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自閉スペクトラム症の社会性記憶異常の仕組みを解明

2024年06月18日 06時21分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、マサチューセッツ工科大学、ブロード研究所の研究グループは、自閉スペクトラム症の症状である「社会性記憶異常」が起こる仕組みを解明した。社会性記憶異常は友人を記憶する能力が低下する症状で、脳のどの領域の機能が変化して起こるのかが分かっていなかった。

東京大学、マサチューセッツ工科大学、ブロード研究所の研究グループは、自閉スペクトラム症の症状である「社会性記憶異常」が起こる仕組みを解明した。社会性記憶異常は友人を記憶する能力が低下する症状で、脳のどの領域の機能が変化して起こるのかが分かっていなかった。 これまでの研究では、記憶中枢である海馬の腹側CA1領域の神経細胞に他者の記憶が蓄積されていることと、複数の神経細胞の組み合わせで特定の相手の記憶を保持していることが分かっている。また、自閉症関連遺伝子のShank3が欠損しているマウスの社会性記憶が低下しており、特定の相手の記憶を保持する海馬の神経細胞集団の活動に異常をきたしていることも判明していた。 研究グループは、アデノ随伴ウイルスあるいは特殊な細胞外小胞を利用したゲノム編集技術で、マウスの海馬腹側CA1領域でのみShank3遺伝子変異を誘導して、機能を欠損させた。このマウスが見知った個体と見知らぬ個体にそれぞれ接近した時間を計測することで、どの程度相手の個体を記憶していたのかを調べた。 その結果、海馬腹側CA1領域でShank3遺伝子の機能を欠損させたマウスは、社会性記憶に異常をきたすことが明らかになった。さらに細胞外小胞を利用したゲノム編集技術を利用するとCRISPR/Cas9タンパク質そのものを標的領域に送達することから、小胞濃度を希釈することで編集する細胞数を段階的に制御できることに注目。段階的にShank3遺伝子を欠損させたところ、あるしきい値を超えたときに社会性記憶に異常が起こることが示唆された。 研究成果は6月12日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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