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マイクロソフトが「Copilot+ PC」を出したワケ AIはPC市場の“カンフル剤“だ

2024年05月23日 11時45分更新

文● 西田 宗千佳 編集●飯島 恵里子/ASCII

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ナデラCEOは、クラウドも含め「Copilot」全体の価値向上を説く

クラウドのAIもさらに強化が続く

 PCにおいてオンデバイスAIが使われるようになっても、結局のところクラウド「も」重要であることに変わりはない。

 オンデバイスAIにできることは限られており、最新のChatGPTで実現しているような解析や要約をするには、今後も当面クラウドで動くAIを使うことになる。

 Microsoft TeamsやMicrosoft365でのCopilotはクラウドベースであり、着実な進化を遂げていく。

 今回Buildで発表された機能の中でも興味深いのは、「Team Copilot」と呼ばれるものだ。これは生成AIを使って日々の作業を自動化するもの。例えばTeamsでの会議について、裏で自動的に書き起こしをしつつ、必要なファイルやスケジュールの共有、外部へのメールの送信など、「会議の際にアシスタントスタッフがやってくれそうなこと」の一部を自動化し、1つのツールで実現する。

「Team Copilot」。会議の書き起こしなどだけでなく、メモ作成や関連情報の手配など、チームの一員としてAIが仕事をサポートする

 そもそも、オンデバイスAIで使われる生成AIの言語モデルも、学習と開発には高性能なクラウドインフラが必要とされている。

 数年前まで、クラウドでの「AI向けの演算資産」はそこまで大きくなかったが、生成AIの活用が進むにつれて拡大ペースは進んでいる。

AIに関するワークロードは2019年以降急速に拡大

 GPT-4に代表されるLLMも、賢さが強化されつつ効率の向上も進んでいるわけだが、LLM自身、世代が変わるごとに必要とする演算力が大きくなっていくわけで、この傾向は当面変わりそうにない。マイクロソフトなどのビッグテックはGPUを中心とした計算資源への投資を続けており、BuildでもNVIDIAとの関係を強調している。こうした動きに正面から対抗できるのは、世界でもごく限られた企業だ。

 一方で、AI自体を活用するアプリケーション開発ではいろいろな可能性がある。参入障壁が低いので競争も苛烈となるが、ビジネスのパイも大きい。

 マイクロソフトがBuildに合わせてCopilot+ PCを発表したのも、結局のところ、ソフトやサービスを開発する基盤として利用して欲しいからだ。

 オンデバイスAIで実現されるものは「Windows 11に搭載される機能」で測るのではなく、「Windows 11+Copilot+ PCで実現するアプリやサービス」という観点で考えなくてはならない。

 PCの買い替えサイクルは長くなっていて、出荷ペースも落ちている。ある意味マイクロソフトは、現状を変えるカンフル剤としてCopilot+ PCを発表したのである。

 

筆者紹介――西田 宗千佳
 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「生成AIの核心:「新しい知」といかに向き合うか」(NHK出版)、「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。

 

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