韓国発祥のデジタル漫画「ウェブトゥーン」制作会社であるエンドルフィンが2024年4月2日、漫画家本人の絵柄のみを学習させたとするAIサービス「Pure Model AI(ピュアモデルAI)」を発表。一般社団法人マンガジャパンと連携し、漫画家の里中満智子氏、倉田よしみ氏らの協力のもと、Pure Model AIが制作の一部を担ったという作品を公開した。いずれも元の絵柄がそっくり再現されており、Xなどで生成AI関連の話題となった。
発表当初は、画像生成AIに詳しいXユーザーのあいだで「画像生成AI『Stable Diffusion』で、追加学習モデル『LoRA』を使っているだけでは」という疑問の声も出ていたが、エンドルフィンは4月5日にプレスリリースを出し、「私たちが提供しているサービスは、公開されている汎用モデルを活用した生成AIとは一線を画しています」として、画像の生成までに独自のプロセスを踏んでいる旨を説明している。
話題の「ピュアモデルAI」ができた経緯や、その技術的背景について、連載「メタバース・プレゼンス」を執筆している新 清士氏とアスキー編集部で、エンドルフィンの代表と、サービス開発元のスーパーエンジンのCEOに話を聞いた。
インタビュー登場人物(敬称略):
エンドルフィン代表取締役 張 鉉洙(チャン・ヒョンス)社長
スーパーエンジン James Kim Dong jun(ジェームズ キム・ドンジュン)CEO
生成AIは「アナログからデジタル」の変化と同じ
── 最初にそれぞれの会社について教えてください。
ジェームズ キム・ドンジュン 2022年下半期ごろから、生成AIに関心をもって、ゲーム業界に適用してきました。韓国のゲーム会社としては早い段階からR&Dを始めています。ゲームで積んだ技術を、ストーリー(コンテンツ)を強化する方向に進められるのではないかと思っていたときに、チャン・ヒョンスさんと出会ってその話をするようになりました。スーパーエンジンは、アートディレクターの両親が韓国第一世代の漫画家なんです。ですから、ビジネスを始めたときから「作家の著作権は守る方向で進めなければならない」と思っていました。その方向で2年間アレンジを進めており、今後も力を入れていかなければと思っています。
チャン・ヒョンス エンドルフィンはウェブトゥーンを始めて6年目です。いまウェブトゥーンは求められる品質やスピードが上がってきていて、「AIを使った作り方ができないか」という会社が増えています。世間的には、AIを使う人が増える一方で、反対の声も増えています。(AIイラストなどが)著作権を守っていないと批判するケースがある一方、AIというだけで毛嫌いする人、AIにはとにかく反対だと言う人、AIがわからないから「私は知らない」と排除しているケースなど様々です。
ただ、(イラストの制作手法が)PhotoshopやClip Studio Paintに変わりはじめた時期にも、アナログでやっていた人が猛反発したことはありました。「デジタルツールで作った漫画は漫画じゃない」という意見があったくらいです。それがいまでは、デジタルを使わない人はほとんどいなくなりました。AIも同じような変わり方をしていくんじゃないか、そのように変わっていくなら正しい使い方で進めていったほうがいいんじゃないか。内々で気付かれないようにやっていくよりは、ちゃんと正しい使い方を打ち立てたうえで、そのやり方を提案していくほうが正しいんじゃないかと思ったんですね。
そこで、そういう技術力をもっているスーパーエンジンと出会い、エンドルフィンとしてはこういう進め方をしてほしいと話したんです。最初は「(技術的に)すごくしんどい」と言われましたが、苦労を重ねた結果、生成プロセスについては特許を出願するところまで至りました。
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