このスマホ、ホントに買い? 話題のスマホ徹底レビュー 第484回
山根博士のグロスマレビュー
ハイネケンがSNS不可な世界一退屈なケータイを発売! デジタルデトックスに最適だ!
2024年06月01日 12時00分更新
SNSができない「世界一退屈なケータイ」
大手ビールメーカーのハイネケンと、ファッションブランドのボディガがコラボしたフィーチャーフォン「The Boring Phone」が海外で登場した。製造するのはノキアブランドの端末を手掛けるHMD Global(HMD)。製品名は直訳すると「つまらない電話」となるが、実際にThe Boring Phoneは「世界一退屈な携帯電話」と呼ばれている。
The Boring Phoneはフリップスタイルの携帯電話だ。基本スペックはほぼ公開されていないものの、ベースとなったモデルはノキアのフィーチャーフォン「Nokia 2660 Flip」と見られている。実際にディスプレーやカメラのスペックは同等だ。UNISOCのT707という4Gフィーチャーフォン向けのものであり、実際に4G通信に対応している。とはいえ、4Gを必要とするアプリケーションはほぼ入っていないのが実情だ。閉じたときに時計などを表示できる1.77型ディスプレー(解像度は160×120ドット)を搭載している。
バッテリーは交換式で1450mAhを搭載し、交換が可能だ。背面側の透明カバーの下に見えるバッテリーにもハイネケンとボディガのロゴが入っており、バッテリーそのものはNokiaと共通品だが、The Boring Phone専用のものになっている。SIMカードスロットはバッテリーの下なので、交換時にはバッテリーを外す必要がある。
本体を開くと2.8型(320×240ドット)のディスプレーが現われる。デフォルトではハイネケンの緑色を使ったモノカラーの壁紙が設定されているが、ディスプレーそのものはカラー表示が可能だ。あえてレトロ感を出すためにモノクロの壁紙がいくつかプリインストールされている。
テンキーはそれぞれ大きく押しやすい。「5」の数字だけがくぼんでいるため、慣れればキーを見なくても早打ちできそうだ。そのほかには、十字キーやメニュー、戻るボタンなどがまとめられている。キーパッドはシルバーで数字なども緑色に統一。どこまでもハイネケンのグリーンに彩られた仕上がりになっている。
機能はやっぱり退屈
電話とメッセージでコミュニケーション
それではメニューボタンを押してみよう。OSは旧ノキア時代から引き継がれている「Nokia S30+」であり、アプリの追加などには対応していない。また、対応言語には日本語は含まれていなかった。ディスプレーはタッチパネルではないので、操作するときは十字キーを使う。
アプリはきわめて基本的なものしか入っておらず、通話、電話、SMS(メッセージ)がコミュニケーション用。ギャラリー、カメラ、動画再生、スネークゲームがエンターテイメント。カレンダー、アラーム、懐中電灯がツール。そして後述するが、タクシーとスポーツチェックという謎のアプリもインストールされている。
カメラは30万画素で、本体の裏側に搭載されている。フロントカメラはないので自撮りができない。そもそもSNSアプリもないので、自撮りをSNSにアップのような用途には使えそうにない。ディスプレーは前述したようにカラー表示が可能なので、カメラを起動するとカラーのライブプレビューが表示される。画質はお世辞にもいいとはいえず、特に屋内の暗いところではかなり真っ暗な写真になってしまう。
写真の最大保存枚数は10枚しかないため、よほど気に入ったシーン以外ではカメラを使おうとは思わなくなるだろう。
タクシーが呼べないタクシーアプリに諭される
さて、謎のアプリと説明したタクシーとスポーツチェックは、ジョークアプリとも言えるものだ。機能はなく、起動してもメッセージが表示されるだけだ。そしてそのメッセージもちょっと気の利いたものになっている。
たとえばタクシーアプリを起動すると「バーテンダーの気を引こう」→「誰かがタクシーを呼んでくれるかお願いしよう」→「飲んだら運転しないことを誇りと思おう」と表示されるだけ。タクシーを呼ぶ機能などなく、「そんなことに携帯電話を使わず、今の時間を楽しもう」と意見してくれているのである。
スマートフォンに支配された生活はもう終わりだ!
The Boring Phoneは、スマートフォンがなかった古き良き時代の携帯電話を再現した製品だ。そのコンセプトには「スマートテックに慣れ、支配された生活から脱却してもいいのではないか」というメッセージも含まれている。
友人とコミュニケーションを取りたければ電話を掛ければいいし、不在ならばSMSでメッセージを送ればいい。外出するたびに写真を撮って、ひたすらシェアするなんて日々を繰り返さなくてもいいのだ。
ゲームがしたければレトロなスネークゲームが相手してくれるし、半透明なボディーにステッカーを張ってカスタマイズするなど意外な楽しみ方もできる。
The Boring Phoneは限定5000台の販売だが、スマートフォンに疲れた人たちや昔のテック製品に興味を持つ若い世代の間で人気になりそうだ。

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