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ITXファミリーで支援メニューや連携パートナーを拡充、日本のクラウド活用を後押し

AWS、官公庁・自治体・医療などにもクラウド移行支援プログラムを拡大

2024年07月08日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、2024年7月5日、国内の企業・組織に向けたクラウド移行支援策に関する説明会を開催した。

 同説明会では、日本独自のクラウド移行支援のプログラムである「ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX) ファミリー」を公共領域にも広げ、企業向けの支援メニューや連携パートナーを拡充したことを発表した。

 AWSジャパンの執行役員 パブリックセクター技術統括本部長である瀧澤与一氏は、「デジタル改革の基本方針が策定され、デジタル庁が発足。GIGAスクール構想の環境整備も完了して、オンライン診療も規制緩和された。さらには、デジタル社会の実現に向けた重点計画が閣議決定され、あらゆる事業体でデジタル化が進んでいるのが現在の日本」と説明。このような状況を受け、公共領域におけるクラウド移行の期待や課題に応えるための施策を展開していく。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 パブリックセクター技術統括本部長 瀧澤与一氏

クラウド移行の支援プログラムにおいてクラウドネイティブ化の支援メニューとパートナー連携を拡大

 ITXは、クラウド移行の各フェーズにおける課題を解決するためのプログラムを統合した日本独自の施策。2021年の提供開始以降、改良を続け、各業界におけるクラウド移行を支えてきた。

ITXによってクラウド移行を推進した日本企業の抜粋

 ITXファミリーは「ITX for Cloud First」「ITX for Cloud Native」「ITX for MCP Partner」「ITX Lite」「ITX for PS」という5つのパッケージで展開される。

ITXファミリーの5つのパッケージ

 まず、ITX for Cloud Firstは、2021年から強化を重ねてきた基本の支援パッケージであり、企業のクラウド移行における、評価・準備・移行の各フェーズの課題を解決するためのプログラムが提供される。

ITX for Cloud Firstで提供されるプログラム

 次のITX for Cloud Nativeは、単純なクラウド移行ではなく、システムのクラウドネイティブ化を踏まえた支援プログラムまでを展開する。評価・準備・移行に加えて、どういったクラウドネイティブ技術を用いるかという「検討」のフェーズも含めた支援策が提供される。

 今回は新たに、評価フェーズで「データプラットフォーム検討支援」が、準備フェーズで「生成AI活用ワークショップ」がそれぞれ追加された。

 データプラットフォーム検討支援は、現行のデータ基盤の分析を基に、モダナイゼーションのポイントやあるべきアーキテクチャ案を提示する評価サービスだ。「従来のデータ環境をクラウド移行しても、満足な効果が得られない可能性がある。コストやデータキャパシティなど、データ活用の観点での支援を展開する」と瀧澤氏。

 生成AI活用ワークショップでは、AIやMLを活用したアプリケーション開発を学び、生成AIのユースケースを考えるための、アジャイル型のインタラクティブなワークショップを提供する。

ITX for Cloud Nativeで提供されるプログラム

 ITX for MCP Partnerは、AWSへのクラウド移行における、専門知識や実績を有するパートナーを認定するプログラムだ。ITXのプログラムに、独自の移行支援を組み合わせて展開できるパートナーを対象とする。

 2023年の同プログラムの開始時には、SCSKがパートナーとして認定。それ以降、クラスメソッド、富士ソフト、NHNテコラス、TIS、TOKAIコミュニケーションズ、伊藤忠テクノソリューションズおよびサーバーワークスが加わり、各社の強みを活かした移行支援が展開されている。

ITX for MCP Partnerにおけるパートナー連携強化

 4つ目のITX Liteは、2023年に加わった中小企業を対象とするパッケージで、評価・準備・移行の各フェーズにおける移行支援プログラムが、ほぼ無償で提供される。

クラウド移行が加速する公共領域にITXを拡大

 企業向けに展開してきたクラウド支援プログラムを、中央省庁や自治体、教育機関、医療機関、公益法人などの公共領域に広げたのが、今回発表された「ITX for PS(パブリックセクター)」だ。民間企業と異なるプロセスなど、公共領域特有の課題に対応しており、瀧澤氏はその特徴を3点挙げた。

ITX for PS

 ひとつ目は、「システムのモダン化」を進めるためのプログラムを有することだ。調達前の段階では、経済合理性の評価や、モダン化やシステム・データベース移行の検証など、豊富な評価プログラムを選択できる。モダンアプリのプロトタイピング支援やコスト最適化のための分析サービスなども用意する。

システムのモダン化を進めるための支援

 2つ目は、「公共特有の要素」におけるクラウド活用支援だ。同領域の知見を有するソリューションアーキテクトのコンサルティングサービスや、有償のプロフェッショナルサービスが用意される。これらの支援には、同領域に特化した設計テンプレートや各種ガイドラインの設計アセットなどが用いられる。

 他のITXに含まれるクラウド人材・組織の育成支援や、クラウド移行時の経済的負担を軽減するプログラムも、同領域向けに最適化された上で提供される。

公共特有の要素に関するクラウド活用支援

 3つ目は、「データ・生成AIの活用支援」だ。ITX for Cloud Nativeにおけるデータ・生成AI活用の支援プログラムを公共領域にも展開。同領域に特化した生成AIのユースケースの検討を、サンプルコードや実装支援テンプレートなどを用いて支援する。

データ・生成AIの活用支援

 瀧澤氏は、「今後もクラウド移行のプログラムを拡充して、日本全体のクラウド活用の課題を解決しながら、より良い社会の実現に貢献していきたい」と語った。

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