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印南敦史の「ベストセラーを読む」 最終回

『世界のエリートが学んでいる 教養書必読100冊を1冊にまとめてみた』(永井孝尚 著、KADOKAWA)を読む

AI時代こそ“教養”が必要なワケ

2024年03月28日 07時00分更新

文● 印南敦史 編集●ASCII

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AIや検索を使うためにも“教養”が必要になる

 とはいえ、いまや検索するか、あるいはAIに聞いてみれば、すぐに知識が得られる時代でもある。そのため、「検索すればわかる教養などわざわざ学ぶ必要もない」という意見も出てくるかもしれない。しかし著者は、そういう主張は勘違いだと反論する。

 たしかに知識は検索やAIで得られるが、私たちは脳内にある膨大な知識を瞬間的に組み合わせながら考えている。脳内にある知識が教養なのだ。脳内にはない検索エンジンやAIの知識は、考える際に使えない。「検索すればいい」とよく言われるが、検索するには正しく質問する必要がある。正しく質問をするのにも教養が必要だ。では教養は、どうすれば身につくか。
 それには教養の名著を読むことだ。教養の名著は過去に活躍した賢人たちの知識の結晶だ。それらは「知的に面白く、かつ生きる上で役に立つ」からこそ、時代を超えて読み継がれてきたのである。(「はじめに」より)

 非常に説得力のある考え方ではないだろうか。つまり私たちにとっては「考える」ことが重要な意味を持ち、考えるための素地として教養が不可欠なのだ。

 しかし、教養を学ぶことは決して楽ではない。入り口らしい入り口がなく、しかもその先にあるハードルは高いからだ。また著者によれば、教養の世界では「文系と理系の断絶」が起こっているという。分野を超えて横断的に俯瞰し、まったく違う分野のつながりが見えると、教養を学ぶことが俄然おもしろくなるにもかかわらず。

 もうひとつの問題は、教養の名著が難解なことだ。哲学ではカントの『純粋理性批判』、ヘーゲルの『精神現象学』、ハイデガーの『存在と時間』は「三代難解書」と呼ばれている。ダーウィンの『種の起源』やアインシュタインの『相対性理論』も難解だ。これらの幅広い教養書を、一気通貫でわかりやすく理解できる本が、世の中にはない。そこで私は考えた。「ないのならば、自分で書いてしまおう」(「はじめに」より)

 この発想がすごいが、ともあれ著者は2年におよぶ時間をかけてこれを実現してしまった。「西洋哲学」「政治・経済・社会学」「東洋思想」「歴史・アート・文学」「サイエンス」「数学・エンジニアリング」という6構成で、各分野の「これは必読」と思われる名著100冊を厳選。押さえておきたいポイントを平均6ページでまとめているのである。そのため読者は、自分が興味のある項目から読み始めることもできる。

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