ワークロードのクラウド移行を「ITインフラのモダナイズ」までつなげられるか
VMware買収を変革のチャンスに、Broadcomと提携拡大したGoogle Cloudの狙い
“リフト”の先の“トランスフォーム”まで提案していく
そして、GVCEを活用するもうひとつのメリットが、ワークロードを実行するプラットフォームの“トランスフォーム”への対応である。
冒頭でも触れたように、Google Cloudでは「Google Kubernetes Engine(GKE)」のコンテナ環境、「Google Cloud Run」のサーバーレス環境などを提供している。VMwareワークロードをそのままクラウドに移行(GCVEへ“リフト”)したのちに、こうしたクラウドネイティブな実行環境へと“トランスフォーム”していく、そうした将来的な道筋が描きやすいわけだ。
ここで安原氏は、今年4月に発表した「Infrastructure Modernization支援パートナー」について紹介した。同パートナープログラムでは、ワークロードのリフト&トランスフォーメーションを「インフラのモダナイゼーション」という側面から支援できるGoogle Cloud認定パートナーが多数発表されている。その中で、VMware環境のGCVE移行をサポートできる「GCVE導入支援パートナー」カテゴリには5社がリストアップされている。
「パートナー様とGoogle Cloudが連携して、現在の環境をどうやってモダナイズしていくかを一緒にご提案させていただく。そういうかたちの取り組みとなる」(安原氏)
さらに、オンプレミス環境からのGCVE移行を支援する「Google Cloud Migration Center」というツール群も用意している。具体的には「クラウド費用の見積もり」「現状のアセット検出(インベントリ作成)」「インフラの評価」「移行計画」「移行作業」といった、アセスメントから実際の移行までをエンドトゥエンドで支援するものだ。
ほかにも、Google Cloudのエンジニアがワークショップ形式で顧客へのスキルトランスファーを行う「カスタマーオンボーディングプログラム」においても、GCVEを使ったVMwareワークロードの移行をはじめ、インフラのモダナイゼーションを顧客と併走しながら支援できると説明する。
実際の企業の動きは? ―VMware買収を「チャレンジ」のきっかけに
このように、Google Cloud側では単なるオンプレミスからのクラウド移行にとどまらない“リフト&トランスフォーメーション”を後押ししている。しかし、実際に顧客はそのように動いているのだろうか。その点を尋ねると、堀地氏は次のように答えた。
「ご提案(の件数)として多いのはオンプレミスのVMware環境からGCVEへの移行だが、それだけではない。たとえば、よりクラウドネイティブな(Google Cloudネイティブの)仮想マシン、コンテナ、サーバーレスといった環境へのモダナイゼーション、あるいはAI/MLやデータ分析基盤とのシームレスな連携、そういったご相談まで発展することもある」(堀地氏)
さらに堀地氏は、BroadcomによるVMware買収がひとつの“きっかけ”になって、クラウド移行の検討スピードが速まったり、慎重な態度だった顧客が検討をスタートさせたりするケースが増えたことを現場で実感していると説明した。「同時に、Google Cloudの持つポテンシャルについても見直していただくきっかけにもなっている」(堀地氏)。
既存のVMwareワークロードを今後どうしていくべきか、迷っている企業に対しては「ぜひ現状のアセスメントをさせていただければ」と堀地氏はコメントした。Google CloudはGCVEだけでなく、幅広い選択肢を用意しているので、この機会にあらためて最適なインフラのあり方を考えてほしい、というアドバイスだ。
安原氏もそれに同意したうえで、Google Cloudは顧客企業の「チャレンジ」を支援する用意があると語った。
「Google Cloudが目指しているのは『オンプレミスの安価な代替品』ではなく『お客様が新しい価値を生み出すための基盤』。ぜひこのタイミングで、オンプレミスをそのまま維持することだけでなく、新しいことにチャレンジしていただきたいと考えている。Google Cloudならば、ビッグバンでの移行だけでなく、現状からのシームレスな移行、段階的にチャレンジしていく移行といったかたちも取れる。ぜひ、フィジビリティ(実現可能性)のあるマイグレーションとチャレンジができる場として、Google Cloudを選んでいただければと思う」(安原氏)
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BroadcomによるVMware買収という出来事を“チャンス”として生かせるのは、何もITベンダーに限った話ではないだろう。ユーザー企業側においても、これをきっかけにプラスのアクションへとつなげていく、そうした動きが多く出てくることに期待したい。