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電気の力で二役をこなすイオンフィルタ、阪大などが開発

2024年06月07日 06時50分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学と東京大学などの共同研究チームは、簡単な電圧操作でイオン透過性を自在に変えられるイオン交換膜を開発。開発したイオン交換膜を塩分濃度差発電に応用し、ゲート電圧によるイオンフィルタ機能を調整することで、発電効率が従来の素子性能に比して10倍近く向上可能であることを実証した。

大阪大学と東京大学などの共同研究チームは、簡単な電圧操作でイオン透過性を自在に変えられるイオン交換膜を開発。開発したイオン交換膜を塩分濃度差発電に応用し、ゲート電圧によるイオンフィルタ機能を調整することで、発電効率が従来の素子性能に比して10倍近く向上可能であることを実証した。 研究チームは今回、窒化シリコンなどの硬い材料でできた薄膜に半導体加工技術を施し、トランジスタの構造を模した人工ナノポア膜(ナノメートル・スケールの細孔が空いた膜)を作成した(1ナノメートルは10億分の1メートル)。さらに、ナノポア膜に電圧を加える仕組みを新たに開発。ナノポア(細孔)の周囲に埋め込んだゲート電極に負の電圧を加えると陰イオンは静電反発を受けてナノポアを通過できなくなり、陽イオンだけが透過する膜になり、正のゲート電圧を加えると陽イオンが静電反発を受けて陰イオンだけが透過する膜に変わることを示した。 水中のイオンまでろ過可能なイオン交換膜に関して従来は、陰イオンをフィルタするのか、陽イオンをフィルタするのかによって、素材を変える必要があった。今回開発したナノポア膜を用いることにより、海水淡水化や塩分濃度差発電の性能が向上することが期待される。研究論文は、米国化学会が発刊するACSナノ(ACS Nano)に、2024年5月28日付けで掲載された

(中條)

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