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思春期のインターネット不適切使用、メンタルヘルスの不調を招く

2024年06月11日 06時55分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京都医学総合研究所、国立精神・神経医療研究センター、東京大学の共同研究チームは、思春期におけるインターネットの不適切使用が精神病症状(幻覚や妄想のような体験)および抑うつといったメンタルヘルス不調のリスクを高めることを確認した。

東京都医学総合研究所、国立精神・神経医療研究センター、東京大学の共同研究チームは、思春期におけるインターネットの不適切使用が精神病症状(幻覚や妄想のような体験)および抑うつといったメンタルヘルス不調のリスクを高めることを確認した。 ここでいう不適切使用とは、インターネット使用によりイライラする、学業・家族や友人関係・睡眠などに支障が出る、時間を使い過ぎる、使い始めるとやめられない、他の人と過ごすよりインターネットを好む、周囲の人間から見て使用時間を減らした方が良い、などの状態を指す。過去の研究ではインターネットの不適切使用とメンタルヘルス不調の相関は示唆されていたが、因果関係を説明できるような研究成果はほとんどなかったという。 研究チームは、2002年から2004年に生まれた未成年3171人を10歳、12歳、および16歳の3点で評価したデータを使用し、10歳、12歳、16歳時点でのインターネットの不適切使用と、16歳時点での精神病症状および抑うつとの関連を、「ジー・フォーミュラ(g-formula)」という因果推論の手法を用いて調べた。また性別によってメンタルヘルス不調の経験に差があることから、男女差も調査。さらに、インターネットの不適切使用とメンタルヘルス不調との関連における、社会的ひきこもりの役割を因果媒介分析という手法で調べた。解析時には年齢、性別、BMI、知能指数、親の年収、近隣環境などの影響を取り除くよう、統計学的な調整を施した。 その結果、インターネットの不適切使用が、精神症状と抑うつのリスクを高めることが示され、例えば、12歳時におけるインターネットの不適切使用は、16歳時の精神病症状を1.65倍、抑うつを1.61倍に増加させることがわかった。男女差を見ると、抑うつのリスクは女性の方が大きく加算され、インターネットの不適切使用と精神病症状の関連では9.4%~29.0%は社会的ひきこもりによって媒介されていた。 研究論文は、学術誌スキゾフレニア・ブレティン(Schizophrenia Bulletin)に2024年6月2日付けでオンライン出版された。 (中條)

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