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NFL、MLBなど米国のスタジアムWi-Fiで多くの実績を持つExtreme Networks幹部に聞く

いまやスポーツスタジアムは「Wi-Fi整備」が不可欠……なぜ?

2024年08月06日 09時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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Oracle Parkでは、来場者にゲストWi-Fiを提供して利用を促している

Wi-Fiデータの活用でスタジアム運用の効率化、新たなビジネスチャンスを

 スタジアムのネットワークが担うのはファン体験の向上だけではない。スタジアムやチームがデータを活用して運用を効率化したり、ビジネスチャンスを見いだしたりすることを手助けすることもできる。

 Extremeでシステムエンジニア ディレクターを務めるジョン・バーク氏によると、スポーツスタジアムにおけるデータの使用量は現在、年率67%もの増加を遂げているという。スポーツを含むエンターテインメント分野のデータ使用量は、2027年まで、他のコンシューマー分野の4倍の成長率を予測するレポートもある。

 たとえば、NFLチームのシアトル・シーホークスは、シアトル市から、混雑緩和のためにスタジアムの出入口にエスカレーターを設置するよう求められた。これに対してシーホークスは、Wi-Fiのデータから混雑状況を分析し、エスカレーターを設置するようなレベルにはないことを示し、莫大な設備投資を回避できたという。

 Wi-Fiを使ってそうした人流/行動分析を可能にするのが、「ExtremeCloud Business Insights for Venues」というスタジアムや大型施設に特化した分析機能だ。SaaSとして提供されている。

「ExtremeCloud Business Insights for Venues」の仕組み

 たとえばNFLのBIダッシュボードでは、スマホの接続台数、データ通信量、アクセスピーク時の速度や通信量などが、年ごと/週ごと、あるいはシーズン中/オフシーズンなどを指定して表示できる。さらには、どのようなアプリが使われていたのかといった分析も可能だ。このデータに、気象データなどの外部データを重ね合わせることもできる。

「ExtremeCloud Business Insights for Venues」を使ってトラフィックを視覚化し、安全の強化やスムーズな導線オペレーションに繋げることができる

試合中のトラフィックデータ。アプリケーションごとの通信量を視覚化している(紫色がアップリンク、水色がダウンリンクのトラフィック)

アクセスポイントごとのトラフィック量を時系列で可視化。試合前/中/後のタイミング(試合開始、ハーフタイムなど)と、場所(コンコース、フィールドなど)の関係が分かる

 データは“宝の山”だ。データを取得することで、来場者が何をしているのかがわかり、それをビジネスチャンスにつなげることができる。

 たとえばあるアメフトチームでは、ファン向けのファミリーデーを開催したところ、来場した子どもたちが「ポケモンGo(Pokémon Go)」を多くプレイしていることがわかった。そこで試合のない日にスタジアムを開放し、売店も用意してポケモンを探すイベントを開催したところ、2万人もの来場があった。また別のスポーツチームでは、来場者のデートアプリの利用が多いことがわかり、そのアプリの会社とスポンサー契約を結んだという。

 MLBやNFLといったスポーツリーグでは、さまざまなスタジアム間で共通のデータを比較し、効率の良いオペレーションを互いに学び合うような使い方もしている。

Wi-Fiデータからは試合やコンサートの「盛り上がり」も分かる

 おまけとしてバーク氏は、歌手のテイラー・スウィフトさんがスタジアムコンサートを行った際のWi-Fi利用データも見せてくれた。2023年5月にGillette Stadiumで行われたこのコンサートでは、ある1日でおよそ4万6000人がWi-Fi接続を行い、ピーク時のスループットは15.0Gbps、全トラフィック量は19.6TBに及んだという。

テイラー・スウィフトさんがスタジアムコンサートを行った日のWi-Fi利用データ

 ちなみに、コンサート最終日の3日目は6万5000人近くがWi-Fi接続しており、ほぼ満員だったことも分かる。「データ通信量としてはスーパーボウル並みだ」と語るバーク氏は、時系列のトラフィック変動とコンサートのセットリストを組み合わせれば「どの曲が人気なのかもわかるはずだ」と説明する。

トラフィック量の時系列推移。コンサートが開演した20時に大きく増えているほか、コンサート中も細かな“波”が見て取れる

 このようにデータを効果的に活用することで、施設側は運営を効率化し、新たなビジネスチャンスも発掘できる。バーク氏は「Extremeの強みは、単に堅牢なWi-Fiを提供するだけではなく、分析にもある」と語る。実際、Extremeが備える分析機能は重要な差別化ポイントになっており、他社のアクセスポイントを使いながらExtremeの分析製品を利用している顧客事例もあると話した。

Wi-Fi 6E、日本でも屋外利用が認められれば大きなチャンスに

 Wi-Fi技術の最新動向として、コールマン氏は「Wi-Fi 6E」についても触れた。

 登場から25周年を迎えるWi-Fi技術だが、コールマン氏は「大きなパラダイムシフト」が起きていると語る。その背景にあるのが「6GHz帯」の追加だ。

 Wi-Fi 6までは2.4GHz帯と5GHz帯の電波を利用していたが、Wi-Fi 6Eからは新たに6GHz帯が加わった。「6GHz帯ではこれまでの4倍のチャネル幅が使える。広帯域/大容量通信を必要とするアプリ、遅延を許容できないアプリなどにも対応できる。大きなチャンスだ」(コールマン氏)。また、Wi-Fi 6Eとは別に、Wi-Fi通信のセキュリティを強化する仕様として「WPA3」や「エンハンスドオープン(Wi-Fi CERTIFIED Enhanced Open)」も登場している。

 ただし、スタジアムなど不特定多数が利用するWi-Fi環境の場合は、さまざまなバージョンの端末が入り混じることになる。したがって、Wi-Fi 6EやWPA3、エンハンスドオープンをサポートすると同時に、それ以前のバージョンの端末もカバーしなければならない。コールマン氏は、WPA3やエンハンスドオープンの互換性モード(Transition Mode)を使って、これらをまとめてカバーすると説明した。

新しい6GHz帯のチャンネルは、同じチャンネルに接続する端末の混雑回避にも有益だ

オープンなゲストWi-Fiも、エンハンスドオープンの対応端末であれば通信のセキュリティを強化できる

 なお、米国ではすでにWi-Fi 6Eが屋内/屋外の両方で使えるほか、6GHz帯で使えるチャンネル数も増えている。日本については「2024年中にも屋外利用の許可が降りると期待している」と述べた。

Wi-Fi 6Eの屋外利用時には「AFC(Automated Frequency Coordination)」と呼ばれる自動周波数調整が必要。利用したいエリアを指定してAFCを実行するデモを披露した

 このように、米国や欧州ではスタジアム向けのネットワーキング技術で強みを持つExtreme。日本法人 執行役員社長の横山尊信氏によると、日本ではまだスタジアムの導入事例はないが「海外での事例は豊富。日本でも積極的にビジネスを進めていきたい」と述べている。

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