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「IT変革のためのAIソリューション」、仕様書やコード、テストケースの生成、自動障害対応など幅広く

IBM、生成AIで開発/運用を「変革」するソリューションを体系化

2024年03月11日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは2024年3月7日、システム開発や運用に「IBM watsonx」や生成AIを活用するAIソリューションを体系化し、「IT変革のためのAIソリューション」として提供開始すると発表した。最新のAI技術を活用し、基幹システムからモバイルアプリまでを含むITシステムの開発と運用のあり方を抜本的に変え、「IT変革の加速を目指す」としている。

 日本IBM 執行役員 IBMフェロー IBMコンサルティング事業本部 CTOの二上哲也氏は、「生成AIの活用は広がっているが、IT部門での活用は広がっていない。IBMが生成AIを活用したソリューションを構築し、顧客に届けることで、基幹システムを含めたITシステムの開発スピードの向上や品質向上を実現することができる」と、今回のソリューションを位置づけた。

今回体系化した「IT変革のためのAIソリューション」の全体像

日本IBM 執行役員 IBMフェロー IBMコンサルティング事業本部 最高技術責任者(CTO)の二上(にかみ)哲也氏、同社 執行役員 IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・サービス事業部長の鹿内一郎氏

生成AIを取り込み、開発/運用業務のエンドトゥエンドでの「変革」を

 日本IBMでは、現在のIT業界が解決すべき課題として「工数依存からの脱却」「有識者依存からの脱却」「研鑽/業務余力の確保」の3点を挙げる。その解決のためにはエンドトゥエンドでのIT業務変革が必要であり、その実現によって新たな価値創造が実現すると考える。

ITの開発/運用業務における課題と変革の必要性

 ここにおいて求められるのが、開発/運用業務への生成AIの取り込みだ。日本IBM 執行役員 IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・サービス事業部長の鹿内一郎氏は、「生成AIを活用し、スピード向上と工数削減および適正化、有識者の知見を組織内で蓄積および活用、新たな領域での価値創造を進めることが肝要だ」と述べる。

 「生成AIを活用するには、活用領域の特定や、持続活用のためのCoEの設置など、IT業務工程の前に『企画および体制整備』という新たな業務が必要になる。この部分は工数が増加する。また、AIを活用した『分析・要件定義』のほか、AIによって仕様書からコードを生成したり、コードから仕様書を生成したりする『設計・開発』、仕様書からのテストスクリプトをAIによって自動生成する『テスト』、セルフサービスや自動チケット管理、自動障害対応などを行う『運用』でも生成AIの利用も進むことになる。これらによって、スピードアップや工数削減とともに、特定スキル保有者や有識者への依存を低下させることができ、創出された余力で、既存システムの高付加価値化や新たな価値創造へのシフトしていくことができる。生成AIは、IT業界の課題を解決できる」(鹿内氏)

5つの領域で、生成AIを適用した「IT変革」ソリューションを展開

 今回体系化された「IT変革のためのAIソリューション」は、「AI戦略策定とガバナンス」「コード生成のためのAI」「テスト自動化のためのAI」「IT運用高度化のためのAI」「プロジェクト管理のためのAI」という5つの製品領域で構成される。5領域の製品/サービスを、IBMとパートナーのテクノロジーを活用して提供する。

 まず「AI戦略策定とガバナンス」では、ITライフサイクル全体における生成AI活用のための戦略策定、必要とされるガバナンスを提供する。「顧客の環境にAIをどのように組み込めばいいのかといった観点から、IBMとともに戦略を策定するコンサルティングアプローチとなる」(二上氏)。

 具体的には、さまざまな事例に基づいた最適なAIユースケースや、コード生成のための生成AIプロトタイプを利用。AI for Codeなどのソリューションを活用したPoCを通じて、生成AIの価値実現シナリオを確立。生成AIを活用した実効性のある戦略とロードマップを早期に策定するという。

 また、ロードマップに沿った生成AI活用の本格展開を推進。生成AIを組み込んだ開発プロセスや標準策定により、ガバナンスと適用対象を拡大することができる。「企業内ですでに設定しているセキュリティポリシーなどにも対応して生成AIを利用できる。顧客のシステムを知っているIBMだからこそ実現できる提案」(二上氏)。将来的にはベストプラクティスを学習した生成AIによる、新たな価値提供も実現するという。

 2つめの「コード生成のためのAI」では、分析、要件定義、設計/自動生成、開発、テストにおいて、生成AIおよび各種テクノロジーを融合して活用することで、基幹システムを含むシステム構築を効率化することを目指す。

 たとえば、生成AIとローコード開発ツールを最適に融合し、システム構築ライフサイクル全体を効率化。基盤モデルである「watsonx.ai」に、IBM共通追加学習と、顧客が持つ標準コードを個別に学習させることで、顧客の環境に最適化した形で、仕様書からJavaやCOBOL、PLIのコードを生成したり、コードから仕様書を作成したりできるという。また、COBOLやPLIで構築された既存システムの分析や、テストの自動化、基盤コードの生成も可能になる。

 「単純にLLMを活用するのではなく、JavaやCOBOL、PLIといったコードをAIに学習させ、最適な生成AIを実現する点が特徴。IBMの『Granite』や、Metaの『Llama-2』など、さまざまな基盤モデルから最適なものを選択でき、追加学習を通じて、顧客のコーディングスタイルやルールに従ったプログラムを生成できる。ハイブリッドおよびマルチクラウドにも対応している」(二上氏)

watsonxによるプロンプトからの自動コード生成の様子

 3つめの「テスト自動化のためのAI」では、従来のテスト自動化の仕組みに生成AIを組み込むことで、テストの効率化と仕様変更に対する柔軟性を向上させる。これにより「人手で行っている画面打鍵テストのプロセスを、生成AIによって自動化できる」とする。

 要件や仕様情報の入力に基づいてテストデータを自動生成し、テストスクリプト生成からテスト実行、検証までを自動化。単発の機能テストや、仕様変更が多いアジャイル開発でも、柔軟に自動化を適用することで、テストを効率化できるという。

 

 4つめの「IT運用高度化のためのAI」では、生成AIや自動化技術を活用し、IT運用を高度化する。エンドユーザーの問い合わせにチャットボットが自動応答することでオペレーターの負担を軽減したり、アプリケーションやインフラからあがってくるインシデントを検知し、対応までを自動化して、複数イベントの集約による復旧時間の最小化を実現したりできるという。

 ここでは、デジタルヒューマンである「IBM BlueBuddy」の活用も可能。インシンデントのサマリーと根本要因と解決策候補を提示したり、オートメーションリポジトリから修復策の提案を行ったりする。

 また「watsonx Code Assistant for Red Hat Ansible Lightspeed」を使用することで、ネットワーク構成やクラウド構成の変更、修正、追加の際のスクリプトの自動生成も行うことができる。

 「定型作業や復旧作業を自動化し、自動化スクリプトの生成など、インシデント対応、定型作業対応を高度化させることができる。日本IBMでもすでに使用しており、生成AIによって、60~80%のコードが自動生成されている」(二上氏)

運用担当者をデジタルヒューマン「IBM BlueBuddy」が支援

 最後の「プロジェクト管理のためのAI」では、AIテクノロジーによってプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の作業を支援することで、プロジェクト品質を確保する。これも、日本IBMのなかですでに活用しているという。

 具体的には、チャットボットを利用して社内プロセスや規程、プロジェクト管理関連の質問に自動回答したり、プロジェクトレポートを自動生成したり、プロジェクトKPIの自動評価やAIによる総評、要注意プロジェクト情報の提供、過去実績データに基づくプロジェクト品質の確保や評価、予測が可能になるという。二上氏は「日本IBMが長年に渡って蓄積してきたプロジェクト管理のノウハウを、生成AIを使って検索ができ、プロジェクト管理の効率化が進む」と説明した。

2030年には「有識者の知見を学習したAIがAI生成物を精査」も

 日本IBMでは、これらの「IT変革のためのAIソリューション」製品群を利用することで、システム開発や運用などの業務にAIを適用して、省力化や生産性向上、有識者の知見の大規模言語モデルへの取り込みなどが可能になると説明する。

 二上氏は「情報システムに携わる人たちの働き方を大きく変革することができる」としたうえで、複数の企業で実証実験を行っており、システム構築のモダナイゼーションやIT運用の自動化、生産性向上といった効果が期待できるとした。

 「IT人材不足のため、新サービスの提供に1年かかっていたものが、AIとローコード開発を活用することで、Javaコードの80%を自動生成し、サービスの開発期間を半分に短縮する、同じ期間内に2倍のシステムが開発できるといったことを可能にする。また、基幹システムの一部を再構築する際に、仕様書がなくても、50万行ある既存のCOBOLからAIで仕様書を自動生成して、最新の仕様を理解して作業ができるようにして、モダナイゼーションの支援ができる」(二上氏)

同ソリューションで想定される効果

 今後のロードマップも説明した。まず今年(2024年)には、AIを活用したIT変革の戦略策定を実現して、IT変革を具現化する企業固有のAIを構築した実案件の適用を開始する。2027年には、開発、テスト、運用といったシステム構築全体で30%の効率化を達成し、コード生成や運用の高度化を実現することで、有識者の知見をAIに蓄積し、顧客に最適な生成や障害予測も実現する。2030年には、自動化に加えて、有識者の知見を大規模言語モデルに取り込み、AIがレビューする仕組みを構築。「AI生成物をAIが精査する」ことで、開発と運用全体で50%のスピード向上と効率化を目指す。

 「2024年後半からさまざまな機能を追加することを計画しており、コード生成のためのAIでは、2027年には90%のコードを生成できるようになる。オフショアなどの負荷軽減や、開発スピードの30%向上を見込んでいる。将来的には、ほとんどのプロジェクトでAIソリューシュンを活用することになるだろう。IBMの既存顧客から利用を進め、将来的にはIBM以外の顧客にも展開する。IBM以外のCOBOLの仕様書に活用したり、AWSやAzureのクラウド利用者にも展開していく」(二上氏)

同ソリューションの機能別ロードマップ

 同ソリューションの事業推進において、日本IBMでは社内に推進コアチームを数百人規模で設置するとともに、PoC&テクニカルエキスパートチームを設置。グローバルのIBMに在籍する2万1000人以上のデータやAI専門家の知見も活用する。また、日本IBMと地域DXセンターにおいて、技術系の全社員を対象にしたIT変革のためのAIトレーニングを実施するほか、日本IBMの協力会社にもトレーニングを提供する。

 二上氏は、こうしたソリューションを提供できるのは「IBMしかない」と自信を見せた。

 「日本IBMによるSIによるシステム構築実績を生かし、プロジェクト管理のノウハウもAIに取り込んで活用する。さらにwatsonxの活用や、AIによる運用高度化ソフトウェアである『CP4AIOps』の利用、ハイブリッドクラウド基盤とDSP(デジタルサービスプラットフォーム)の活用、IBMリサーチの研究開発成果の早期活用も新たな価値として提供できる。システム構築実績とAIテクノロジーを組み合わせて提供できるのはIBMしかない」(二上氏)

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