022年)に超ハイエンドスピーカー「KORE」(1650万円/ペア)を発表。翌年(2023年)にはその技術をダウンサイズした「EPIKORE 11」(800万円/ペア)を投入している。いずれも市場の関心を集めたが、一般家庭で導入するのはかなりハードルが高い製品でもあった。

 RUBIKOREは、そんなKOREと技術的なエッセンスを共有する一方で、がんばれば手が届きそうな「現実感のある価格帯」を実現した製品だ。グローバルではミュンヘンのHigh End 2024で初披露。日本では7月のTIAS 2024で一般公開されてきたが、ついに正式発表。詳細が明らかになった。

Hi-Fiにもホームシアターにも使える

 ユニット構成や用途の違いで5機種をラインアップする。カラーはハイグロス・ブラック、ナチュラル・ウォールナット、ハイグロス・マルーン、ハイグロス・ホワイト(受注生産)の4色が選べる。

 なお、ハイグロス・マルーンは赤みがかった色調の光沢仕上げで、ブックシェルフ型の「RUBIKORE 2」とトールボーイ型の「RUBIKORE 8」「RUBIKORE 6」のみで選択可能だ。

 壁掛け型の「RUBIKORE ON-WALL」、センタースピーカーの「RUBIKORE CINEMA」はホームシアター用にインストール業者が導入するケースが多く、マルーン色の需要が低いためとのこと。とりわけセンタースピーカーでは、光の反射を嫌う人が多いため、光沢仕上げが避けられる傾向があるようだ。

 各製品の名称と価格は下記の通りだ。

「RUBIKORE 8」:70万4000円(1本)
「RUBIKORE 6」:52万8000円(1本)
「RUBIKORE 2」:26万4000円(1本)
「RUBIKORE ON-WALL」:30万8000円(1本)
「RUBIKORE CINEMA」:41万8000円(1本)

10年かけて新たなミュージカリティの改善に挑んだ

 RUBIKOREは、2014年に登場した「RUBICON」の後継シリーズとなる。RUBICONは「ルビコン川」を指し、有名なカエサルのエピソードに由来したネーミングだ。

 RUBICONシリーズでは、先行して市場投入していた上位モデル「EPICON」に続いて、SMC磁気回路やウッドファイバーコーンなど、現在のDALIが中核に据えている技術を導入した。しかし、独自性の高い技術であるがゆえに、他社ではユニットを作れない。DALIはRUBIKOREで規模の大きな自社開発ユニットの製造に取り組むことになった。つまり、RUBICONはビジネス的にも「後に引けない決断」であり、その意思を表明するシリーズ名を冠した機種でもあったのだ。

現在に至る、DALIのスピーカーラインアップ(変遷)

 DALIのラース・ウォーレCEOは「開発で一番重要なのは、十分な時間をかけること」(耳で聞いて調整を続け、追い込む)と表明している。RUBIKOREは上に挙げたラース氏の思想を体現した機種でもある。RUBIKOREはこれからのDALIを作っていく中核シリーズだが、RUBICONの登場からRUBIKOREの登場までには実に10年の長い時間がかかった。

 スピーカーの音作りでは、しばしばリファレンスとミュージカリティの対比が示されるが、DALIはまさに後者の代表格だ。象徴的な「In Admiration of Music」のキャッチフレーズが示すように、DALIは「音楽を楽しむためのスピーカー」を開発している。通常であれば2回はモデルチェンジしそうな時間をじっくりとかけて、DALIがRUBIKOREで達成しようとしたのは、周波数特性など数値だけでは語れない「人の心を動かす音の実現」だという。

 RUBIKOREは、DALIらしい音色を基調にしつつ、広大な空間再現、トランジェントのいい明瞭な音を出すという、ある意味矛盾した内容に取り組んだ。これを可能にしたのがDALIならではのオーディオサイエンスである。

 曰く「ツィーターに革新的な技術を用いれば、ウーファーも改善されなければならない」。特筆した技術がツィーターで開発されたらウーファーとエンクロージャーも改善しなければならない。シミュレーターや測定器などを利用するのはもちろんだが、その調整をじっくりと人の耳を通じて続け、時間軸のコヒレンス(一貫性)を目指す。10年の時間はそのために必要なものだったと言えるだろう。

自然由来の素材でロー・ロスを実現する

 RUBIKOREで使用されているソフトドームとウッドファイバーコーンはともに不快な音を出しにくく、幾分か揺らぎが生じる振動板(ダイヤフラム)だ。

 金属ではない有機的な素材の特徴は「内部損失の高さ」だが、これは一定のロスが発生するのと同義であり、裏を返せば音楽表現の繊細さを失いやすいという面もある。つまり、素材の特徴を生かしつつ、弊害となる損失を減らす工夫が必要になる。

 この制御を担のが、DALIの「ロー・ロステクノロジー」である。その紹介では「Wild horse(暴れ馬)」をコントロールするようなものだというコメントもあった。その実現にKOREで培った様々な技術が貢献したことは言うまでもない。

 ちなみに、D&Mでシニアサウンドマネージャーを務める澤田龍一氏によると、DALIのスピーカーはどのモデルも周波数によるインピーダンスの変動が少なく平らであるのが特徴だという。これは特にスイッチングアンプと相性がよいと言うことで、DALI製品を選ぶ魅力になりそうだ。

 筆者はこのコメントを聞いて、低域から高域まで一体感のある音作りであったり、決して高価になりきらない形で音楽の魅力を伝えるといったブランドの姿勢との一貫性を感じて興味深かった。

バスレフポートから内部をのぞく、自社開発のスピーカーであるという記載が見えた。

 従来のRUBICONとの差分も非常に大きく、単純な性能や再現力の差というよりも、時代を飛び越えたような感覚が味わえた。販売の主力となるのはRUBIKORE 8/6/2の3機種だろうが、後述するON-WALLやCINEMAもシアタースピーカーだからと切り捨ててしまうのはもったいない独創性を持つスピーカーだ。

 一般的な感覚で捉えれば、RUBIKOREシリーズはかなり高価なシリーズではあるが、その音を聞けば、充実した内容と開発者の熱意が必ず伝わってくるはずだ。全てを並べて眺めてみると、興味深いラインアップができあがったものだと感心する。

前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン