顧客ごとのユースケースとニーズ、既存通信環境に応じてカスタマイズし提案/構築
「5Gワイド」とは? NTT Comが法人向け5G導入支援サービスを説明
2024年04月19日 16時15分更新
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2024年4月19日、法人向け5G総合コンサルティングサービス「docomo business プライベート5G」、および同サービスのメニューとして新たに提供する「5Gワイド」の記者説明会を開催した。いずれも4月22日からサービス提供を開始する。
個々のユースケース/ニーズに適した5G/モバイルNWを提供
docomo business プライベート5Gは、幅広い産業分野における5G/モバイル通信ユースケースの実現を支援するための総合コンサルティングサービス。利用エリアにおける調査から、5G/モバイルネットワークの設計、構築、導入支援まで幅広くサポートする。構築するネットワークについても、ユースケースやニーズに適した方法(固定基地局、移動基地局、ローカル5Gなど)を提案する。
そのサービスラインアップの1つとして、新たに提供されるのが5Gワイドだ。NTTドコモの5G回線に追加(オプション)契約することで、通常の5G回線よりも通信の安定化や通信速度の向上を図る。ドコモ5G SIMに対応したデバイスであれば、全国の5GエリアおよびLTE(PREMIUM 4G)エリアですぐに利用できる。
NTT Comの5Gサービス部門 部門長を務める岩本健嗣氏は、5Gワイドはデバイス~基地局間の無線アクセスネットワーク(RAN)の優先制御で実現していると説明した。5Gワイド契約の回線に対して、一般回線よりも優先的にパケットを割り当てることにより、混雑エリアでの通信安定化や通信速度の向上が期待できるという仕組みだ。既存の基地局に備わる優先制御機能で実現するため、特別な設備やデバイスの追加は必要ない。
「実際に、ラッシュ時の山手線でストリーミング動画のスループットを計測してみた(下図、右のグラフ)。5Gワイドを利用しない一般ユーザーではスループットが落ち込んだり、それをリカバリするために急激に上がったりしている。一方で、5Gワイドのスループットはおおむね一定のスピードを維持できた」(岩本氏)
なお、5Gワイドの通信は同じ基地局に接続する一般ユーザーの通信よりも優先されるが、あくまでも法人向けソリューションのためいきなり大量に利用が増えることはなく、一般ユーザーの通信が劣化するような影響はないと述べた。また、仮にその影響が出るほど5Gワイドが使われるようになった場合には、基地局の増強などで対処できるとしている。
全国5G/LTEエリアで利用可能、設備投資不要などの特徴を生かした適用先
岩本氏は、5Gワイドに適したユースケースの例として、混雑エリアにおけるライブ映像配信のほか、活動が広域にわたる映像活用での安全対策/緊急/救急、高精細映像に基づいてAI処理を行う自動運転車などを挙げる。さらに、顧客の求める要件に応じて、docomo business プライベート5Gによる基地局構築や通信品質改善(リピーター/ブースター設置)との組み合わせ提案も可能であることを説明した。
前述のとおり、5Gワイドは全国のドコモ5G/LTEエリアで利用できるサービスであり、特別な設備やデバイスを用意する必要がない。利用コストも月額のオプション料金で済む。こうした特徴を生かして、docomo business プライベート5Gにおける提案の中で、通信回線の「選択肢の1つ」として利用できる。
岩本氏は、docomo business プライベート5Gにおける5Gワイドの適用イメージを紹介した。たとえば遠隔医療においては、高精細映像を低遅延に伝送できる仕組みが必要だ。 このアクセス回線に、従来の固定回線だけではなくローカル5Gや5G SA(ミリ波)、そして5Gワイドを適用することが考えられる。特に遠隔医療の場合は病院と病院、あるいは病院と患者をつなぐことになるため、地方病院や診療所、患者の自宅といった大きな初期投資のできない拠点では、5Gワイドは有効な選択肢となりうる。
同様に、遠隔監視/運航管制を行う自動運転(レベル4)の交通システムでも、広域で利用できて、高精細な映像情報が安定して伝送できる5Gワイドの特徴が生かせる。
ネットワークスライシングの商用提供に向けたノウハウ蓄積も
岩本氏は、今回の5Gワイドは「スライシングの前段となる技術のひとつだと考えている」と述べた。
5Gネットワークでは、用途やユーザーに応じて1つのネットワークを複数のネットワークに(仮想的に)分離する「ネットワークスライシング」技術が提唱されている。無線アクセスネットワークだけでなく、その先の有線ネットワーク部分まで含めてエンドトゥエンドで完全にリソースの分離を行う。ドコモやNTT Comでは現在、商用化を目指した実証実験を進めている段階だ。
「スライシングのニーズが高いのは、止めてはならない生産ラインなど、これまで通信の安定性を求めて固定回線を使っていた領域。ただし、スライシングの技術が実現(商用化)しても、無線アクセスネットワークの部分が不安定要素として残る。一番大きな課題は無線リソースのマネジメントなので、5Gワイドでは、(無線アクセスネットワークの部分で)安定通信がどこまでできるのかにチャレンジし、ノウハウを蓄積していく」(岩本氏)