撮影監督が語る「ミッドナイトの映像の見どころ」
プレミア試写会の後には、撮影監督である北信康氏が『ミッドナイト』の撮影秘話を語りました。
北氏は「映像を全編iPhoneで撮る」という条件を課した映画の制作には、「チャレンジングな環境で新しいことをしてみたい」という思いを持って参加したと語っています。北氏は撮影を開始してから、ビデオカメラとしてのiPhone 15 Proシリーズが持つさまざまな可能性を発見したと振り返りました。
「映像のフォーカスが合ってないと、誰にでもわかる“NGテイク”になってしまいます。初めてのiPhoneによる撮影だったので、フォーカスあわせには特に気をつかいました。iPhoneはアクションシーンのフォーカス合わせも正確で、移動する被写体を迅速に追従します。通常、撮影現場にはフォーカスあわせ専任のアシスタントが付くものですが、iPhoneによる撮影は優秀なアシスタントがいつも側にいるような感覚で、カメラを回すことに集中できました」
北氏はコンパクトなiPhoneの「圧倒的なアドバンテージ」を活かして、今までにない映像が撮れたと語ります。例えば加藤小夏さんが演じる「カエデ」が全力疾走するシーンでは、iPhone 15 Proを手に持ったカメラマンがカエデの隣を全力で併走しながらビデオを撮っています。アクションモードで手ブレを強力に抑えた映像も驚きですが、カメラが走るカエデの横から前方へ自然にパン(移動)して、カエデの表情を正面から捉えるシーンは要注目です。
「シネマカメラの場合、役者が走るシーンは事前に決めたコースにレールを敷いて移動車を撮ります。カメラはその位置しか走れません。ハンディサイズのiPhoneだからこそ、カメラが役者の正面に回る斬新な映像が撮れました」
「シネマティックモードがドラマへの没入感をグンと高める」と、北氏はその可能性を高く評価しています。
「人間の目では『フォーカスを合わせたところの他がボケる』という見え方はしません。被写界深度調整は、フレームの中に登場する人物に対して意図的に注目を寄せるためのいわばデフォルメ効果です。フォーカスは物語の核になる表現手法で、効果的に使えばドラマへの没入感が高まります。ボケ効果をカメラワークだけで付けるためには技術が必要です。またドキュメンタリー映像のような作品の場合は、全体にフォーカスを合わせて撮る場合が多くありますが、iPhone 15 Proのシネマティックモードでは後処理でフォーカス調整ができます。撮影時にフォーカスの受け渡しが上手くいかなくても後処理で付けることができたり、ドキュメンタリー映像に物語性を足せる、とても魅力的な機能だと思います」
iPhoneはコンパクトで軽く、取り回しがよいことから「映像クリエイターによる感覚的な表現を助けるツールになる」と北氏は可能性に期待を寄せています。プロの映像クリエイターの間では、もはやiPhoneが撮影前段階のロケハン(ロケーション・ハンティング)にも欠かせないツールになっているそうです。