クラシック音楽の祭典『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024』を最大限に楽しむ方法

アラサーピアノ女子が観た『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024』最終日の熱量高めレポート

文●イケサン(LoveWalker編集部)

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 5月3日~5日のゴールデンウィーク期間中に開催され、連日大盛況の「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024」。最終日の5月5日は、フィナーレにふさわしい見応え抜群のプログラムが目白押し。熱量の高めの最終日の様子をお届けします。

 幼少期からピアノを習い、親に連れられてコンサートに行ったりと、学生時代まではクラシック音楽と縁があった私。大人になってからはクラシックから少し遠ざかってしまっていましたが、この「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024」は世界レベルの本格的な演奏に触れられる一方で、音楽の知識・経験の有無に関わらず老若男女誰もが楽しめる「音楽のお祭り」と聞き、それならば気負わずに楽しめそう!と思いやってきました。

鳴り止まない拍手と「ブラボー!」の声!
鬼才・井上道義氏、最後のLFJでの熱演に大熱狂

 「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024」の最大注目プログラムといっても過言ではないのが、世界的指揮者・井上道義氏が指揮する2つの公演。新日本フィル音楽監督、京響音楽監督、大阪フィル首席指揮者、アンサンブル金沢音楽監督を歴任し、日本のクラシック界をけん引してきた井上氏は、2024年末をもって指揮活動を引退することを表明しており、「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」への出演も今回がラスト。その姿を目に焼き付けるべく、18:30〜19:15にホールAにて行われた公演番号:314「若きトランペッターが描く豊かなる音の可能性」を観にいきました。

 1曲目はクラーク(辻峰拓編)の「トランペット・ヴォランタリー」、2曲目はアーバンの「ヴェニスの謝肉祭による変奏曲」というトランペットの定番曲を、井上道義氏と新日本フィルハーモニー交響楽団との共演で披露しました。

 井上氏の踊るような指揮のもと、伸びやかで美しいトランペットの音色に、華やかなオーケストラの音が合わさり、見ているこちらも体が弾むようでした。

 また、この公演には、「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」初出演となる、14歳の若き天才トランペット奏者・児玉隼人氏も参加。14歳でここまで堂々たる演奏とは…まさに脱帽。

 3曲目は、井上道義氏と新日本フィルハーモニー交響楽団による、レスピーギの交響詩「ローマの祭り」。「ローマの泉」「ローマの松」と合わせて、「ローマ三部作」といわれています。古代ローマ、ロマネスク、ルネサンス、20世紀の4つの時代の祭りをテーマに、第1部~第4部で構成されます。

 第1部「チルチェンセス」は古代ローマ帝国の暴君・ネロが行った、キリスト教徒に向かって飢えたライオンを放つ残虐な祭り。激しさがほとばしる演奏で祭りの恐怖や混乱の画が浮かびます。第2部「50年祭」は、うってかわって中世キリスト教の神聖な祭り。厳かな教会の鐘が鳴り響くような音色に安堵。第3部「10月祭」は、収穫を祝うお祭りがモチーフ。出だしの角笛風のホルンが印象的です。第4部「主顕祭」は、また一変して、20世紀の派手なお祭りを表現。陽気で明るい演奏で最高潮の盛り上がりを見せつつフィナーレ!

各公演ごとに配られるプログラムは曲の簡単な解説付きで、知識がなくても理解しやすいのが嬉しい

 緩急があり、1部~4部で表現が全く違うため、すっかり引き込まれてしまい約25分の演奏もあっという間。音楽に明るくなくても分かる、すごいものを聴いているという感覚。終演後の鳴り止まない拍手と「ブラボー!」の声。この熱狂の中にいることが気持ちいい、そう思いました。

演奏時、ステージサイドの大画面にその時々の注目奏者やパートが映し出されるので、プログラムの解説文と照らし合わせると「今はこの場面だ」と理解しやすかったです

小林愛実氏が奏でる甘美な音色にうっとり!

 もう一つ、どうしても私が聴きたかったのが、ホールAで12:45〜13:30に行われた公演番号:312「ショパンの甘美なアオハル・コンチェルト」。出演は、ピアニスト・小林愛実氏、群馬交響楽団、指揮・横山奏氏です。

 高校生までピアノを習っていてショパンが好きだったのでショパンの楽曲を聴きたかったのです。さらには、平成に青春時代を過ごしたアラサーの私は「のだめカンタービレ」ドンピシャ世代。「リアルのだめ」ともいわれる小林愛実さんのピアノ演奏を生で聴くことができるとは…!

 真紅のエレガントなセットアップで登場した小林愛実さん。一見、小柄で可愛らしい印象ですが、演奏が始まると一変。全身全霊を傾けて鍵盤と向き合います。時にもの悲しく、時には力強く、美しく甘美な音色にうっとり。その世界観にどっぷり引き込まれました。

 ステージサイドの大画面では、演奏中の手元がしっかり見えたのも嬉しいポイントでした。

こちらのプログラムは事前のチケット販売で全席完売。ホールAに多くの観客が集結、小林さんの人気ぶりがうかがえます

ムード満点!夜の「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」も最高!

 井上道義氏の熱演のあと、興奮冷めやらぬままホールAを出ると、無料で誰でも楽しめる地上広場キオスクステージでは、「モデトロ・サクソフォン・アンサンブル」が演奏していたのですが、すでにステージのまわりはもちろん、広場に収まりきらないほどの大観衆! 曲終わりには歓声が飛び交い、最終日の19時を過ぎてもまったく盛り上がりが冷めていません。ライトアップされた夜の雰囲気も最高で、彼らの最後の演奏曲「ラプソディ・イン・ブルー」では、誰もが聞いたことのある名曲に観客みんなが体を揺らして楽しんでいました。

サクソフォンだけの演奏は、大人な雰囲気でムーディーな夜にピッタリ!

聴衆参加型が楽しい!みんなで叩こうリズムナイト

 夜のキオスクがダンス・フロアに大変身する、「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」ならではのユニークな企画が「フォル・ニュイ!!」(イカレた夜!!)。有料チケットもしくは半券を持っていれば入場できるホールEの最後のプログラムとして19:20~20:10に行われた「フォル・ニュイ!! 第3夜 みんなで叩こう!~リズムナイト~」では、器楽アンサンブル「オルケスタ・ナッジ!ナッジ!」が観客参加型の即興アンサンブルで会場を盛り上げました。

見たことのないような楽器も多数。陽気な演奏に思わず体が動きます。

 事前アナウンスのとおり空のペットボトルを2本持ってきた人はそれを楽器に、持ってない人も拍手や、手で足を叩いて演奏に参加。指揮者の合図で、演奏にあわせて音を出したり、指揮者の合図がない時でも思い思いにリズムを取って楽しんだり、体を動かしたり。観客も一緒になって音楽を作っているとってもHAPPYな空間でした(私も無意識に体が動いてました)。

 指揮者からの合図がないパートでも、心のままに音を奏でてOK! 少し遅い時間でしたが子どもも大人も元気よく楽しんでいました。

「音楽は万人に開けている」と実感した無料コンサート

丸の内仲通りがステージに!山本爽楽さんの聞き覚えのある曲のアレンジ演奏に人が集まってきます

 メイン会場の東京国際フォーラム以外にも、周辺エリアでは無料のコンサートが多数開催されていました。

 例えば、丸の内仲通り(国際ビル前)では、15:00~15:30に現役音大生&高校生の兄弟ピアニスト・山本爽楽(そら)さん&響斗(おと)さんが登場し、ピアノを披露。兄の爽楽さんは、自身のYouTubeでも公開している人気アニメの主題歌「Bling-Bang-Bang-Born」や「アイドル」をクラシック風にアレンジして披露。音楽に詳しくなくても知っている曲のアレンジに、道行く人々も足を止めて聞き入っていました。弟の響斗さんは「緊張しますが頑張ります」と、初々しいトークで笑いを誘ってから一変。自身の原点だというバルトークの楽曲を力強く奏でるギャップに驚き!「クラシックの良さをもっと広めたい」と話す響斗さんに、集まった観客からは温かい拍手が。次世代を担うピアニスト兄弟に胸が熱くなりました。

ジャズやJ-POPのアレンジ曲が得意な爽楽さん(左)と、クラシックに熱い思いをかける響斗さん(右)

 また、東京ビルTOKIA1階ガレリアは、約70mの高さがある吹き抜けになっているので、無料コンサートエリアのなかでも、より音楽に没入しやすい会場。ここでは、16:35~17:15丸の内合唱団によるシャンソンの起源に迫るプログラムに耳を傾けました。

ガレリアに美しい歌声が響き渡ります

 この会場には、「角野隼斗 UPRIGHT PIANO PROJECT」と題して、ピアニスト角野隼人氏が全国ツアー"Reimagine"で使用したアップライトピアノを無料で誰でも演奏できるフリーピアノとして設置。ファンの方々が、列を作り、記念撮影したり、ピアノに触れたりとこちらも大人気でした。

 最近では、このイベントに限らずストリートピアノが置かれている場所が増えていて、音楽がいろんな人に開けているんだなぁと個人的にうれしく感じています。「私も弾きたい…」と思ったのですが、あまりにもブランクが大きすぎて人前で弾けるようなものではなく…自粛。でも、今日一日でいろんな音楽に触れて大人の趣味としてもう一度ピアノを始めたいなぁという気持ちに。

ピアノの側面には角野隼斗氏の直筆サインもあり、ファンにはうれしいサプライズ

 地上広場キヨスクステージの人の動きを見ていると、ステージで演奏をしている時はすごい人だかりですが、演奏がない時間帯はびっくりするほど人の数が落ち着きます。そしてまたステージが始まると、どこからともなく集まってきて大観衆になるのです。街を歩いていて音楽が聞こえる。音の方に自然と引き寄せられてしまう。それが単純にすごく素敵なことだと思いました。

 音楽が鳴る場所に人が集まり、街が活気あふれる。そんな世界最大規模の音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」。来年以降、これから先もずっと続いていってほしいですね。


ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024

開催日:2024年5月3日(金・祝)・4日(土・祝)・5日(日・祝)
場:東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、八重洲、日比谷


文 / イケサン(LoveWalker編集部)

広島県出身。
「本当にいいものを知る大人」になんとなく憧れを抱くようになってきたアラサー女子。


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