湧いてくるストレス、不安、どう向き合えばいいの?
とはいえ、発散しても次から次へと湧いてくるストレス。私たちはどう向き合うべきか。本調査では、早稲田大学教育学部の原 克教授にコメントを求めている。
「現代社会はストレスと隣り合わせ状態といえますが、これは今に始まったことではなく、産業革命以降、日本では明治以降の近代化・都市化する社会において、常に存在しています。実はストレスには、その先のもっと大きなリスクを回避する予防策としての役割があるのです。例えば、仕事のし過ぎで心身共に疲弊していているとき、なんの不都合もなければそのことに気づきもせず、そのまま働き続けついには倒れてしまう、なんてことが起きたりします。 そんなことになる前に、何らかの不調サインを出して働き過ぎに気づかせてくれたり、無理矢理にでも休ませてくれるのがストレスの役割です。ストレスとは、いわば大きなリスクに備えたワクチンのようなものといえるでしょう」(抜粋)
ストレス=悪ではなく、より大きな不調を未然に防ぐために必要な、体からのサインであるという考え方である。さらに原 克教授はこうも話す。
「中高年層の約3割が自分自身のケアの一環として『趣味を満喫する』と答えていますが、ストレスとうまくつきあう方法のひとつとして、趣味を楽しむことは大いにあると思います。気をつけたいのは、趣味を持つことがストレス対策だと決めつけるのはよくない。趣味を楽しむことは、あくまでもパーソナルアクティビティ(個人的活動)であり、パーソナルディシジョン(個人的決定)です。趣味を楽しむというひとつの価値観で、趣味をストレス対策の社会的規範と位置づけてしまうと、『趣味を持たなくちゃ、趣味がないのはおかしい』という思いに支配され、新たなストレスの元凶となってしまいます」(抜粋)
「趣味=ストレス発散だから、趣味を持たなくては」というプレッシャーが起こると、それもストレスになり得るということである。
また原 克教授は、不安との向き合い方について次のように述べる。
「自分、家族、社会、日本、世界、そして地球規模で、この先どうなるのかを同心円状に描くことができれば、自分が進むべき道が自ずと明らかになり、不要な不安からは開放されるのではないでしょうか。そのためには、正しい情報を見極めるチカラが必要です。巧妙なフェイクニュースが溢れ、SNSの台頭で情報は質や中身より量で判断されてしまう傾向も見られます。正しい判断材料となる正しい情報をつかみ取り、自分の頭でしっかり考える、これからの社会を生き抜く鍵となりそうですね」(抜粋)
ストレスは、見方を変えれば味方になり得るもの。その発散方法にとわられすぎるのもかえって良くない。不安と向き合うためには、正しい情報を精査し、自ら道を選ぶ目を持つことが必要……原 克教授のコメントを要約すれば、このような意図になるだろうか。
生きている限り付き合いの続くストレス、心身の不調、不安。これらを悪と決めつけるのではなく、どう向き合い、どう処理するのが“自分にとって適切なのか”という視点が、現代人である私たちに求められているのかも。