連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第126回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 3月9日~3月15日
リスキリングは「低い自己肯定感」「押しつけられ感」が課題、日常業務へのAI浸透に“2つの備え”が必要、ほか
2024年03月18日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(3月9日~3月15日)は、リスキリングに対する年齢別/男女別意識調査、日常業務へのAI利用浸透に必要な“備え”、国内企業における生成AIの使用率と今後の動向、CEOの景況感とM&Aについてのデータを紹介します。
[リスキル][人材]リスキリングの課題は「低い自己肯定感」「押し付けられ感」、性別や年代で意識差も(ベネッセコーポレーション、3月15日)
・リスキリングの課題は「自己肯定感が低く主体性がない」「押し付けのタスク」
・リスキリングへの期待、20代~30代は40代~50代より平均9ポイント高い
・期待に男女差があるのは「自分らしい人生(男性62%/女性67%)」「職場環境を変革する力(男性54%/女性49%)」など
18~59歳の男女400名(定性調査)/20~59歳の男女800名(定量調査)を対象に実施した「リスキリングに関する生活者理解のためのインサイト調査」より。結果からは、リスキリングを「社会から肯定され、自分の可能性を見つけられるもの」と捉え、現状の課題を「低い自己肯定感」「押し付けられ感」とする意識が見られた。年代別に見ると「20代~30代」は「40代~50代」よりもリスキリングへの期待が平均9.3ポイント高い。ただし、企業は「40代~50代のリスキリング」を重要視しており、ギャップが指摘される。性別による期待の違いが大きかったのは「自分らしい人生(男性62.5%/女性67.3%)」など。女性の方が、現状のリスキリング施策に対する不満が大きいという。
[働き方][生成AI]日常的なデジタル業務へのAIの浸透、「準備期間」や「主導組織」が必要(ガートナージャパン、3月14日)
・2027年までに“Everyday AI(日常型AI)”の主導組織を設けない企業の8割は「生成AIから成果が得られない」
・2027年までに社内外のコミュニケーションと生成AI利用のトレーニングを怠る企業の90%は「スキル格差拡大などの問題が生じる」
・従業員が「生成AIに慣れるための期間」を余裕を持って設定する必要あり
デジタル・ワークプレイス領域(日常的なデジタル業務領域)で生成AIを扱う“Everyday AI(日常型AI)”時代に関する予測。日常型AIを安全に利用できる“AI Ready”でない企業にはリスクがあると警告したうえで、従業員がAIの扱いに慣れるための期間を余裕を持って(1~2年)設定する必要があると提言。また、2027年までに「日常型AIを主導する組織」を設けない企業の8割は、生成AI導入の乱立と混乱で「成果を生み出せない」と厳しい見方をしている。さらに、多くのコミュニケーションツール(Microsoft Teams、Google Workspace、Zoom、Cisco Webexなど)が生成AI機能を搭載することから、2027年までに社内外コミュニケーションでの生成AI利用トレーニングを怠る企業の90%では、「従業員のスキル格差が拡大し、組織内外で混乱や断絶が生じる」と指摘する。
[生成AI][セキュリティ]生成AIをすでに使用している国内企業は35%、ランサムウェアは47%が経験(JIPDEC、アイ・ティ・アール)
・生成AIの使用企業は35%、導入進行中34%、今後急速な拡大が見込まれる
・生成AIの業務使用の懸念は「機密情報の漏洩」と「ハルシネーション」
・ランサムウェア感染経験のある企業は47%、身代金を支払った企業の3分の2が復旧できず
JIPDEC(日本情報経済社会推進協会)とITRが、国内983社のIT戦略策定担当/情報セキュリティ施策の従事者を対象に共同実施した調査「企業IT利活用動向調査2024」より。生成AIをすでに使用している企業は35%で、内訳は「会社として構築/契約している」が15.9%、「利用者各自が契約/登録している」が19.1%。ただし「会社が生成AIの導入を進めている」が34.5%を占めており、今後は会社としての導入と利用が過半を占めることになる。一方、ランサムウェア感染経験のある企業は47.1%で、内訳は「身代金を支払ったが復旧できなかった」17.9%、「身代金を支払うことで復旧した」9%、「支払わずに復旧した」10%だった。
[経営]CEOの93%が「低成長・停滞」を予想、ただし9割弱が「収益成長率と収益性の増加」を予想(EY、3月14日)
・日本のCEOの90%(世界は3分の2)近くが「収益成長率と収益性の増加」を見込む
・40%(世界は58%)のCEOが「変革を加速させる」、比率は2023年7月の2倍(世界は3倍)に
・2024年は世界人口の半分以上が選挙に関わる「選挙イヤー」、フェイク情報などに懸念
世界21カ国1200人のCEOを対象に毎四半期実施している、M&Aに関する調査レポート「EY CEO Outlook Pulse survey」最新版より。2024年の自社ビジネスの見通しについて、日本のCEOは93%が「低成長・停滞」を予想するが、一方で86%が「収益成長率の増加」、88%が「収益性の増加」を見込んでいる。これらの回答は世界のCEOよりも「強気」だという。また「インフレ圧力による高金利長期化に備える」CEOは97%(世界78%)、「事業コスト増加を見込む」CEOは89%(世界57%)。なお、世界のCEOの79%が「100億ドル以上の大型M&Aが増加すると予想」している。
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