このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Webexプラットフォームでハイブリッドワーク・オフィス・CXを再構築

生成AIが低帯域の音声・映像をクリアに「再構築」 ― AI活用が進むシスコWebex

2024年02月02日 10時15分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 シスコは、2024年1月31日、コラボレーションプラットフォーム「Webex」のAI戦略に関する記者説明会を開催した。

 シスコは現在、「To Power an Inclusive Future for All(すべての人にインクルーシブな未来を実現する)」というパーパスのもと、「すべてをセキュアにつなぐ」ことを戦略に掲げており、その中で重点分野のひとつとして定めるのが“ハイブリッドワーク”だ。

 シスコシステムズ 代表執行役員社長の濱田義之氏は、「ホームオフィスやリモートワーク、次世代オフィスに必要なコミュニケーション、コラボレーションの機能を提供するのがシスコの役割。ハイブリッド環境はコラボレーションツールだけで完結するものではなく、セキュアなネットワークも含めたエンドツーエンドなプラットフォームがシスコの強み。AIを含む最先端のテクノロジーで日本のハイブリッドワークを進めていきたい」と説明する。

シスコシステムズ 代表執行役員社長 濱田義之氏

WebexOneで発表された4つのAIアップデート

 シスコのコラボレーション分野では、3つのアプローチをとっているとするのは、アジア太平洋・日本・中国地域のコラボレーション アーキテクチャ事業を担当するサンディープ・メフラ(Sandeep Mehra)氏。

シスコシステムズ マネージングディレクター アジア太平洋・日本・中国地域 コラボレーション アーキテクチャ事業担当 サンディープ・メフラ(Sandeep Mehra)氏

 アプローチのひとつ目は「働き方の再構築」、生産的なハイブリッドワークを支援する。2つ目は「ワークスペースの再構築」、出社の義務化に関わらず、オフィスは魅力的でなければいけないとメフラ氏。そして3つ目は「カスタマーエクスペリエンスの再構築」、デジタルカスタマーエクスペリエンスの時代においては、たった一度の良くない体験で顧客は離れていってしまうという。

シスコのハイブリッドワークにおける3つのアプローチ

 これらの3つの戦略を実現するのが、Webexプラットフォームになる。Webexの中核となるのが、セキュリティと管理性、他システムとのインテグレーション、そしてAIだ。メフラ氏は「Webexプラットフォームのあらゆるところに AI が浸透し続けていく」と強調する。

 シスコはこれまでも、WebexプラットフォームへのAI実装を進めており、例えば、言語インテリジェンスでは、翻訳や文字起こしの機能、音声インテリジェンスでは、ノイズ除去やスピーカーフォーカスの機能などが挙げられる。

 そして、2023年に開催したイベント「WebexOne」では、4つのAI関連のアップデートが発表された。ひとつは、「Real-time Media Models(RMM)」だ。

 現在、生成AIで用いられる大規模言語モデル(LLM)は、テキストベースのインテリジェンスだという。一方で、話し方や声のトーン、リアクションやジェスチャーというのもコミュニケーションに含まれる。シスコは、LLMとこれらのリアルタイムなコミュニケーションで得られる情報(リアルタイムメディア)を組み合わせた。

 例えば、自宅でリモートワークのミーティング中、荷物を受け取るために離席した際には、AIが資格情報から判断して、自動的にミュート、戻ってきたら解除する。そして、離席中のミーティング内容が要約され、アクションアイテムも知らせてくれるという世界観だ。

Real-time Media Models(RMM)

 2つ目のアップデートが「Webex AI Codec」だ。リモートのどんなコミュニケーションも音声品質が悪いと意味がないと、メフラ氏。生成AIを活用し、オープンスタンダードであるOpusコーデックと比較して、最大16分の1の帯域で音声品質を担保する。

 通常音声は、ネットワークパケットが分散された形で伝送されているが、Webex AI Codecはどれかひとつのパケットに依存せず、パケットが失われたとしても必要な音声を再構築する。特に周波数が高い破裂音を聞き分けることは難しいが、生成AIにより完全な音域を構築しているという。

 この技術により、スマホでの会話や自宅で子供などがゲームをしているといった帯域幅が狭い状況でも、よりクリアな音声を届けられる。帯域幅の大幅な削減により、ストレージコストの削減も期待される。

Webex AI Codec

 そして、この生成AIの機能をビデオに適合したのが、3つ目のアップデートである「Super Resolution」だ。いわゆる生成AIによる超解像技術であり、送信時にダウンスケールした映像を、生成AIによりスクリーンサイズに合わせてアップスケール。帯域幅が狭い状況でも、映像をぼやけさせず、クリアな映像を再構築する。

バイスプレジデント Webex Collaboration AIエンジニアリング担当 クリス・ローウェン(Chris Rowen)氏によるSuper Resolutionのライブデモ。左が低解像度のソース映像、右は生成AIを使ってそれをアップスケールした映像

 4つ目のアップデートは、既存のWebex Assistantが、生成AIにより強化された「AI Assistant」だ。LLMと先述したRMMにより支援機能が強化され、Webexプラットフォーム全体で展開される。ミーティングやメッセージ、通話、あるいはコンタクトセンターにおける業務をAI Assistantが効率化する。

AI Assistantのアーキテクチャ

 2024年春には「Super Resolution」が、2024年夏には「Webex AI Codec」が製品に実装される予定だ。RMMを含むAI Assistantの高度な生成AI機能は、現状日本語には未対応となる。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

ピックアップ