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核融合プラズマにおける新たな乱流遷移、京大・九大などが発見

2024年06月13日 06時21分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学と九州大学などの共同研究チームは、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)において、レーザーを用いた高精度計測により、特定の条件において乱流が抑制される現象を観測した。さらに軽水素プラズマと重水素プラズマの比較実験およびスーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、乱流の抑制は乱流の種類が変化する際に起こることを明らかにした。

京都大学と九州大学などの共同研究チームは、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)において、レーザーを用いた高精度計測により、特定の条件において乱流が抑制される現象を観測した。さらに軽水素プラズマと重水素プラズマの比較実験およびスーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、乱流の抑制は乱流の種類が変化する際に起こることを明らかにした。 研究チームは今回、LHDにおける乱流を包括的に理解するために、一定の加熱条件下で軽水素プラズマの密度を変える実験をして、同時に乱流を詳細に計測。その結果、ある密度(遷移密度)において乱流が最も抑制され、遷移密度以下では、乱流は密度が高くなるにつれて減少するが、遷移密度を超えると乱流は増加に転じることがわかった。 次に乱流遷移を裏付けるために、スーパーコンピューターを用いたシミュレーションを実行。その結果、遷移密度以下で観測された乱流は、主にイオン温度の空間的な変化により引き起こされる乱流であり、遷移密度以上の乱流は、主に圧力分布の空間的な変化により引き起こされる乱流であることを明らかにした。 さらに、同じ実験を重水素プラズマで実施。質量の大きい重水素プラズマの方がより高い密度で乱流遷移が起こること、また、遷移密度以上において観測された乱流は、重水素プラズマにおいて明確に抑制されることがわかった。 核融合エネルギーの実現には、プラズマ中に存在する不規則で微視的な揺らぎ(乱流)によりプラズマが磁場の「カゴ」から流れ出すのをいかに抑制するかが重要な課題となっている。今回の成果は、乱流抑制のための核融合炉の運転シナリオの確立や炉設計への応用が期待される。 研究論文は、フィジカルレビュー・レターズ(Physical Review Letters)に2024年6月7日付けで掲載された

(中條)

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