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ITロード34MW/4000ラック規模、「NVIDIA DGX」にも余裕で対応するラックあたり70kWの高密度収容

MCデジタル・リアルティ、印西で“AI対応”の「NRT12」データセンター開業

2024年03月07日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 三菱商事と米Digital Realtyの合弁会社であるデータセンター事業者のMCデジタル・リアルティ(MCDR)は、2024年3月6日、千葉県印西市の同社NRTキャンパスにおいて2棟目となる「NRT12データセンター」を開業した。NRT12のITロード(サーバー用電源容量)は34MWで、2021年開業のNRT10と合わせて、NRTキャンパスの合計ITワークロードは73MWに拡大した。

MCデジタル・リアルティの新データセンター「NRT12データセンター」(千葉県印西市)

 同日開催されたメディア向けの見学会には、MCDR 代表取締役社長の畠山孝成氏、米国Digital Realty CTOのクリス・シャープ氏が出席し、“AI-Ready(AI対応)”データセンターであるNRT12の特徴のほか、生成AIやHPCの利用が加速する時代に向けたビジネス戦略、Digital Realtyが展開するグローバルデータセンタープラットフォーム「PlatformDIGITAL」などを紹介した。

MCデジタル・リアルティ 代表取締役社長の畠山孝成氏、米Digital Realty CTOのクリス・シャープ(Chris Sharp)氏

ラックあたり70kWの高密度収容、「NVIDIA DGX-Ready Data Center」認定も

 NRT12は、免震構造で設計された地上6階建、のべ床面積2万7571平米のデータセンター施設。1階から6階までデータホールを備えており、施設全体で収容可能なラック数はおよそ4000ラック。13の通信キャリア、2つのIX、さらにDigital Realtyの「ServiceFabric」サービスを通じて高い接続性(コネクティビティ)も確保している。

 MCDRでは、クラウドプロバイダーや大手IT企業にデータホール単位で丸ごと貸し出す「ハイパースケール」、エンタープライズ向けに4分の1ラック単位から提供する「コロケーション」という2種類のサービスをラインアップしているが、NRT12ではその両方を提供する。

NRT12のエントランスホールと利用者向けブレイクアウトルーム

データホール。ハイパースケーラーがデータホールを丸ごと借りることも可能

 NRT12の大きな特徴が、近年のAIやHPCといった領域で求められる「高密度収容」の要件に対応していることだ。たとえばラックあたりの電源容量は最大70kW、床耐荷重は1平米あたり2トンで設計されており、高い冷却能力を実現する「Air-Assisted Liquid Cooling(AALC)」技術も採用しているという。

 シャープ氏は、「ラックあたり70kW」という電源容量は「標準的なNVIDIA DGX H100システムが消費する電力の4台ぶんにあたる」と説明し、十分に大きなキャパシティが確保されていること、将来的にサーバーの冷却方式が進化(DLC:直接液冷方式など)すれば、収容できる電源容量をさらに高められることをアピールする。

 このように、NRT12(および既設のNRT10、KIX13)は、電源容量や冷却能力、耐荷重、ネットワークの冗長性など、総合的に高いキャパシティを持つデータセンターであることから、「NVIDIA DGX-Ready Data Center」の認定を受けている。これはNVIDIA DGXシステムや、そのラックスケール構成である「NVIDIA DGX SuperPOD」のコロケーションと運用に適したデータセンターとして、NVIDIAが認定するプログラムだ。

Digital Realtyでは、日本だけでなく世界30以上のデータセンターで「NVIDIA DGX-Ready」の認定を受けている

関東/関西で8棟のデータセンターが完成、総ITロードは168MWに拡大

 今回開業したNRT12は、MCDRが国内で運用する8棟目のデータセンターとなる。畠山氏は、MCDRの成り立ちと、これまでの規模拡大について紹介した。

 MCDRは2017年、三菱商事と米Digital Realtyが50%ずつ出資する合弁会社として設立された。三菱商事の持つ不動産/インフラ投資の知見と顧客網、Digital Realtyの持つPlatformDIGITALやデータセンターの開発/運用知見をベースに、関東圏と関西圏にデータセンターを展開している。

 MCDRが運用するデータセンターの総ITロードは、2017年には29MWだったが、今回のNRT12の開業によって168MWまで拡大している。そして、今後も印西キャンパスの追加開発(増棟)を予定しており、「今後数年で250MW規模までステップアップする計画だ」と畠山氏は説明した。

MCDRが運用するデータセンターのITロード(サーバー用電源容量)の推移

「AI対応のデータセンター」の要件は? 今後の変化は?

 シャープ氏は、NRT12のような「AI対応のデータセンター」に求められる要件は従来とどう違うのか、さらに今後はどう変化していくのかという見通しについて説明した。

 AIワークロードと従来型ワークロードの違いを、シャープ氏は「電力」「相互接続」「持続可能性(サステナビリティ)」という3つの点にまとめる。AIワークロードの実行には多くの電力(そして冷却能力)が必要だ。また、プロバイダーが開発するパブリックAIモデルと自社保有のプライベートデータ、独自開発のアプリケーションなどを柔軟に接続できるネットワークも求められる。そして「エネルギー消費の削減」という社会的要請にも応えなければならない。

 こうしたAIワークロードの持つ課題を、高密度なコロケーション、プライベートAIエクスチェンジ、PUE低減を実現するデータセンター設計で解決しているのが、MCDRのデータセンターだと説明する。

AIワークロードは従来型ワークロードと異なる特性を持つため、データセンターに対する要件も変化している

AIデータセンターの活用事例も紹介した

 今後の変化についてシャープ氏は、現在の処理の中心であるAIモデルのトレーニング(学習)に代わって、将来的には推論のワークロードが大幅に増え、その重要度も増すとの予測を示した。「推論処理のディマンドは、今後2、3年で、現在の15倍程度に拡大するだろう」(シャープ氏)。Digital Realtyでは、そうしたディマンドの拡大に対応すべくデータセンター構築を進めていると述べた。

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