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最新パーツ性能チェック 第446回

「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」は“約束された”最強のCPUになれたのか? ベンチマークで見えた利点と欠点

2024年08月14日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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DDR5-6000のパフォーマンスもチェックする

 今回の検証環境は、前回Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xのレビュー時の検証環境とデータをほぼそのまま継承している。すなわち発売済みのRyzen 9000シリーズを筆頭に、Ryzen 7000/ 7000X3Dシリーズの7モデル、Coreプロセッサー(第14世代)のK付きの3モデルを比較対象とした。

 本レビューに際し、CPUの性能を最大限発揮させるためにメモリーはEXPOのDDR5-6000「で」検証せよ、というレギュレーションがAMDより課せられた。筆者はCPUのファーストレビューではメモリーのクロックはそのCPUの「定格かつ最大クロック」で統一してきた。それが一番フェアだからである。

 そこでRyzen 9000シリーズに関しては、他のCPUの環境と合わせたモジュール(DDR5-5600動作)でのパフォーマンスに加え、DDR5-6000のオーバークロックモジュールを使用した際のパフォーマンス(グラフでは“(6000)”と表記)も計測した。ただDDR5-5600の計測とDDR-6000の計測はメモリーモジュールが異なるため、やや中途半端な検証となってしまったことをお詫びしたい。時間的制約と整合性確保のための苦渋の選択である点はご承知おきいただきたい。

 そしてインテルのCoreプロセッサーに関してだが、不安定問題への結論と言うべきマイクロコード“0x129”をベースにしたBIOSがリリースされたが、前回レビューのデータを流用する関係で0x125、つまりeTVBのバグを解消したBIOSで検証している。そしてPower Limit設定はPerformance Power Delivery Profileに統一。これはCore i7およびCore i9はPL1=PL2=253WかつICCmax=307A、Core i5はPL1=PL2=181WかつICCmax=200Aの設定である、ただしそれ以外、Tauなどの設定はマザーのデフォルト値としている。

 検証にあたり、Secure Boot/ Resizable BAR、メモリー整合性やHDRといった設定は一通り有効としている。GPUドライバーはRadeon Software 24.7.1を使用した。

AMDテスト環境
CPU AMD Ryzen 7 9700X (16C32T、最大5.7GHz)
AMD Ryzen 5 9600X (12C/24T、最大5.6GHz)
AMD Ryzen 7 9700X (8C16T、最大5.5GHz)
AMD Ryzen 5 9600X (6C/12T、最大5.4GHz)
AMD Ryzen 9 7950X3D (16C/32T、最大5.7GHz)
AMD Ryzen 9 7900X3D (12C/24T、最大5.6GHz)
AMD Ryzen 7 7800X3D (8C/16T、最大5GHz)
AMD Ryzen 9 7950X (16C/32T、最大5.7GHz)
AMD Ryzen 9 7900X (12C/24T、最大5.6GHz)
AMD Ryzen 7 7700X (8C/16T、最大5.4GHz)
AMD Ryzen 5 7600X (6C/12T、最大5.3GHz)
CPUクーラー NZXT Kraken Elite 360 (AIO、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock X670E Taichi (AMD X670E、BIOS 3.06)
メモリー Micron CP2K16G56C46U5 (16GB×2、DDR5-5200/ DDR5-5600)
ビデオカード AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード
ストレージ Micron CT2000T700SSD3 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5)
電源ユニット Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK (1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2)
インテルテスト環境
CPU インテル「Core i9-14900K」 (24C/32T、最大6GHz、Performance Power Delivery Profile)
インテル「Core i7-14700K」 (20C/28T、最大5.6GHz、Performance Power Delivery Profile)
インテル「Core i5-14600K」 (14C/20T、最大5.3GHz、Performance Power Delivery Profile)
CPUクーラー NZXT Kraken Elite 360 (AIO、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock Z790 Nova WiFi (インテル Z790、BIOS 6.01)
メモリー Micron CP2K16G56C46U5 (16GB×2、DDR5-5600)
ビデオカード AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード
ストレージ Micron CT2000T700SSD3 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5)
電源ユニット Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK (1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2)

シングルスレッドは伸びたが、マルチスレッドは伸び悩む

 今回も定番「CINEBENCH 2024」のスコアー比べから検証をスタートする。デフォルトの10分間のプレヒートを経てスコアーを出すモードを使用している。

CINEBENCH 2024:スコアー

 前世代のフラッグシップであるRyzen 9 7950Xは確かに高スコアーを出していたが、大幅に電力制限をかけたCore i9-14900Kに大きく水を空けられてしまった。しかし今世代のフラッグシップモデルRyzen 9 9950Xは7950Xを3%程度(メモリー定格の場合)上回った。

 事前の発表ではZen 4→Zen 5のIPCは10%以上向上とされているのに、マルチスレッド性能の伸びは非常に小さい。インテル勢のように電力を盛りまくるスタイルではないがゆえに、TDPの制約を強く受けるマルチスレッドテストでは、スコアーが伸びないのは想像通りといえる。

 しかしメモリーをDDR5-6000とすることでCore i9-14900Kを一応上回ることができた(この結果からAMDがDDR5-6000をレギュレーションに含めた理由が分かった気がする)。

 シングルスレッドのスコアーに関しては、発売済みのRyzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xを4ポイント程度ではあるがRyzen 9 9950Xや9900Xが上回り、高TDPモデルの風格を見せつけるとともに、インテル勢に対しても定格のDDR5-5600でも上回るというデータを示した。

 とはいえ、Ryzen 9 9900XはDDR5-6000を使用してもなおCore i7-14700Kのマルチスレッド性能を越えられないなど、TDPが120Wに抑えられているがゆえのハンデも感じられた。

 続いては「Blender Benchmark」「V-Ray Benchmark」もテストする。いずれのベンチマークもCPUだけでレンダリングした場合のスコアーで比較した。

Blender Benchmark:CPUを利用したレンダリング時のスコアー。Blenderのバージョンは4.2.0を使用

V-Ray Benchmark:CPU V-Rayのスコアー

 CINEBENCH 2024ではインテル勢がまだいけそうな雰囲気があったが、BlenderではRyzen 9 9950Xの完全勝利といったところか。Core i9-14900Kに対してはおおよそ20%程度の差をつけ、同時にRyzen 9 7950Xに対しても10%程度上回るなど、新アーキテクチャーの強さがよく分かる結果となった。ただメモリーをDDR5-6000にしても大してスコアーは上がらないどころか、下位のRyzen 7 9700Xなどは微妙にスコアーが下がってしまっているなど、高クロックメモリーの効果がない場合もあることも分かっただろう。

 V-Rayに関してもBlenderと傾向は変わっていない。ここではRyzen 9900XがCore i7-14700Kを抜き去るどころかRyzen 9 7950Xのすぐ後ろに付けている。そしてここでも、DDR5-6000が効果を見せるのはRyzen 9 9950XおよびRyzen 9 9900Xだけで、Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xの場合はかえってマイナス気味になっている。

 ここまで見てきた3本のベンチマークはどれもマルチスレッド性能が命のCGレンダリング系なのに、なぜCINEBENCH 2024ではRyzen 9 9950Xや9900Xのスコアーが微妙になったのか? それはCINEBENCH 2024では1周が長い上にそれを最低10分続けてから平均値をとるテストなのに対し、Blender BenchmarkもV-Ray Benchmarkも比較的短時間で終わるテストだからだと筆者は推測する。

 長時間だと熱や電力制限に頭を押さえつけられてしまうためスコアーが伸びず、短時間だと制限を受けにくいというのが“理由のひとつ”として考えられる。

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