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Auro-3Dのフォーマットをフルに活かした配信はレア!

これが最大13.1ch/ハイレゾのライブ配信だ!ーーJAZZ NOT ONLY JAZZの熱気にふるえた

2024年08月14日 13時00分更新

文● ASCII 写真●Maho Korogi(ライブ風景)

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上から音が鳴るだけではない、サラウンドの特徴を解説

 最後にサラウンド収録の狙いや制作の成果についていくつか質問をしてみた。まずはトップスピーカーがある効果についてからだ。

 JAZZ NOT ONLY JAZZの収録では合計で108chでの収録がなされ、このトラックを元に音源が制作されている。音の配置については、試聴のインプレッションでも書いたが中層を中心にし、上層は補助的に配置する形になっているという。音楽コンテンツでトップスピーカーから音が鳴っていると意識させるようなコンテンツ作りは、教会のような高さを意識するような会場でない限りあまりなく、その存在に気が付かない人もいるかもしれないということ。

左から順に、沼田彰彦さん(ミキシングエンジニア)、蓮尾美沙希さん(ミキシングエンジニア)、入交英雄さん(サウンドディレクター)

 しかし、トップスピーカーを追加する効果は確実にあるという。それは頭上の中央にリアルのスピーカーがあることによって、ハイトの5chと組み合わせた6つのスピーカーで作る音像ができ、定位感の良さが向上する点だ。音の解像感は基本的にスピーカーの数を増やせば、増やしただけ上がっていく。

 また、ハイトスピーカーが加わえる理由は高さの再現だけではない。そのポイントになるのは、左右の音の広がりだという。

 スピーカー配置は一般的なステレオ再生の場合、リスナーと左右のスピーカーで正三角形を作るのが理想などとも言われるが、その際はリスナーから見て、60度程度の角度に開いた左右のスピーカーの音を聞くことになる。ハイトスピーカーを加えると、このさらに外側となる90〜120度程度の角度まで音が広げられ、そのつながりも自然にできるそうだ。

 一般にL(左)とSL(左のサラウンドスピーカー)やR(右)とSR(右のサラウンドスピーカー)間は距離が離れているため、音が定位しにくい。言い方を変えると、間にスピーカーがないので音を置けない。そこでコンテンツ制作時にも、この部分に定位する音を置かないのがセオリーだという。

 しかし、3Dオーディオでは「この間」を上方スピーカーの音から発する成分を組み合わせることで補える。結果、WL(ワイドL)やWR(ワイドR)といった部分に定位する音を積極的に仕掛けられるのだそうだ。

 別の質問もしてみた。さまざまなアーティストが出演してステージが構成されているが、曲ごとに収録の方法を変えたり、サラウンドで置く音の配置を変えたりしているのかについてだ。

 回答としては、アーティストの出入りはあるものの、全体を通して演奏しているのは石若氏のバンドであり、あくまでもそれにゲストが加わる形式であるため、全体のセッティングやエフェクト、音のバランスなど、基本的な音作りのプランは変えていないそうだ。

 ただし、ギターの持ち替えなどちょっとしたステージ上の変化はあるため、微調整は加えている。また、映像と音の組み合わせにも配慮している。前提として映像に音を合わせるような作り方はせず、映像は映像、音は音として制作してはいるが、映像と組み合わせた際に聞こえにくい部分をフォローしたり、寂しい部分をフォローしたりといった調整は加えているという。

 最後に収録で苦労したポイントはなんだろうか?

 イマーシブでの収録となると、マイクの数が増え、高い位置に設置するものもあるため苦労は増える。また、96kHzでの収録となれば負荷も上がるため、ProToolsが最後まできちんと動作するか、それぞれがSyncするかといった部分の調整もシビアになる。こういった課題に関しては、辰巳のスタジオで事前に準備した上で、前日リハなどでさらに細かい調整を加え、当日の収録に臨んだという。

 JAZZ NOT ONLY JAZZというコンテンツについては、高品位なサラウンド音源での映像配信に関する実証実験のひとつでもあるが、商業コンテンツとして継続的にビジネスを展開していく上での課題や材料を得る機会としてもとらえているそうだ。

 その真価はオムニクロス・スタジオのような本格的なスタジオでより一層発揮されるという面もあるが、その質の高さは家庭でも実感できるはずだ。ユーザーの裾野を広げるという意味では、例えば劇場でのライブビューイングなど、サラウンド環境が整った場所での配信についても検討してもらいたいところだ。

 個人的にはこれだけ充実したコンテンツが、しかも6種類も体験できることを考えると、通常配信との差額が少なく、非常にリーゾナブルに感じる。自宅にサラウンド環境が用意されているマニア層であれば、聞かない手はないだろうし、ストリーミング配信や音源の単体販売など、別に触れる機会もぜひ提供してほしいと思っている。

 新たなコンテンツの企画が実現するかどうかについては、この配信の反響次第という面もあるだろう。この記事を読んで、JAZZ NOT ONLY JAZZ、あるいはLive ExtremeやAuro-3Dのサラウンド配信に興味を持った人は、ぜひこの機会を活用してほしいと思っている。

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