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注力分野は「セキュリティ」「サステナビリティ」「AI」の3つ、「プラットフォーム化」も重視

「シスコならではのイノベーションで日本の成長と社会変革に貢献」新社長の濱田氏

2024年01月25日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 シスコシステムズは2024年1月24日、日本法人の新社長に就任した濱田義之氏が出席する記者会見を開催した。

 濱田氏は、デジタル化が遅れ国際競争力が弱まっている日本の持続的な成長と社会変革に貢献するために、「シスコならではのイノベーション、シスコでないとできないことに挑戦していく」と抱負を述べた。

濱田氏が掲げたシスコジャパンのビジョン

1月1日付けでシスコシステムズ 代表執行役員社長に就任した濱田義之氏

 濱田氏は、2016年に執行役員 最高技術責任者(CTO)としてシスコに入社。その後は2019年からNTTグループに対する情報通信産業向けビジネスを担当し、2022年からは国内の同ビジネス全体を統括。さらに2022年8月からはシンガポールを拠点に、アジア太平洋、日本&中国のセキュリティ事業を統括するマネージングディレクターとして、セキュリティ観点からのDX支援を行ってきた。

 シスコでは現在、グローバルで「To Power an Inclusive Future for All(すべての人にインクルーシブな未来を実現する)」というパーパス(企業の存在意義)を掲げており、その実現のために6つの重点戦略分野を定めている。

 ここでシスコが重要視しているのが「すべてをセキュアにつなぐ」ということだ。濱田氏は、企業ユーザーが利用するサービスがオンプレミスとクラウドの幅広い場所に分散し、分断化してしまっている現状を指摘する。

 「クラウド利用やハイブリッドワークはもう“常識”となっているが、ITプラットフォームの現状を見ると、製品が非常に多様になりフラグメント(分断化)している。シスコでは、オンプレミスからクラウドまでさまざまな製品を統合して、顧客が統一のインタフェースで運用管理ができるような、シンプルなプラットフォームを提供していく」

グローバルの重点戦略分野6つ。日本ではこのうち特に「セキュリティ」「サステナビリティ」「AI」の3つに注力していくとしている

 ビジネス戦略としては、従来のようにハードウェアを“売り切り”型で提供するモデル(パーペチュアルモデル)から、より長期に顧客と伴走しながらサービスを提供し、顧客ビジネスの成功を支援していくモデルへと変革すると語る。そのために「ハードウェアからソフトウェアへ」「パーペチュアルモデルからサブスクリプションモデルへ」のビジネス転換を進めていくとした。

 なお2022年度時点で、サブスクリプション収益はシスコの総売上の43%を占めるまでになっており、これを2025年度に50%まで引き上げることを目標としている。同様に、ソフトウェア売上におけるサブスクリプション収益は、81%から85%へと引き上げたいとした。

 「シスコの製品はアプライアンス(ハードウェア)とソフトウェアという形だが、現在では(売上に占める)ソフトウェアのポーションは非常に大きくなっている。ソフトウェアで価値をどんどん足していくというモデルになっているため、ソフトウェアに関してはほぼすべての製品がサブスクリプション化の対象になっている」

 加えてハードウェア製品については、パートナーとの協業を通じてサブスクリプションベースで利用できるマネージドサービス化も進めており、顧客における「所有から利用へ」の転換を促していると説明した。

「サブスクリプションモデルへの転換」という、シスコ自身のビジネス変革も進めていると紹介した

 前述したとおり、シスコはグローバルで6つの重点戦略分野を掲げている。そのうち、日本では特に「セキュリティ」「サステナビリティ」「AI」の3つを注力分野としていくという。

 スイスのIMDが昨年11月に発表した「世界デジタル競争力ランキング 2023年版」において、日本のデジタル競争力は「64カ国中32位」と過去最低を更新した。濱田氏はその結果に触れて、日本の持続的な成長には「あらゆる分野でのDXが不可欠」であり、DXの中核をなすネットワークのプラットフォーム提供を通じて、「シスコならではのイノベーション、シスコでないとできないことに挑戦していく」のが、シスコジャパンとしてのビジョンだと説明する。

 「そのなかにおいては、深刻化する脅威に対抗するサイバーセキュリティ対策、生産性を高めるためのAI基盤の整備と活用、サステナビリティ社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)、この3つを同時に進めていく必要がある。したがって、特にこの3分野への注力を図っていきたい」

 なお「シスコでないとできないこと」とは具体的にどんなことを指しているのか、という質問に対して濱田氏は、シスコが豊富に抱えるエンジニアリソース、さらにはSIerやサービスプロバイダーといったパートナーネットワークも生かしながら、エンドユーザーの必要としているソリューションをプラットフォーム型で提供することをイメージしていると説明した。

 もうひとつ、濱田氏はシスコジャパンのビジョンとして「“自律型分散組織”への企業カルチャーの変革」を挙げている。顧客企業のビジネス変革を支援していくうえで、社員一人ひとりが自ら考えて実行し、社内のステークホルダーが有機的つながってアジャイル(俊敏)に動く、そうした組織を目指すと述べた。

 ちなみに、1月初旬に発表されたHPEによるジュニパーネットワークスの買収に対しては、「シスコは他社の動向にとらわれることなく、シスコとしてきちんとした統合プラットフォームを構成し、サブスクリプションベースでの提供、クラウドベースでの提供を進めていきたい」とコメントした。

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