「Salesforce World Tour Tokyo 2024」基調講演レポート
ソニー・ホンダの「AFEELA」とセールスフォースのAIが示す、カスタマーサービスの未来像
2024年06月20日 08時00分更新
セールスフォース・ジャパンは、2024年6月11日と12日、AIイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2024」を開催、2日間にわたり多数の講演やワークショップなどが展開された。
本記事では、「Welcome to the AI Enterprise データがビジネス成長の未来を切り拓く」と題した基調講演の様子をお届けする。同講演では、AI企業への変革を進めるソニー・ホンダモビリティとふくおかフィナンシャルグループの取り組みや、同社が支援するAI企業への変革するための5つのステップなどが披露された。
ビジネスAIで重要なのは“信頼できるデータ”
セールスフォースは創業以来、「CRMをベースに新しいカタチで顧客とつながる」というビジョンのもと、日本を含むグローバルのマーケットで、地位を確立してきた。同社が現在、“新しいカタチのつながり”として注力するのがAIである。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、75%の経営者が、AIの最も価値を発揮できる領域は「顧客接点」だと考えているという。
ビジネスにAIを適用していく際に、何が重要になるのだろうか。セールスフォース・ジャパンの代表取締役会長 兼 社長である小出伸一氏は、「ビジネス向けAIで重要なのは、間違いなく“信頼できるデータ”」と強調する。企業内のビジネスデータを正しくAIに与えることで、日々の業務の中で使えて、顧客とのつながりを築ける、真のビジネス向けAIになる。
基調講演では、企業内のデータをセールスフォースのプラットフォームで統合し、AI企業への変革を進めるユーザー企業が登壇した。ソニー・ホンダモビリティとふくおかフィナンシャルグループの描く、未来のカスタマーサービスについて紹介する。
「AFEELA」と「Enstein」が示すカスタマーサービスの未来像
まずは、ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA(アフィーラ)」におけるカスタマーサービスの未来像だ。同社は、高付加価値の電気自動車(EV)とモビリティサービスを展開するために、ソニーグループと本田技研工業の折半出資で設立された合弁会社である。
AFEELAは、2023年1月に同社初の自動車ブランドとして発表された。今後、2025年の受注開始、2026年の北米・日本での納車開始を予定している。同社はAFEELAを通じて新たなモビリティ体験の創出を目指しており、そのためにセンシングやAIなどの最先端技術を活用する。生成AIにおいてはマイクロソフトと連携し、対話型パーソナルエージェントの開発を進めるほか、セールスフォースともカスタマーサービス領域におけるパートナーシップを結んだ。
ここからは、セールスフォースのAI「Enstein」を活用した、新たな顧客体験のデモンストレーションを紹介する。
セールスフォースの顧客データプラットフォーム(CDP)である「Data Cloud」に、ソニー・ホンダモビリティの持つモビリティや顧客データをつなげることで、セールスフォースの各アプリケーションを通して、車を売って終わりではない、ドライバーに最適化された顧客体験を届けることができる。
自動車業界向けのCRMである「Automotive Cloud」では、ドライバーの所有する車の情報からオンラインの行動履歴、車のこだわりや趣味までを可視化して、パーソナライズされたサポートや提案、販売などが可能になる。
カスタマーサポート側では、カスタマーサービス向けの生成AI「Einstein for Service」が、ドライバーの過去の車の利用状況を反映した問い合わせの返信を生成してくれたり、ドライバーの趣味を加味したプロモーションの提案をしてくれたりと、オペレーターが気づけないような最適なサポートを導き出してくれる。
ロードアシスタントや車のメンテナンス・修理においても、AIのメリットを享受できるという。例えば、運転中にタイヤがパンクしそうになった際、ドライバーが気づく前にAIが事前検知し、対応を先回りする。AFEELAから空気圧低下のアラートを受け取ると、関係者へ修理に必要なアクションが自動で割り当てる。車の状態や保険情報、修理センターの空き情報などもリアルタイムに相互共有され、ドライバーは適切なタイミングでサポートを受けられる。
修理センターのスタッフも、フィールドサービス向けの「Salesforce Field Service」を通じて、生成AIが要約した故障の状況や修理のためのアクション、保険の適用情報などを受け取れる。作業レポートを生成AIに丸投げすることも可能だ。
基調講演に登壇した、ソニー・ホンダモビリティの代表取締役会長 兼 CEOである水野泰秀氏は、「我々は、人を動かす移動のトランスポーテーションだけではなく、人の気持ちまで動かしたい。人の気持ちを動かすには、安心安全のハードウェアだけではなく、ソフトウェアの進化も大事になる」と語る。
セールスフォースとのパートナーシップに関しては、「我々のビジネスは、米国と日本が中心となり、“Direct to Consumer”で顧客に寄り添うサービスを展開していく。グローバル展開しており、多言語対応できるセールスフォースが、まさに求めていたパートナーだった」と説明した。